「障害のある人もない人も一緒に」をテーマに、市川市のNPO法人「いちかわ市民文化ネットワーク」が主催する「チャレンジド・ミュージカル」が今年で活動十周年を迎えた。記念公演「ONGERA(オンゲラ)~万歳!」が四日から市川、佐倉両市で開かれる。出演する障害者らは集大成の舞台にしようと、稽古からエネルギー全開で取り組んでいる。
「大きく腕を回して、上まで伸ばして」
制作から作詞、演出も手掛ける同ネット代表理事の吉原広さん(65)が大声で指示を出す。ピンクの衣装の出演者がパネルを大きく揺らす。市川市奉免(ほうめ)町の知的障害者施設やまぶき園の体育館。初日が一週間に迫る中、通し稽古などが行われた。
これとは別の市民ミュージカルも手掛ける吉原さんが「障害のある自分の子にも演じさせたい」と相談を受けたのが始まり。二〇〇五年十二月の第一回公演から年一回ずつ公演を重ねてきた。吉原さんは「舞台だと開放されるのか、ものすごいエネルギーを放出する」と舌を巻く。
「ONGERA」はスワヒリ語で「万歳」の意味。十歳の誕生日を祝おうとの願いを込めた。コンゴ(旧ザイール)出身で習志野市に住むパーカッション奏者B・B・モフランさんが当初から参加している縁で、公演名はスワヒリ語から選んでいる。
七十人が出演、二部構成で上演時間は計二時間になる。第一部は過去九作品の名場面で構成する。宮沢賢治「注文の多い料理店」がモチーフの第二部は、冬から実りの秋への季節の変化を、出演者の成長と重ね合わせて表現した。
出演者は〇五年から延べ九百人に上る。知的・発達障害の人が多い。市川を中心に千葉、船橋、松戸、佐倉からも参加している。
初参加の市川市の松崎龍一さん(18)は「自分の力を全力で出す」と完全燃焼を誓う。十回連続の参加となる同市国分の村山健多さん(32)は「楽しい。歌、踊り、演技全部好き」と目を輝かせる。母の園(その)さん(63)は「舞台の流れもつかめるようになり、自分なりの表現もできている」と成長を語る。
サポーターの支援も欠かせない。大勢が入り乱れる舞台での事故を回避するため保護者が務めている。今回は二十六人が舞台移動、登場のタイミング、衣装の着替えを手伝う。
吉原さんは「障害者のためでなく、面白いから続けている。歩みは遅々としているが、年々進化している。持っている力をぶつけたい」と話している。
市川公演は、四日が午後三時、五日は午前十一時と午後三時から上演する。場所はいずれも市川市文化会館小ホール。入場料は前売りは大人二千円、四歳から学生まで、障害者、介助者が千円。当日はそれぞれプラス五百円。問い合わせは同ネット=電047(711)8813=へ。
佐倉公演は十二日午後一時から佐倉市民音楽ホール。前売りは大人千五百円、その他は千円。当日はいずれもプラス三百円。問い合わせは「手をつなぐ・さくら」の伊藤さん=電090(3577)2125=へ。
10周年記念公演を控え、本番さながらの稽古をする出演者=市川市で
2015年4月2日 東京新聞