福岡市博多区の障害者福祉施設「JOY俱楽部(くらぶ)」に通う男性3人の絵が、フランスの美術団体「欧州造形美術振興協会」に認められ、今年9月に協会がパリのマドレーヌ寺院で開く展覧会に出品される。その後1年間、フランス国内のギャラリーやカフェなど6カ所を巡回するほか、来年6月にはフランス政府主催のイベントで展示されることも決まった。福岡で生まれた3人の絵は海を越えてフランス国内を旅する。
3人は絵を描くことを職業にした「JOY俱楽部」のアーティスト集団「アトリエブラヴォ」の本田雅啓(まさはる)さん(31)▽樋渡(ひわたし)幸大(こうだい)さん(32)▽小林泰寛さん(28)。知的障害や高機能自閉症といった障害がある。
本田さんは幾何学模様を並べたような繊細な作品が得意で、樋渡さんは顔のしわなどを忠実に再現する細かい描写が特徴。小林さんは色覚異常で赤と緑が同じような色に見えるため、作品には緑が多く、独特な色遣いが光る。
「アトリエ」は2002年に発足。原田啓之副施設長(40)は「以前は今よりも障害者が選べる仕事がなかった。アートや音楽のプロとして活動させようと『アトリエ』をつくった」と振り返る。発足時2人だった所属アーティストは今では13人に増え、JOY俱楽部にはプロのミュージックアンサンブルもある。
ギャラリーやカフェなどで作品を展示すると、独創的な発想と真摯(しんし)な仕事ぶりが人気を呼び、企業のカレンダーやTシャツのイラスト、商品のパッケージデザインなど全国各地の企業から依頼を受けるようになった。
福岡県糸島市で現代ヨーロッパ美術のギャラリーを営む高藤邦夫さん(41)が3人の絵を見て「今までに例のない色彩やタッチが受け入れられる」と感じ、欧州造形美術振興協会に紹介した。その際、3人に障害があることは伝えずに絵を送ったという。
協会でも高い評価を得て今回の出品となった。高藤さんはアトリエを訪れた際に彼らが絵を描く姿を見て「描くことが生きがいになっているんだなと感じた」と話し、フランスでの展示に「純粋にアーティストの絵として評価を受けた。次の新たなステップにつながれば」と期待している。
樋渡さんはフランスでの巡回展について「聞いた時は驚いた。今はドキドキしている。今以上に絵を描くことを頑張りたい」と話している。
工房で自身の作品を手にする(左から)本田雅啓さん、小林泰寛さん、樋渡幸大さん=福岡市博多区で2015年3月20日
毎日新聞 2015年04月04日