耳が不自由な障害者の家族を、これほどたくましく、ユーモラスに、かつ感動的に描いた作品はないだろう。31日公開の「エール!」(エリック・ラルティゴ監督)によって元気づけられるのは、歌と人間を愛し、奇跡を信じるすべての映画ファンに違いない。
フランスの田舎町で酪農業を営むペリエ一家は、両親と姉弟の4人家族だが、耳が聞こえるのは高校生の長女、ポーラ(ルアンヌ・エメラ)だけ。そのポーラに歌の才能があると気がついた音楽教師のトマソン(エリック・エルモスニーノ)は、ポーラの才能を伸ばして歌手への道を開こうと考える。
才能があるのに、自ら努力しようとしなかったり、自信が持てなかったりして、結局は未開花のままの才能をつぶしてしまう人は多いだろう。だが、ポーラの場合は家庭環境が壁になった。家族3人分の手話による通訳を、ひとりでやらざるを得ないポーラ。しかも、歌を楽しむという意識は、耳の不自由な家族には、もっとも縁遠いものだった。
ポーラ役のエメラは、オランダをはじめ、各国で人気のオーディション番組「The Voice」で、奇跡の歌声と称賛されて歌手になった翌年、本作品でスクリーンデビューを果たした。
歌声はもちろん、瑞々しい中にも光るものがいくつもある演技力は半端ではない。
圧巻は、耳の不自由な家族が見守る中で、途中から手話を交えながら歌うパリでのオーディションのシーン。歌手としても女優としても、今後の活躍が大いに期待される。フランス映画。1時間45分。
奇跡の歌声に元気づけられる映画「エール!」
(作家、たからしげる)2015.10.28 ZAKZAK
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