DeAGOSTINIの第二次世界大戦傑作機コレクションFw190D-9
唐突ですみません。昔から、メカニカルな技術の結晶である航空機には、とても興味がありました。ちょっと違う方向かもしれませんがメカの延長線上ということで、飛行機(フィギュア)の紹介です。
第二次世界大戦当時、ドイツの科学技術は世界の最先端をほとんど独走していました。現在の各種工業製品のルーツをたどれば、今でもその先端技術をベースとしたプロダクツがいくつも見られます。
メカニカルなものが大好きな私としては、当時最先端の技術力を駆使して作られたドイツの航空機にとても興味があります。書店で、アルミダイキャストとプラスチックを組み合わせたフォッケウルフFw190D-9を買ってしまいました。
強力なエンジンパワーを活かして、プロペラは非常に幅があり、これにより高高度でも高速性を確保しています。
キャノピー(操縦席)は曲面のアクリル風防で視認性が良く、主力戦闘機のメッサ―シュミットBf109よりは気密性も向上しています。しかし与圧キャビン(操縦席内の気圧を確保する機能)は、まだ技術的に開発できていません。
フォッケウルフの最初の量産タイプA型は、空冷エンジンンを搭載していました。このD型は、空気抵抗を低減し、空気の薄い高高度でも冷却能力を落とさないよう、液冷エンジンに替えられました。液冷エンジンは軸方向に長く、そのため機首のエンジン部分が先に伸び、キャノピーも後ろに下がった機体デザインとなっています。
左の写真、正面から見て機体の左側には、過給機の空気取り入れ口があります。高度が上がると空気が薄くなって燃料を燃やすための酸素が十分に供給されず、燃焼効率が落ちてしまいます。そのため過給機で強制的に空気を燃焼室に送り込みます。その空気取り入れ口です。
空冷エンジンは構造はシンプルなのですが、冷却効率を上げるため動力軸の周りに円形にシリンダーを配置しなければなりません。その結果、冷却効率は上がるのですがエンジンの口径が大きくなって空気抵抗が増して飛行機のスピードも落ちてしまいます。
このD-9のエンジンは軸方向にシリンダー(燃焼室)を配置できる液冷タイプで、口径を小さくできるので空気抵抗を減らしスピードを上げることが出来ます。
空冷エンジンに比べると液冷エンジンは冷却装置とそのカウリングが必要で、構造が複雑になり、作るのには高い技術が必要です。
第二次世界大戦当時の日本の軍用機は、ほとんど空冷エンジンを装備していました。空冷エンジンは、構造がシンプルなので、軽くて故障も少なく稼働率はとても良かったようです。しかし、より高出力と高高度でも燃焼効率を落とさないレシプロエンジンとしては、過給機付きの液冷タイプが良いとされています。
ちなみに当時の日本の軍用機で液冷エンジンを載せていたのは陸軍戦闘機飛燕、艦載機の艦上爆撃機彗星、そして終戦間際に完成した潜水空母伊号400に搭載されていた特殊攻撃機晴嵐などです。飛燕や彗星は液冷エンジン故のトラブルが多く、稼働率はあまり良くなかったようです。晴嵐は実戦の経験はありませんが、非常に高性能の水上戦闘攻撃機だったようです。伊号400でパナマ運河を爆撃し閉鎖する計画でした。
翼の形状や機体のデザインは、基本的に最初のA型と変わりません。
翼の面積を大きく取ると運動性が向上しますが、空気抵抗も増してスピードも落ちてしまいます。そのためA型は、空気抵抗を減らすため翼長は短く、運動性能を確保するため幅を広くして翼面積を大きくしています。
実は、フォッケウルフにはこのD型をさらに発展させた「Ta152H(量産タイプ)」があります。翼の形状が変わり(翼長は長く、幅は狭くなっていて、怪鳥と言われていました。)、液冷エンジンもさらに高性能のインタークーラー付き過給機を備えた高高度戦闘機です。大戦末期ドイツ本土に高度8,000メートル以上で押し寄せてきた連合軍爆撃機B17の迎撃のために作られたました。与圧キャビンを備えていて高高度(14,000m以上)に特化した、レシプロエンジンを搭載する飛行機としては究極の戦闘機と言われています。
主任設計技師はクルト・タンクで、機種コードのTaはタンクの頭文字から採られています。彼は飛行機設計技術者であるとともにパイロットでもありました。彼の設計したジェット戦闘機フォッケウルフTa183は、敗戦時にその設計図がソ連に持ち出され、朝鮮戦争時に有名になったあのMig15戦闘機のもとになりました。
機体のデザインも詳細に見てみると、当時のドイツ技術者の工夫と苦労がうかがえて、大変興味深いものです。
今回は唐突に第二次世界大戦のドイツ戦闘機、フォッケウルフの話しになってしまいました。時計やカメラとはかけ離れた分野のことなのですが、物作りという面では共通する思想があり、大いに得心、納得するものがあります。
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