ゴエモンのつぶやき

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暴言・暴力を繰り返す発達障害の長男 「絶対に一緒に暮らさない」と母

2018年04月30日 10時42分22秒 | 障害者の自立
家族に暴言・暴力を繰り返してきた30歳の長男は、両親から年間340万円の仕送りを受けて、働かずに一人暮らしをしている。父親の定年退職後も仕送りを要求し、このままではあと3年で預貯金は底を突く。だが長男を自宅に戻せば、また暴言・暴力の被害を受ける。ファイナンシャルプランナーが提案した意外な解決策とは――。

■1400万円の退職金が2年で半分に……もう暮らせない

小雨降る日。私が勤務するFP事務所に60代の夫婦が訪ねてきた。予約時間より10分ほど早い。応接室には、少し落ち着かない様子の男性(62)と、伏し目がちな女性(60)がいた。あいさつを済ませると、二人は深くおじぎをして、こんな話を始めた。

「一度も働いたことのない長男(30)について相談したくて参りました。長男は今年2月、発達障害により障害年金2級の認定を受けました。一人暮らしをしています。5つ下の次男(25)は知的障害者で一緒に暮らしています。次男も障害年金(2級)を受けています。長男の仕送り負担が重くて、困っています」

長男には家賃として月5万円、さらに生活費として月15万円を仕送りしていた。しかし、お金が足りなくなると母親に電話で無心してくるため、仕送りはは見込みより100万円ほど多い年間340万円に達していた。父親が現役で働いていたときはなんとか暮らせたが、定年後の再雇用により年収は半分以下になり、長男への仕送り分がそのまま赤字に。60歳時の1400万円の退職金は、この2年で半分近くまで減り、このままはマズイと相談に来たということだった。

<家族構成>
父親:62歳(定年退職後、再雇用で勤務中 手取り年収390万円)
母親:60歳(主婦)
長男(本人):30歳(無職・別居・昨年発達障害と認定され、障害年金2級受給)
次男(弟):25歳(無職・知的障害がある・就労支援施設に通所・障害年金2級受給)

<資産>
預貯金:1012万円(残りの退職金700万円と、それまでの預貯金の合計)
自宅:マンション(持ち家・3LDK・時価2000万円)

<収入>
父親:約390万円
長男:約78万円(障害年金)
次男:約80万円(障害年金+給与)

▼母親「(長男とは)絶対に、一緒に暮らさない」

ここまでの話を聞いて、私はひとつ疑問だった。なぜ長男は一人暮らしをしているのだろうか。一緒に暮らせば、経済的な問題はおおむね解決できる。「ご長男を自宅に呼び寄せることはできないのですか」と聞いてみると、ずっと下を向いていた母親が、私に向かってこう答えた。

「とんでもないです! 絶対に無理です」

夫妻によると、長男は弟と母に対する暴言・暴力がひどいという。母親には、「俺がこうなったのはあのとき、お前の育て方が悪かったからだ」と責め、弟に対しては「お前がこんなだから、俺は就活を妥協できなかった」などと罵る。興奮すると、殴ったり、蹴ったりすることもある。

「本人は戻ってきたいようですが、一緒に暮らす選択肢はありません」

父親がそう断言すると、母親はふーっと息を吐いて、こう話した。

「『お金がないから振り込めない』と言ったら、『家を売れ!』と言われました。無理だというと、『障害年金は俺のものだ。俺が使えるようにしろ』と言います」

■両親の生活費は月17万減額、長男への仕送りは年240万減

筆者はFPとして次の3点を提案した。

(1)長男が暮らす賃貸マンションの契約者をご長男に変更する

長男を契約者にして住民票を移す(世帯分離)ことで、公営住宅の申し込みや生活保護の申請が可能になる→住居費の削減/最低生活費の確保

(2)家計の見直しを行う

長男の仕送りを止めたとしても、お父様の就労収入がなくなれば、大幅な赤字になる。ご長男だけでなく、家族全員で危機を乗り切る覚悟が必要→キャッシュフローの改善

(3)家族会議を開く

長男が現実を受け入れられるように話し合いの場をつくる。この生活を続けることでどんな未来が待っているのか、客観的に判断できる資料を提供し、両親の決意を示す→家計の状態を示し、少ない収入で暮らす覚悟を促す

(1)の提案は受け入れてもらえたが、(2)と(3)に関して戸惑っているようだった。そこで、将来どんな暮らしが待っているのかを理解してもらうため、現状のキャッシュフロー(CF)を明らかにすることにした。

▼家賃の仕送りは2019年度末まで、とする改善案

その結果、このままでは2020年度末には預貯金がゼロになることがわかった(図表1)。

父親の収入(手取り年収390万円)と次男の障害年金等(年80万円)を合わせても、父、母、長男の3人の基本生活費(年480万円)を賄えない。つまり長男が完全に自立し、仕送りがなくなったとしても、毎月のCFは赤字だった。退職金が入っていたので気付きにくかったのかもしれないが、極めて危険な状況である。

そこで、次の家計改善案を提案した。

<家計改善案>
1.両親+次男の生活費は月40万円を月23万円に減らす
2.家賃の仕送りは2019年度末までとする(2年間の猶予後に公営住宅への転居を目指す)
3.その他仕送り額を年280万円から年36万円(月3万円)に減らす

この改善案を見て、母親からは「長男への仕送りはまだ続けないといけないのでしょうか」と聞かれた。私は、「これ以上払いたくないというお気持ちはわかりますが、ご長男の自立のために必要であるとご理解ください」と答えた。

■長男への仕送りを完全に打ち切らなかった理由

仕送りを完全に打ち切らなかったのには、2つの理由がある。

1つは、公営住宅は希望すればすぐに入れるものではないからである。募集期間は限定されていて、人気も高い。入居までのつなぐ資金も必要だが、今ならつなぎ資金を出すことができる。入居できれば、長男の自立を促すことができる。

2つめは、今回の提案(改善案)がラストチャンスであることを長男に理解させるためだ。

今なら2年分の家賃とは別に、長男に月3万円の仕送りができる。しかし、1年引き延ばすと、収支の関係から仕送りは月2万円に減る。さらに1年先送りすると月1万円、3年先送りすると、資金がショートするため仕送りは不可能になる。だから、冷静に数字をみれば、今この提案を受け入れることが、長男にとって利益を最大化することになるのだ。

また、「家を売ればいいじゃないか」と言われた場合を想定して、資金がゼロになる3年目に自宅を売却し、今の生活を続けるシミュレーションを作った。すると、6年目で資金が足りなくなることがわかった(図表2:近隣の不動産価格等を参考に、売却後の手取り益を2000万円、売却後に発生する家賃月12万円で計算)。

▼母親「長男は私を攻撃してくると思います」

前述の3つの見直しを行った場合、父親が再雇用先を退職すると、やはり単年度では赤字になってしまうが、赤字額が小さいので、父親95歳、母親93歳まで金融資産が残り、自宅を手放さずにすむことがわかった(図表3)。

一通り説明をしたところ、父親から「これを実現させれば、私たち家族の生活は守られるのですね」と聞かれたため、私は「はい、その通りです。長男が何を言っても絶対に折れないでください」と答えた。

それを聞いた母親は「長男は私を攻撃してくると思うので、一切、口を開かないようにします。先生、私の想いを代弁してください。どうぞよろしくお願いします」と言って、深く頭を下げた。

■長男猛反発「お前たちは何を考えているんだ!」

家族会議当日、ご両親は長男がこの場にくるのか心配をしていたが、集合時間の5分前に長男はやってきた。両親、長男、発達障害者支援センターの相談員、FPである筆者の5人が揃ったところで本題に入った。

「本日はご長男の障害年金と仕送りについてご提案があり、お集まりいただきました。まずはお手元に配った現状のキャッシュフローをご覧ください(図表1)。現在の生活を続けた場合の家計収支をまとめています。お父様が定年退職されてから、年間340万円近い赤字がでており、このままでは3年目に金融資産がゼロになります」

そういうと、長男はそわそわし始めた。足踏みをしたり、身体を小刻みに揺らしたり。筆者は長男を刺激しないように、いつもよりゆっくりとした口調で話を続けた。

「現在の預貯金と収入で暮らしていけるだけの生活費を試算してみました。図表3をご覧ください。お父様、お母様、ご次男3人の生活費は月40万円から月23万円に見直していただきます。また、ご長男への仕送り額は現在の月15万円から月3万円となります。この仕送りと障害年金(年78万円)で暮らしていけるように、公営住宅の申請手続きを進めていきます」

すると、長男は急に立ち上がり、「お前たちは何を考えているんだ! 俺がこんな状態になったのはお前たちのせいじゃないか」と、大声で叫び、過去にあった恨みごとを念仏のように話し始めた。

▼父親「俺たちが悪かった。でも、もう暮らしていけない」

母親がおびえていたのはこれか。そう思った瞬間、父親が冷静な声でこう遮った。

「そうだ、俺たちが悪かった。しかし、お前の要求通りにお金を渡していると、あと数年で家族みんなが路頭に迷うことになる。暮らしていけないんだ」

その声に続き、筆者は長男に対して3つの提案を伝えた。長男は2つのキャッシュフローをにらみ付けたが、また母親に対して怒鳴りはじめたので、私は「話を聞いてください!」と声を張った。

それでも長男は「あなたの話は聞きたくない。どうせ生活に困ったら、生活保護がもらえるんだろう?」と反論してきたので、私は生活保護制度の詳細を説明した。

長男が暮らすエリアで最低生活費としてもらえる額は月7.5万円程度。一方、障害年金は月6.5万円程度だが、長男は両親から月3万円の仕送りが受けられる。生活保護を受けるよりも、今回の提案(6.5万+3万円)のほうが受取額は増えるのだ。

そのことを伝え、さらに自宅を売却した場合の試算結果も伝えた。資料に目を通した長男は、小さく「わかった」といい、発達障害者支援センターの相談員と話したいというので、解散になった。帰り際に父親はこういった。

「お前に対して自分たちができることは、家賃を最長2年分支払うことと、二人が生きている間は月3万円の仕送りを続けることだけだ。これ以上は何を言われても何もできない。また、今後お前とのやりとりは俺が窓口になる。母親の携帯は解約する。今後は俺の携帯に電話するように」

■長男「これでは生活できない。食費だけでなくなる」

相談員と一対一になった長男は「これでは生活できない。食費だけでなくなってしまう」と、これまでの強気の態度とは一変して、すがるような瞳で懇願してきた。

「食事が心配なら、同じ障害をお持ちの方が入居できる施設があります。そこなら、食事の支度はスタッフが行うので心配ありません。暮らしていけますよ。入所を希望されるなら、ご相談ください」

その言葉を聞いて安心したのか、しばらくの間、静かに通帳を見つめていた。彼が何を考えていたのかはわからない。ただ、背中を丸め、通帳を見つめる姿に、私は胸を締め付けられた。親子のボタンの掛け違いはいつから始まったのだろうか。彼はお金を要求することで、親の愛を図ろうとしていたのかもしれない。

▼長男からのお金の無心はぴたりと止まった

数カ月後、私は母親に電話をかけた。すると長男からのお金の無心はぴたりと止まったとのことだった。

子どもの要求に対して、親が譲歩しないこと。客観的な資料を用意したこと。相談員の同席により、逃げ場があったこと。それらの要素が、現実を受け入れ、一歩を踏み出す結果につながったのではないか。そう考えさせられた事案だった。

「普段から口うるさかったから殺した」。今年4月、鹿児島県日置市で父や祖母など男女5人を殺害した男は、そう供述しているという。男は仕事もせず、ひきもりがちだったようだ。ひきこもる子の暴力に対して、家族はどう立ち向かえばいいのか。

今回の家族のケースは、ひきこもる子を再生に近づけることで、結果的に家族を守ることができた。悩むだけでは事態は解決しない。ぜひ外部の専門家に相談してほしい。

(ファイナンシャルプランナー 柳澤 美由紀 写真=iStock.com)


見えなくてもスポーツ「観戦」 球場にサポートスタッフ

2018年04月30日 10時35分37秒 | 障害者の自立

 目が見えなくても、スポーツ観戦したい――。競技場の臨場感は視覚障害者にとっても特別だ。人混みでも移動できるよう手助けをするボランティア団体もある。ただ、その人件費を支給する国の制度利用をめぐっては地域差があるとされ、課題もありそうだ。

 病気は「頼る勇気」と「お互い様」

 「ホームランはね、キーンと高い音が響くんだよ」。視覚障害がある広島県福山市の種本茂昭さん(55)は「生粋のカープファン」で、毎年、広島市マツダスタジアムに野球観戦に出かける。球場では捕手のミットにボールが収まる「バスッ」という音がはっきり聞こえるという。応援歌が聞こえれば一緒に声を張り上げる。「観戦が一番の楽しみ。無理をしてでも行きたい」と話す。

 広島カープは2009年のマツダスタジアム運用開始とともに障害者や高齢者らをサポートする「ホスピタリティスタッフ」を置く。公式戦に常駐し、手伝いが必要な人がいないか目を配って声かけをする。あらかじめ連絡(入場券部=082・554・1010)をすれば移動の付き添いを頼める。

 福山市の支援施設はこのスタッフの協力を得て視覚障害者の観戦会を毎年企画。種本さんも普段はラジオで試合を聞いているが、この観戦会に毎年参加している。

 視覚障害者にとって、スタジアムなど広い競技場では移動が難しい。

 ブラインドサッカー日本代表加藤健人さん(32)と、弱視のロービジョンフットサル日本代表岩田朋之さん(32)は、Jリーグや日本代表戦などのサッカー観戦が趣味。2人とも病気が原因で視力が低下してからは足が遠のいていた。スポーツマンの2人にとっても、競技場ではトイレなどで席を離れると方向がわからなくなるだけでなく、人混みや段差が危険で1人で戻るのは困難だ。

 今は付き添う友人に誘われて、再び観戦するようになった。「もう楽しめないと思っていたけど、やっぱりスタジアムの空気感はいい。試合前のドキドキ感、サポーターの声援は格別」。岩田さんは「僕らは一緒に観戦してくれる友人がいるが、そうでない人にはハードルは高いと思う」と言う。

 そうした人を支援するためボランティア団体「全国視覚障害者外出支援連絡会」(JBOS)では、趣味で遠出したい視覚障害者と各地の支援団体をつなぐ。目的地までの案内や入場を頼める。1996年の設立当初は9団体だったが、現在は36団体が加盟。阪神甲子園球場が近い大阪の支援団体「クローバー」には高校野球やプロ野球の観戦希望者から毎年依頼が寄せられる。

 JBOS事務局長の海士(かいし)美雪さん(70)は「移動の手助けがあれば、もっと趣味の幅を広げられる。『こんなことで』と遠慮せず、活用して欲しい」と呼びかける。問い合わせはメール(office@jbos.jp)で。ボランティアも募集している。

費用支給に差も

 厚生労働省によると、視覚障害者の外出を助ける取り組みをめぐっては、2011年に施行された国の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に基づく同行援護事業があり、付き添い者の人件費を国などが支給している。ただ、娯楽での利用について、国は「社会通念上不適切な目的」は認めない方針を示しているだけで、事実上の判断は自治体に委ねている。

 スタジアムなどでの手助けも、障害者への差別防止の観点から施設側が担うことを基本とし、配慮のない施設内で制度の利用ができないケースも懸念される。

 同省や日本盲人会連合の同行援護事業所等連絡会によると、支給決定については余暇活動の内容によって判断にばらつきがあり、一部の地域では申請者が「趣味での外出」をためらうケースもあるという。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>


親族が社協に2度相談…三田・長男監禁

2018年04月30日 10時29分53秒 | 障害者の自立

 兵庫県三田市で精神疾患のある長男(42)を自宅敷地内の檻(おり)に閉じこめたとして、父親(73)が逮捕、起訴された事件で、市と市社会福祉協議会は28日、親族の女性から2013年8月に2回、相談を受けていたと発表した。市社協に記録が残っていたという。20年以上前にも家族から市に相談があったことが判明しているが、いずれも保護につながらず、市は今後、第三者委員会を設置して対応を検証する。

 長男は約25年にわたり、檻で生活させられていたとみられており、父親が監禁罪で起訴されている。

 市などによると、市社協が市からの委託で運営している市障害者生活支援センターに13年8月2日、親族の女性から「きょうだいに障害のある子がいて、施設入所を検討している」と電話で相談があった。

 同5日、男性相談員がセンターを訪れた女性と面談。市に連絡し、長男が障害者手帳を持っていることや、過去に福祉サービスを受けていないことを確認した。障害の程度について、女性は「長い間、会っていないのでわからない」と話したという。

 相談員が福祉施設を複数紹介し「希望があれば自宅を訪問する」と説明。女性は「きょうだい夫婦に相談する」と面談を終えたが、その後連絡はなかった。障害者手帳から長男の住所は把握できたが、市社協から連絡は取らなかったという。

 市や市社協は「支援しなければ、危険な状況になるとくみ取れる相談内容ではなかった。訪問することも説明しており、総合的に判断して当時の対応はやむを得なかった」としている。

2018年04月29日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

第3回座談会 東京五輪・パラへ、平昌の教訓生かせ

2018年04月30日 10時05分58秒 | 障害者の自立

川内氏 レガシー報道を/桜井氏 超人的な姿、積極的に

 小松主筆 毎日新聞としてパラリンピック報道にどう取り組んだのか説明させてください。

 神保忠弘運動部長 かつてパラリンピック報道は完全に福祉記事で、主にスポーツ面ではなく、社会面で扱っていました。1998年長野冬季パラリンピックの頃から徐々に意識が変わり、競技としての側面にもっと注目していこうとスポーツ面での扱いも増えました。今回もスポーツ競技大会としての報道が主になっています。ただ、パラリンピックと五輪が全く一緒かというとそこは違うのではないかとも考え、バリアフリーの課題などパラリンピック独自の視点を持った記事も書くことが今回の一つのテーマでした。

 小松主筆 実際に現地で観戦した桜井委員は、新聞報道をどうご覧になりましたか。

 桜井委員 大会では、視覚障害者のバイアスロンなどに、スポーツや人間の可能性というものを強く感じました。そのような超人的な姿を純粋にスポーツとして楽しむということを、より強く打ち出していかなければならないと思います。そういう記事をスポーツ面で積極的に取り上げていただいていることは大変良いことです。

 川内委員 五輪・パラリンピックが終わった後で、レガシーで社会がどう変わったかを知りたい。毎日新聞(17年4月18日付朝刊「月刊五輪」)でリオの競技会場が荒れ果てているという現地リポートがありましたが、現地で定着していないスポーツを五輪・パラリンピック競技として無理やり実施し、その後は誰もやらなくなるのはよく起きること。しかし、そういうネガティブな面だけでなく、例えば多くの人がボランティア活動にいそしんだり、社会基盤が充実したりしたことの社会への影響などポジティブな面もあります。障害者スポーツを見たり、障害者に接したりしたことで、物の考え方としてのレガシーがどう残り、社会がどう変わってきたかをリポートしてもらうと、大会開催の効果が市民にも実感しやすいと思います。

 今里氏 20年までに障害者のスポーツ大会は数多くあります。せっかく今は障害者スポーツに目が向いているのだから、いったん関心が薄れてしまって東京大会で再び盛り上げるのではなく、つなげていっていただきたい。スポーツ庁はスポーツの「する」「見る」「支える」の振興に取り組んでいますが、「見る」の部分で新聞のスポーツ面は、こういうすごい競技でこんな活躍をしている選手がいるんだよ、と訴えかけます。「する」では、子供たちを実際にやってみようという気持ちにさせ、どんな場でできるかなどを取り上げてほしい。「支える」では、障害者スポーツの競技団体などは資金的に脆弱(ぜいじゃく)なケースも多いので、課題をどう解決していくべきかを取り上げていただくとうれしいです。

 ◆キャンペーン

河合氏 議員秘書に障害者、義務化しては

 小松主筆 パラリンピック報道以外にも、弊紙では「ともに2020」キャンペーン報道を続けております。前回の座談会以降の報道内容をご説明し、皆さんからご意見をいただきたいと思います。

 砂間裕之・編集編成局総務 障害を持っている議員をクローズアップし、昨年12月から紙面展開してきました。障害者差別解消法は行政などに合理的配慮を求め差別をしないようにうたっていますが、三権分立に配慮して国会と裁判所は例外になっていることを正面から取り上げました。国会の議員会館のバリアフリーを検証したのが第1弾。また、障害のある地方議員がどれくらいいるのか独自に調査しました。国内で身体に何らかの障害を持っている方は3%程度いるが、議員の数でみると0・2%程度になってしまう。これはやはり少ないのではないか。なぜ障害を持つ議員の数が多い方がよいかというと、当事者の声をうまくすくい上げて直接的に行政へ反映させられることが大きいと考えています。新聞報道で障害のある方の議員活動は、今までほとんど取り上げられていない。こういうところから行政に風穴を開けていくことは非常に重要だと考えています。

 河合委員 議員に障害者が少ないのはよく分かっていますが、そもそも日本は女性議員も少ない。障害があるから少ないのか、そういうところも含めて課題を考えた方がいいと思います。また、障害のある議員の報道量が少ないのは、選挙の公平性の問題があるのではないか。障害があるだけで報道量を増やすのは、他の議員からすると「それはおかしいのでは」という声があるのでしょう。

 桜井委員 議会の設備の整備が遅れているのは、議員に障害のある方が少ないから必要性を感じなかったのか、その逆なのか分かりませんが、いずれにしてもしっかり整備していく必要がある。その際に、三権分立というのはそこに国が成り立っている仕組みなので、やはり自立的に、自らの責任で整備していく意識を持っていただくことが大事だと思います。

 河本委員 私はソフト面にも何らかの働きかけをしてほしいと思います。聴覚障害など対面しただけでは障害をお持ちだと分からない方が、どのような配慮を必要としているのか意識を喚起していくようなことを、記事の中で訴えていただきたいです。障害を持つ議員の数を増やすという数値目標を持つよりも、議員会館でもそうですが、一緒に働くスタッフに障害のある方が含まれるということがもっとあっていいと感じます。そういう相互理解を深めるアプローチがあってもいいのではないでしょうか。

 河合委員 現在、国会議員は国費で3人の秘書を置くことができますが、「第4秘書」に必ず障害者を入れるという制度を作ったら面白いかもしれませんね。約700人の障害者雇用を生み出します。

 今里氏 障害を持った方が議員本人になるのが一番分かりやすい話ではありますが、住民の代表である議員に障害者への理解を深めてもらうことが必要だと思います。今はそれが全然足りていません。

 小松主筆 たくさんの「宿題」をいただきました。皆さんからの提言を踏まえ、20年東京五輪・パラリンピックだけではなく、それに至る過程も「ともに2020」キャンペーンに含め、紙面作りに生かしていきたいと思います。ありがとうございました。


 ■人物略歴

かわい・じゅんいち

 早稲田大卒。先天性弱視で15歳で全盲に。パラリンピック競泳で金5個を含む計21個のメダル獲得。43歳。


 ■人物略歴

かわうち・よしひこ

 横浜国大大学院修了。工学博士、1級建築士。工業高専在学中にスポーツ事故がもとで車いす生活に。64歳。


 ■人物略歴

いまさと・ゆずる

 東大卒。1985年文部省(現文部科学省)入省。日本スポーツ振興センター理事などを経て2017年7月から現職。57歳。

毎日新聞   2018年4月30日


親族が5年前に市社協に相談 障害者の長男監禁事件

2018年04月29日 12時08分17秒 | 障害者の自立

 障害のある長男(42)を檻(おり)に閉じ込めたとして、兵庫県三田(さんだ)市の無職山崎喜胤(よしたね)被告(73)が監禁罪で起訴された事件で、三田市と市社会福祉協議会は28日、山崎被告の親族の女性が長男について5年前、市社協に相談した記録が見つかったと発表した。市はこれまで、「ここ数年の相談の有無は、記録に残っておらず、わからない」としていた。

 同日会見した市と市社協によると、市社協のシステムに2013年8月の相談記録が2件あった。同2日付は女性から市障害者生活支援センターに電話、同5日付は女性がセンターを訪れ市社協相談員が対応したとの内容という。

 同5日付記録によると、相談員は長男の障害者手帳の有無などを市に確認。福祉施設入所を相談する女性に、施設の情報や、希望があれば当事者宅への訪問も可能なことを伝えたという。女性は当事者の親に相談すると話したという。

 市健康福祉部は会見で、残っていたのは「市ではなく、市社協の記録」とし、「緊急性をくみとれる内容ではなく、市社協の対応も総合的に判断してやむを得なかった」と釈明した。

2018年4月28日   朝日新聞