今月、企業に一定割合以上の障害者を雇うよう義務づける法定雇用率が引き上げられた。採用側の取り組みがますます求められる中、NPO法人ディーセントワーク・ラボ(DWL、東京都)が、障害者が働きやすい職場づくりを学べるワークブック「障がい者の特性に着目した仕事と組織をつくる」を作成した。中尾文香代表(35)は「障害者の可能性を信じたポジティブな雇用を目指せることを多くの人に知ってほしい」と語る。
ワークブックは▽先駆的企業の具体例▽調査結果を基にした仕事づくりのポイント▽障害者の就労環境として企業と事業所の強みや専門性の違いの説明--などで構成。障害のある人だけを訓練して働いてもらうのではなく、周りが環境を整えて働きやすい職場をつくる視点が貫かれている。
先進事例にはヒントがあふれている。「知的障害だから、精神障害だからこの仕事ができないとは考えない」。従業員37人のうち32人に障害のある「障がい者つくし更生会」(福岡県大野城市)の管理職の言葉だ。障害の種類で一律に判断せず、個々の性格や仕事の理解の方法などを見て「この手順を踏めばできるのではないか」との考え方が示される。廃棄物処理業を手がける同社は、分別作業の質の高さで評価されている。一方、焼き肉店を運営する「NSP」(沖縄市)の事例では、コミュニケーションの苦手な自閉症の男性に働いてもらうため、どの作業に得手不得手があるか、時間をかけて浮き彫りにする過程を紹介した。
中尾さんは「個々の強みを引き出しながら、他者からの承認を得て働く人のモチベーションを高められる組織はうまくいっていた。全ての人が働きやすい職場づくりに役立ててほしい」と話す。ワークブックはA4判、64ページ。ホームページ(http://decentwork-lab.org)で公開しているが、送料負担で頒布している。問い合わせはDWL(03・6451・7345)。
