ゼンマイ切れの懐中時計修理(1)
不動の手巻き懐中時計です。文字盤が割れて、剥がれています。
時針、分針は真鍮製でピカピカです。後から付け替えたのかもしれません。文字盤の10時の箇所のホウロウが、割れて大きく欠落しています。よく見ると、パテの様なものを埋め込んで補修してあります。”Schmid Watch”と書かれています。SWISS MADE とは、どこにも書かれていません。イギリスかドイツでは・・・よく判りません。
調べてみると、今でも会社は存続しています。電子部品なども含めて、精密機械を製造販売しているようです。
3時の箇所も縁が欠けています。風防の中に白い小さなカケラがあったので、それを載せてみるとピッタリはまりました。接着剤でとめることにします。
4時の箇所も丸くひび割れていますが、接着剤で補修した跡があります。ヒビからはみ出している接着剤の色から、G17系のボンドのようです。ニカワではないようなので、せいぜい40~50年位前の修理かもしれません。ということは、時計自体はさらに50年以上前に作られたものかもしれません。
70年以上前、戦前の時計には、接着剤としてニカワが使われていました。修理の時、文字盤や腕時計のベルトなどを剥がすと、ニカワが使われているのが判ります。
かなり古い物のようで錆びが出ていますが、ムーブメントは比較的きれいな状態です。
しかしオイルが固まっているようで、テンプはスムースには動きません。クリーナーで洗浄したら、少し改善されました。
リュウズを巻いてもテンションがかかりません。ゼンマイが切れているようです。
ネジを外して香箱を取り出し、中のゼンマイの状況を確認します。
香箱をの上に載っている歯車を押さえているネジを外そうとしましたが、全く回りません。力を入れて回すと、緩まずに折れてしまいました。この箇所はゼンマイを巻く度に締めつけてしまうので、硬く締め上がっていて、なかなか緩める事が出来ません。しかも古い時計なのでネジが錆ついていたようです。
受板を外して、香箱を取り出します。
受板は裏側からは外せなくて、まず表の風防のベゼルを外し、ムーブメントをケースから取り出して外しました。材質は少し薄くてペラペラで、あまり良いもではありません。
香箱の蓋を開けてみると、やはりゼンマイが軸の近くで切れていました。ゼンマイは、巻き軸の近くで切れていることが多いです。交換部品を探すのは難しいので、切れたゼンマイを繋げることにします。
切れたゼンマイの両端にマイクログラインダーで、それぞれ溝を2箇所作って互い違いに差し込みます。強度は落ちてしまいますが、扱いさえ注意すれば何とか使える状態になると思います。
ゼンマイの幅は、1.5mm位です。溝をつける円盤状のダイヤモンドヤスリの幅は、0.6mmです。これで縦に、0.8mm程の深さの溝を作ります。深すぎるとゼンマイを巻いてテンションがかかった時に、切れてしまいますので削り過ぎないよう注意します。
さ~てと、もう夜も遅く眠くなってきたので、今日はここまで・・・とします。細かい作業なので、集中できないと、失敗します。
近頃の、ほとんど仕事が無い時計修理屋さん状態の毎日です。クォーツ時計は修理ではなく電池交換ですし、しかも安価なものが多いので電池が切れてもそのまま使い捨てにされるものが多いようです。
フィルムカメラの需要もほとんどありませんし、そちらの仕事も近頃は全くありません。営業していないからではなく、そもそも修理の需要がないのですね。
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