ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

盲聾者の福島先生その1

2007年05月03日 00時25分42秒 | 障害者の自立
盲聾者の方をご存じでしょうか?
目も見えず、耳も聞こえない。そんな方が大学の先生をされています。
私の大好きな方の一人です。直接お会いしたことはありませんが、NHKの「福祉ネットワーク」に出演や、厚生省の障害者協議会の委員をなさっておられます。
会話の手段は「指点字」通訳の人の手に、パソコンを打ち込むように「点字」を
打ち込んでいき、それを通訳の方が言葉にされる。福島先生に話しかけるときは
そのぎゃくで、福島先生の手に通訳の方が点字を打ってこちらの意志を伝える。
言葉では説明しにくいので「指点字」で検索してみてください。
その福島先生が、東京大学の入学式で挨拶された原稿がありました。
是非多くの人に福島先生の一面だけでも知っていただきたくて、ご紹介させて
いただきます。長めですので2回に分けさせていただきます。


平成19年(2007年)4月12日
先端科学技術研究センター准教授  福島 智

 皆さん、東京大学ご入学おめでとうございます。ひとことお祝いのご挨拶を申し上げます。皆さんは今、将来への希望に胸を膨らませたり、もしかすると既に明確な人生の目標があって、その目標実現のためにこれからの大学生活を送ろうと決意なさっていることと思います。あるいは、かつて私がそうであったように、大学入学時点では、まだ将来への明確な目標があるというわけではなく、しかし、大学で多くの人との出会いや様々な学問に触れることを期待してわくわくしている人もおられると思います。
ところで、皆さんは、将来の目標とか、卒業後の就職の希望といったこととは別に、人生における「夢」を持っておられるでしょうか。私には幼い頃から一つの夢があります。ちょっと口にするのが恥ずかしいのですが、それは「宇宙人に会いたい」という夢です。それが無理なら、せめて宇宙空間に自分が出かけてみたいという夢です。そして、この思いは、皆さんの多くと同世代だった18歳の頃から、更に強くなりました。なぜ、こんな夢を抱いているかと言いますと、宇宙は私の心の中の「第二のふるさと」のようなものだからです。少し私自身の体験をお話しさせていただきます。
 私は1962年生まれで、現在44歳です。私は生まれてから9歳までは、目が見えて、耳が聞こえる、普通の子どもでした。わたしが小学1年生だった1969年7月20日、有名なアポロ11号の月面着陸という人類の歴史に残る出来事がありました。あのときのテレビ中継のインパクト、そして、新聞に掲載されたページいっぱいに広がるような、あの写真の大きさを今も忘れることができません。私はそのときから宇宙に心惹かれていました。宵の明星である金星の輝き、冬の夜空のシリウスやオリオン座の光に、子供心に何か吸い込まれてしまうような、そんな神秘的な感じがしていました。父に天体望遠鏡を買ってもらう約束をしたのは小学校3年生の2学期のことでした。しかし、それからまもなく私は失明してしまい、二度と星の光を見られなくなりました。
 その後は、専ら音の世界に生きていました。目は見えませんでしたが、耳から入る情報もたくさんありますから、宇宙に関するテレビやラジオの番組を聴いたり、録音された本や点字の本なども読みました。木星を初めて間近に撮影したボイジャーの特集番組を、1980年の夏、テレビで聴いたことを思い出します。ところが、その年の暮れ、今度は耳が聞こえなくなり始めて、ほぼ3ヵ月の間に、全く見えない、全く聞こえない全盲ろう者の状態になってしまいました。