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まほろ界隈逍遥生々流転日乗記

鎌倉西御門サローネ タンゴトリオを聴き、江の島花火を見た週末

2013年10月23日 | 日記
 週末19日午後曇り空、アルゼンチン人ギタリスト、レオポルド・ブラーヴォ タンゴトリオのサロン演奏会を聴きに行く。
 
 小田急線で藤沢から江ノ電に乗って鎌倉へ。休日なので人出は多く、若宮大路を鶴岡八幡宮方向に歩いてゆく。境内入り口手前を右に曲がり横浜国大付属小中学校の脇を通りぬけて、谷戸地形の奥まったところにある西御門サローネへ。「にしみかど」とよむ、鎌倉政庁ゆかりの地名が冠された建物、大正15年関東大震災の直後に立てられた旧里見邸宅が本日マチネ演奏会の会場である。基本設計も本人のプランで、F.L.ライト風のモチーフが取り入れられたという本邸に茅葺の日本民家が付属している。門柱と玄関の大谷石、それに二階の白い木組みベランダが象徴的の素敵なたたずまいで、周りは谷戸の緑が迫ってきていてなかなか閑静な環境。ここを訪れるのは骨董市を含めて5回目くらいかな。

 入り口で受付をまっていると主催者のHさんご夫妻が声をかけてくれる。まだリハーサル中ですこし待ってください、とのこと。やがて午後2時半に庭先で受付が始まり、暖炉のある広間へ、椅子が並べられていてここが40から50名くらいの客席になり、ステージは隣の玄関ホールにあたるスぺースになる。すでに譜面台とコントラバスが置かれていて、サロンコンサートらしい親密な雰囲気が醸し出されている。
 
 ステージは、まずギタートリオのタンゴ曲「ダンサリン=踊り子」からスタート。古いリズムのミロンガ、ワルツと続いて、バンドネオン・コントラバスで「地底の底から」、前半のラストをA.ピアソラの組曲「タンゴの歴史」で一気に聴かせる。なによりも構成曲「カフェ1930」「ナイトクラブ1960」と続くタイトルがカッコいい。ボヘミアン、放浪の人、ひとところにとどまることをしなかったピアソラならではの魔法のタイトルだ。
 休憩時間、主催H氏からのワインサービでひと息つく。型式ばらないサロンコンサートらしく気軽で親密な雰囲気がいい。この邸宅の雰囲気もそれに一役かっているのは確かだ。久しぶりに会う友人のA氏と近況など言葉を交わす。
 後半は、ギターとバンドネオンが主役になる曲のいくつか。途中にプログラム外の一曲が「エスキーナ」、たしか街角という意味だと思う。バンドネオンの北村聡、リズムのキレとタメにすご味が増していた。とくにピアソラの代表曲を並べた「リベルタンゴ」「オブリヴィオン=忘却」「アディオス・ノニーノ」において。ともするとクサさに陥りそうなギリギリの一歩手前で踏みとどまっているようなタンゴのエロチックさを感じさせてなかなかのものだった。そのすぐ真ん前で聴いていたので、バンドネオンの蛇腹のしなりが生身の息づかいを見ているようでいっそうの臨場感を感じさせ、鼓動の早鳴りがやまなかった。アンコールが一曲、午後4時過ぎの終了。

 H氏に挨拶した後、すぐにサローネをでて駅までの道のりをA氏と歩く。途中の住宅街にある知り合いO君の自宅前で偶然散歩帰りの家人をみかけ、声をかける。よく手入れされた三匹の愛犬のふさふさして丸まった尻尾が印象的。キリッとした立ち姿で無駄吠えすることもまったくなく、よくしつけられているので律儀なご本人を思い浮かべて感心する。
 鎌倉駅でJRと江ノ電に別れて帰路へ着く。車中は江の島花火に向かうカップルで込んでいる。みんな防寒支度の装いなのが“見る気”を感じさせる。午後6時過ぎに江ノ島駅で下車して引地川沿いにでるとちょうど花火の開始直後のようで、弁天橋のむこう海辺の二か所から上がっている。すこし、風もでてきていたがなんとか雨のほうは大丈夫、夜空を見上げると大輪の光が次々と打ち上げられていく。
 タンゴ演奏会のあと、冷え込んだ秋の夜空の打ち上げ花火模様、江の島燈台の灯りと季節はずれのような海辺の光景、逆に忘れられないものとなった。