全盲の福本さん指導 「ハンデあっても楽しめる」
今月上旬、大阪市東住吉区の福本さんのスタジオに、大学4年家知暉さん(22)のドラムの軽快なリズムが響いた。「仕上がってきたね」。共演予定のプロミュージシャンの言葉に、家さんは「バタついてしまうけど楽しい」と笑顔を見せた。
家さんは幼い頃、言葉の発達がゆっくりで、今も人とのコミュニケーションが苦手という。中学2年生から通う音楽教室でドラムをたたいてストレスを発散し、苦手を克服してきた。演奏も上達し、今回、プロとの共演に抜てきされた。
演奏するのは、熊本県出身のロックバンドWANIMAの曲「やってみよう」。熊本地震からの復興への祈りも込める。難曲だが猛練習でプロとの息も合ってきた。「気分爽快。会場を盛り上げる」と意気込む。
福本さん自身、先天性の緑内障で視覚障害を患う中、11歳からピアノを始めたが、大阪芸術大声楽コース在学中に完全に失明。卒業後も演奏活動の傍ら、25年前から音楽教室を主宰し、「ハンデがあっても音楽を楽しんでほしい」と、障害者らに歌唱やピアノ、ドラムなどを教えてきた。
発表会は、普段は個別指導の生徒たちが互いの成果を披露できるようにと始めた。当初は舞台に上がるのが精いっぱいの生徒もいたが、回を重ねるごとに慣れて、楽しめるようになってきた。今回は24人が出演予定だ。教室の生徒の中には椅子にじっと座れたり、大きな音も出せたりするようになってきた人もいる。保護者らは「各自の状況を理解して指導してくれるので、自分のペースで続けられた」と感謝する。
「発表会は努力の証し」と話す福本さん。「舞台の一人一人が達成感を感じられるよう、それぞれに注目してほしい」と話している。
入場無料。問い合わせは福本ヒーリングスタジオ(06・6719・8198)まで。
発表会に向け、福本さん(左端)やプロと練習する家さん(右から2人目)
2019/03/23 読売新聞
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