猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

7分の診療で向精神薬の処方に対抗するには

2019-07-06 21:29:32 | こころの病(やまい)

現在、町医者の紹介状なく、公立病院や大学病院に直接は行けない。これを日本政府は「かかりつけ医」制度という。

私の近所の小児科や耳鼻科の「かかりつけ医」は5分間で診療を済ます。金儲けを是とする社会では、厚生労働省のいう「かかりつけ医」制度は幻想だろう。

アレン・フランセスは、『〈正常〉を救え』(講談社)で、アメリカの「かかりつけ医」も7分にひとりの患者を診療し、こんな「かかりつけ医」に向精神薬をまかせてはいけないと書く。

アレン・フランセスは、米国精神医学会の診断マニュアルDSM-IVの作成委員長だった人である。米国精神医学会から引退したが、新版DSM-5の作成過程に危機感を覚え、精神疾患診断のインフレに警告を発している。その理由は、潜在的に危険な向精神薬を、ひとりでに治る場合にも、使うようになるからである。

しかし、ジョエル・パリス教授は、『DSM-5をつかうということ』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)で、これは「かかりつけ医」だけの問題ではなく、「精神科医は自分自身のことを、診断的な洞察力を持つ精神薬理の専門家だと思っており、精神療法にはほとんど時間を費やさなくなっている」と書いている。

金儲けを是とする社会では、アレン・フランセスやジョエル・パリスが何を言っても、レイチェル・クーパが指摘するように、精神科医に時間のかかる精神療法を期待するのは無理だろう。勝つのは、巨大産業化した薬品業界であろう。メディアや医師を金の力で制しているからだ。

すると、金儲けを是とする社会を変えるまで、自衛するしかない。

一方で、斎藤環の言うように、素人が精神療法をするのは危険であろう。精神療法はあまりにもセクト化し実践はむずかしい。重い疾患を治すのは向精神薬の使用を認可された精神科医にまかせ、自衛として、こころのやまいを予防する、あるいは、精神的苦痛が軽いうちに、まわりがいやすことだと思う。

予防でもっとも効果的なのは、斎藤環が紹介していたウィルフレッド・ビオンのベータ要素をアルファ要素に変えることだ、と私は思っている。ビオンは、母親が赤ん坊に果たす役割は、赤ん坊が苦痛なものとして受け入れることのできないもの(ベータ要素)を、母親が飲み込んで、赤ん坊が耐えることのできるもの(アルファ要素)に変えて、赤ん坊に与えることだという。

これは、精神療法と違い、誰でもがやろうと思えばできることである。相手が、赤ん坊でなくても、幼児でも、子どもから若者への変わり目であろうとも、若者であろうとも、できることである。母親でなくても、父親でも、学校の先生でも、相談員でもできることである。ちょっと親切で、ひとの気持ちがわかれば良い。

耐えることのできないものを、ちょっとした包み(言葉や態度)で、耐えることのできるものにすれば良い。

精神科医が診療に15分しかさけないなら、誰かが、親やまわりのひとに、このことを教えれば良い。

最低賃金は全国一律、時給千5百円で良いのだ

2019-07-06 20:21:18 | 経済と政治


昨日の朝日新聞夕刊に、はっとしたインタビュー記事があった。

《これが超ブラックな会社で。休みは2か月に1日で、時給は600円くらい。「最低賃金、下回ってますよね」って社長に言ってみたけど、「仕方がないよな!」で終わりでした。》

幸いにも、この21歳の派遣の青年は、IT系の資格を生かして、今年1月に転職したとのことである。

しかし、もし、あなたが、ずっと、時給600円だったら、どうするだろうか。家賃を払って、食べていくだけで、カツカツである。もし、あなたが若いなら、結婚することも夢みるだろうが、できるか不安になるだろう。共稼ぎで、よりそってくれる女の子に出会えても、子どもが生まれたときに、厳しい現実に出会うだろう。

青年はさらに言う。

《ブラック企業はなくしてほしいけど、経営のためにはブラックにならざるを得ない会社もあると思うです。》

この青年は、社長に同情している場合ではなく、最低賃金より安い時給しか払わない企業を許してはならない。もし、同情するなら、社長に共同経営者にしてもらって、自分の会社を、最低賃金以上を支払える会社に、育てるべきである。
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日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書いてある。

日本国憲法第27条に「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」と書いてある。もっとも、ここに「義務を負ふ」とあるのは、おかしいが。

日本では、「最低賃金」が都道府県によって違う。

低い時給から挙げると、鹿児島県が761円、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県、高知県、鳥取県、青森県、岩手県、秋田県が762円、山形県が763円、愛媛県、島根県が764円である。

地方の物価が安いわけではない。生活物資の値段は、首都圏とくらべて、店舗の競争が少ない分、かえって高い。

このままでは、人は、最低賃金の高い地域に移動せざるをえない。

しかし、最低賃金の高い東京都でも985円、ついで、神奈川県984円、大阪府936円で、他は900円にいかない。

それでは、時給800円で、どれだけの年収を得られるのか。労働基準法では、1日8時間を超えて働かしていけない、とある。1年に平均で労働日が245日あるから、年俸で、156万8千円である。すなわち、ボーナスなしで1ヵ月約13万円である。

これから、失業保険、健康保険、年金、税金が引かれる。住民税は所得の1割である。

私のNPOの教え子の青年は、今年の4月に特例子会社に入って喜んでいたが、今は「こんなに頑張ってもこれだけの給料か」と言うようになった。小学校の対人関係がうまくいかず、特別支援学校高等部を出たが、最低賃金の時給しかもらえない。

人が行きたがらない職業の給料は高くあるべきだが、現実は、そうではなく、日本政府は、外国から人を入れて、安い賃金を守ろうとする。安倍政権は、経営者側、すなわち、特権階級の味方だからだ。

賃金として、結婚して子供をもてるだけのお金を払わないといけない。それが、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の意味だ。
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それでは、どれだけの賃金が払えるのか。簡単な方法は、国民総生産(GDP)を人口で割ればよい。国民総生産は、国民が1年に働いて生産した付加価値であるからだ。

現在、日本が、1人当たり4万ドル弱、米国が6万ドル弱、ドイツが5万ドル弱、韓国が3万ドル弱である。日本も、民主党政権下のときは5万ドル弱あった。ドルで見ると、円安誘導の安倍政権下では、日本の国民総生産は下がっている。

円に直すと、一人当たりの国民総生産は2017年で430万円である。この人口は、子どもも年寄りも含めている。労働人口の割合は、日本政府の公表値で、人口の約52パーセントである。したがって、830万円が平均年収である。

したがって、立憲民主党の参院選公約が、時給を5年以内に1500円にするというのも、あながち、無理な公約ではないのだ。日本は、経営者、株主の味方の安倍政権が牛耳いるから、賃金が安いのだ。

会社の成長のために、会社の保留分が必要だというなら、働いている人すべてを共同経営者にすればよい。すなわち、会社の株券を給料の一部として配れば良いだけである。

いまどきの若い人は、あくどい日本政府に、だまされすぎである。

じつは、私が20年前に、日経ビジネスで見た電気・電子機器産業の労働者の平均年収は300万円強であった。日本の社会は、安い賃金で労働者を働かせていたのだ。経営陣や株主の取り分が大きいのである。みんなが文句を言わないから、賃金格差は、ますます、大きくなっている。