岩下鼎夫人の和子さんから、「ピンコロがリニューアルしたので、見に来てほしい」との電話があり、さっそく出かけていった。その前から玄関脇に「喜多川歌麿」や「竹久夢二」の表示があったので、「あ、遂にあれを出したんだな」などと思っていたが、行ってみてびっくり。
部分的な展示替えを想定していたのに、かなり大幅な展示替えで、しかも岩下コレクションの秘蔵品ともいえるお宝が無造作に展示してある。思わず「記事にしてもいいけど、ドロボーが入りますよ」と鼎さんに言うと、「それでも構わない」と太っ腹である。だから「砂上録」で紹介させていただいた。
中に、「為祥児兄 痴娯の家 小波題」と書かれた書が一点。巖谷小波が岩下庄司コレクションを「痴娯の家」と名付けた証である。五月八日に、小波の孫である巖谷國士先生をお連れした時にはなかったものである。これをお見せしたかったのに……。
巖谷先生は、当日、ピンコロのコレクションに圧倒された様子で、「国宝級だね」としきりに感嘆されていた。先生と一緒に倉庫の中にまで入って、いわゆる「千社札」の膨大なコレクションを拝見したが、それはもう、開いた口がふさがらなくなるほどのものであった。まだまだ陽の目を見ていない貴重なコレクションがいくらでもある。
今回展示の中で注目したのは、泉鏡花の小説の挿画を描いた鰭崎英朋と鏑木清方の美人画である。英朋の描いた鏡花作「続風流線」の口絵は、彼の最高傑作と言われる。清方もまた鏡花作品の挿画を数多く描いた人で、その作品は鏡花を耽読した者にとっては垂涎の的なのだ。
「ピンコロ」には、随筆も達者だった清方の自筆原稿もある。今回展示は版画だが、肉筆の挿画もあるはずだ。岩下さん、またこっそり見せてくださいよ。
部分的な展示替えを想定していたのに、かなり大幅な展示替えで、しかも岩下コレクションの秘蔵品ともいえるお宝が無造作に展示してある。思わず「記事にしてもいいけど、ドロボーが入りますよ」と鼎さんに言うと、「それでも構わない」と太っ腹である。だから「砂上録」で紹介させていただいた。
中に、「為祥児兄 痴娯の家 小波題」と書かれた書が一点。巖谷小波が岩下庄司コレクションを「痴娯の家」と名付けた証である。五月八日に、小波の孫である巖谷國士先生をお連れした時にはなかったものである。これをお見せしたかったのに……。
巖谷先生は、当日、ピンコロのコレクションに圧倒された様子で、「国宝級だね」としきりに感嘆されていた。先生と一緒に倉庫の中にまで入って、いわゆる「千社札」の膨大なコレクションを拝見したが、それはもう、開いた口がふさがらなくなるほどのものであった。まだまだ陽の目を見ていない貴重なコレクションがいくらでもある。
今回展示の中で注目したのは、泉鏡花の小説の挿画を描いた鰭崎英朋と鏑木清方の美人画である。英朋の描いた鏡花作「続風流線」の口絵は、彼の最高傑作と言われる。清方もまた鏡花作品の挿画を数多く描いた人で、その作品は鏡花を耽読した者にとっては垂涎の的なのだ。
「ピンコロ」には、随筆も達者だった清方の自筆原稿もある。今回展示は版画だが、肉筆の挿画もあるはずだ。岩下さん、またこっそり見せてくださいよ。
(越後タイムス7月1日「週末点描」より)