障害者が描く個性的な絵を評価し、企業が封筒などのグッズのデザインに使う動きが愛知県で広がっている。3年前に福岡県で始まった活動だが、いまや本家をしのぐ勢いだ。企業の社会貢献活動の一環と思いきや、原動力は「感動の輪」にあった。
一般社団法人「だんだんアティックアート」(愛知県豊田市)が、企業と障害者を橋渡しする。アティックは、英語で「屋根裏」の意味。作品が眠っていたことから名付けた。
活動は福岡県で2010年8月に始まった、障害者の絵を段ボール箱に印刷して売り、収益の一部を作者に還元する「だんだんボックス実行委員会」が原点だ。発案者の一人、愛知県刈谷市出身の建築家で九州大芸術工学研究院准教授の鵜飼哲矢さん(46)が協力を求めたのが、知人の須藤伸枝さん(56)だった。須藤さんは後にアティックアートの代表理事になる。
11年春、須藤さんが企業などに呼びかけ始めると、岡崎信用金庫(同県岡崎市)の大林市郎理事長(64)が応え、「現金封筒に地元の障害者の絵を採用できないか」と提案された。つてを頼って訪ねた同県みよし市の障害者施設「わらび福祉園」で、須藤さんは押し入れから出てきた絵に驚いた。その素晴らしさに感動して涙があふれた。
福祉園の熊谷かの子園長も、須藤さんと話すうちに涙が出た。「障害者を差別しないで、と思ってきた自分の方が才能に目を向けていなかった」
●作者から感謝
同年8月、岡崎信金の3種類の封筒に、3人の作品が採用された。作品使用料を作者に渡す晴れの舞台で、50代の知的障害のある男性は「ありがとうございます」と言って声をつまらせた。80代の母親は「産んでよかったと初めて思った」と打ち明けた。「ここまで喜んでもらえるのか」。大林理事長は激しく心を揺さぶられたという。
●「感動が感動の輪」を生む
昨年7月に障害者の作品展を開いてから依頼が増えた。これまでに建設、豆腐製造、高速道路関連など16社・団体が、ファイルやノート、包装紙、カレンダー、建設現場の囲いなどに130点以上の絵を採用。検討中も含め、参加企業・団体は27を数える。岡崎信金の封筒は710万枚作られた。
「ビジネスを通じて障害者の作品が世に出るしくみを考えた人が立派。喜びが喜びを生む感動の輪がこの活動の魅力だと、参加してわかった。企業の社会的貢献活動だなんて全く思っていない」と大林理事長。
朝日新聞-2013年8月8日
一般社団法人「だんだんアティックアート」(愛知県豊田市)が、企業と障害者を橋渡しする。アティックは、英語で「屋根裏」の意味。作品が眠っていたことから名付けた。
活動は福岡県で2010年8月に始まった、障害者の絵を段ボール箱に印刷して売り、収益の一部を作者に還元する「だんだんボックス実行委員会」が原点だ。発案者の一人、愛知県刈谷市出身の建築家で九州大芸術工学研究院准教授の鵜飼哲矢さん(46)が協力を求めたのが、知人の須藤伸枝さん(56)だった。須藤さんは後にアティックアートの代表理事になる。
11年春、須藤さんが企業などに呼びかけ始めると、岡崎信用金庫(同県岡崎市)の大林市郎理事長(64)が応え、「現金封筒に地元の障害者の絵を採用できないか」と提案された。つてを頼って訪ねた同県みよし市の障害者施設「わらび福祉園」で、須藤さんは押し入れから出てきた絵に驚いた。その素晴らしさに感動して涙があふれた。
福祉園の熊谷かの子園長も、須藤さんと話すうちに涙が出た。「障害者を差別しないで、と思ってきた自分の方が才能に目を向けていなかった」
●作者から感謝
同年8月、岡崎信金の3種類の封筒に、3人の作品が採用された。作品使用料を作者に渡す晴れの舞台で、50代の知的障害のある男性は「ありがとうございます」と言って声をつまらせた。80代の母親は「産んでよかったと初めて思った」と打ち明けた。「ここまで喜んでもらえるのか」。大林理事長は激しく心を揺さぶられたという。
●「感動が感動の輪」を生む
昨年7月に障害者の作品展を開いてから依頼が増えた。これまでに建設、豆腐製造、高速道路関連など16社・団体が、ファイルやノート、包装紙、カレンダー、建設現場の囲いなどに130点以上の絵を採用。検討中も含め、参加企業・団体は27を数える。岡崎信金の封筒は710万枚作られた。
「ビジネスを通じて障害者の作品が世に出るしくみを考えた人が立派。喜びが喜びを生む感動の輪がこの活動の魅力だと、参加してわかった。企業の社会的貢献活動だなんて全く思っていない」と大林理事長。
朝日新聞-2013年8月8日