北海道新聞社の「道新 地域げんき大賞」に、渡島・檜山管内からは、障害者の自立や地域との交流を支援するNPO法人「自立の風 かんばす」(函館市宮前町)が選ばれた。2005年に同団体を設立した代表の横川由紀さん(39)は「これを機に、地域で頑張っている他の団体に勇気を与える存在を目指します」と喜んでいる。
横浜出身の横川さんは四肢に障害があり、20歳まで神奈川県内の福祉施設で生活していた。しかし「施設に頼らず、自分の住みたい場所で自立して暮らしたい」との思いから、東京、札幌で自立生活を送った。
その後、旅行で訪れた函館で海と山が共存する風景を見て「障害者と健常者も共存できる気がした」と感じて05年に移住する。
横川さんは、例えば買い物に自ら行くことで「物価や旬など、世の中の事情を知ることができるようになった」との経験から、障害者が社会とつながるには「できることは自力でやる」ことが重要と痛感。同年、自分と同じように自立を目指す障害者の訓練をサポートしようと「かんばす」を立ち上げた。
昨年9月にNPO法人となり、20~30代を中心とする障害者や介助者の会員約30人が、同11月に宮前町に借りた新事務所を拠点に、自立生活に必要な経験と知識を身に付けようとさまざまな課題に挑んでいる。
例えばある知的障害者の会員は5年前にかんばすで料理の勉強を始め、今ではハンバーグや焼きそばを作って他の会員に振る舞っている。新しい事務所に相談室や調理室、訓練室を設ける改装作業も業者に頼らず、会員たちが作業工程の話し合いや木材の切り出し、組み立てまで自分の手で進めている。
地域社会と積極的に関わりを持とうと、花見を開いたり、地域のイベントに参加したりもしてきた。
さまざまな障害のある人が集まるかんばすの会員たちは、すべての活動で足並みをそろえることはできなくても「自分ができる範囲のことは自分でやる」という一つの思いでつながっている。
04/03 北海道新聞