老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

入院日記(6)

2025-03-12 11:49:51 | 老人日記

かわたれ時の風景。
その日は雨だった。
この時間が一番に淋しい時だ。

街に灯がぽっぽと点り始める。
街灯の向こうは幹線道路になっていて、朝夕はひっきりなしに通勤の車が通るのが見える。

     

部屋から見える正面の病院。
大きい看板ごとき物も。

横になっていても見える。
(一度もベットを真直に、水平にやった事は無いけれど。)

     
       

ベッドの横の枕頭台には、テレビ、薬箱、眼鏡、その他諸々と置いている。
少し手狭だ。

持って来ていたカセットが接触が悪くなったらしく使えなくなった。

これが無ければ、夜も昼も過ごせない。

捨てた。息子が代わりのカセットをすぐに買ってきてくれた。

消灯時間が過ぎれば、イヤホーンを耳に入れて眠気が襲ってくるのを待った。


     

とある日の食事。

そろそろと涙が出てきそうなメニューの繰り返しになった。

ご飯は一口か二口。
おかずは全部食べるようにした。

いきおい売店に行き、好きなお菓子やヨーグルト、プリンでお腹を満たす。

アイスクリームもよく買った。

お菓子は少し食べて、次のを買う。

いっぱい余ったのを、主人に持って帰ってもらう。

一度だけ、息子がお寿司を持って来てくれた。
美味しい、なんのって美味しかった。

随分と我儘な気まぐれ婆だ。

退院が出来て、嬉しいの何のって、好きな食事が取れる。

次の月曜日には予約。
目の治り具合の検査だ。

少しでも良くなっていますように、、、。✌


    ☆     朝未だき時をりヘッドライト過ぐ


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入院日記(5)

2025-03-11 11:05:16 | 老人日記
                     
病院の廊下をギャラリーに絵を展示している。
「検査室に来て下さい」
と呼ばれての帰りの廊下をふと、おり曲がってこれらの絵を飾っているのに出くわした。

昔の田舎の原風景の絵。
懐かしい郷愁を感じる絵が、廊下に14~5枚掛かっている。

湖北には、今でもこんな景が残っているのか?

いつか、どこかで見た事のある既視感。

       

淡いタッチで病人が見ても刺激のないような色使いだ。


       

メルヘンチックで心が和まされた。

               

作者名を失念してしまったのが申し訳ありません。

二階、検査室を曲がれば、壁いっぱいに飾られている。
又の機会にじっくりと鑑賞をやります。

とは。。。言えど。。。
この絵を観ていて、病室への帰り順を忘れてしまった。

あっち曲がり、こっち曲がっても病室へ帰れない。

南棟を目指すが、全く判らない。

私の部屋は南棟の6階だとは、判っているのだけれど、エレベーターで南東の六階に行ったつもりが、初めての場所だ。

現在地を確かめるが、廊下が三つ又に別れていて見当がつかぬ。

うろうろ、うろうろとしていたら、あ、喫茶室があった。

いつも、お茶を酌みに来る喫茶室だ。


詰所があって、看護婦も沢山いる。
見知った顔ぶれだ。

健忘症と認知症。
方向音痴も相まって、自分がどこにいるのか判らなくなった。

そんな、こんな、自分の中では迷い子騒動。

最後は最寄りの詰所に行き、六階南病棟の何々しかじかと言う者ですが、部屋に帰れなくなりました、、、と告げようと覚悟をしていた。
ああ、全く失敗の巻。

病室と廊下を分つドアの向こうに顔見知りの看護婦が見える。

あああ、、、やっと帰れた。

      
      ☆     渡り廊で繋がる病棟春夕焼け

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入院日記(4)

2025-03-09 12:06:07 | 老人日記

            

入院をするにあたって、下着を買った。
10日間くらいで退院をできるかな~と希望的観測をしていた。
新しい下着は10枚買った。

寝間着は、目の手術をやるから、前開きの着やすいのを用意した。
手術をした顔に触れないように全部、前開きを用意した。
二~三枚は新しく買った。
後は手持ちの前開きパジャマだ。

そして、自分で縫ったのも。
気にいった布を買って、前開きの寝間着を縫った。

            

以前に縫った前開きのパジャマも荷の中に入れた。

パジャマ数着、下着10枚、、、と荷の膨らんでかさ張る事。

昼間はどこから見ても寝間着です、、、ってのは避けた。

廊下に出るのは、お茶を酌みに行くぐらいで、ずっと部屋で過ごす。
食事も看護婦さんが運んでくれる。
至れり尽くせりの完全看護。
こんなで良いものか?と疑問?
まるで重病人だ。

四日もすれば、そろそろと看護婦の目を盗んで、図書室へ本を借りに行く。
これが楽しかった。
右目は手術をやり、最初の数日は眼帯を掛けている。
が、、、左目は良く見える。

寝間着の上からカーディガンを羽おり、誰が見ても入院患者だと分るけれど
本を選んで借りて帰る。

たった一冊だけ、家から持って来ていたのは、「子供歳時記」のみ。

           

私の愛読書だ。

     ☆     春の闇病院で泣く声笑ふ声

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入院日記(3)

2025-03-07 11:18:49 | 老人日記
  


入院をして、三日目か四日目。
院内放送で
「ヘリコプターの発着訓練を行います。騒音でご迷惑をおかけするかもしれません、、、、」との放送があった。
ヘリの降下訓練の周知だ。

       

発着場は私の病室から150~200メートル離れている場所だ。
朝夕、日の出と日の入りを眺めている。

吹き流しが吹いているのを見、風があるとか無いとか、時につけ親しく見ていた。


      
       

快音を轟かせヘリが、どこからともなく飛んでくる。

窓の傍で必死にスマホで写す。
大方は失敗。
ヘリの動きが早くて写らない。

                   

発着場の近くでは、動きまわる人の姿も見える。
お尻が半分、見えるへり。

何だか失敗したのかと思うような映像だ。

目を凝らして見ているのにも疲れた。

香川は瀬戸内海に多くの離島。
怪我人を運ぶ。
救急人の運ぶ訓練は日常、行っているのか?

医大まで30分もあれば悠々と来ることができる環境にいる自分を顧みる。

そんなこんな事を考える飛行訓練が終日行われていたのだ。


     ⊛    春遅々とヘリポートーに吹き流し





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入院日記 (2)

2025-03-06 10:50:24 | 老人日記
      

17日間過ごしたベッドの周辺。
ベッドの横に枕頭台。
備え付けのテレビがある。
カードを買って差し込むとテレビが映る。
テレビの他にカセットデッキを持ち込んだ。
カセットテープも50枚程、夫が無作為に選び家から持ってきてくれた。

主に聴いたのは、宗次郎のこころのうた、安田姉妹のベストセレクション、華麗なる世界名曲等々、優しく流れる静かなメロディーだ。

               


毎日、毎日横になる生活。ベッドを水平にして寝る事はできない。
座ったまま、尾骶骨から根がでてきそうな状況。
今思えば良く我慢ができた。
褒めてやりたい。

手術をやり、目に溜まった血液を無くするため。
溜まった血液を目の下に下降ろすには、目を横にしたままでなくては駄目なのだ。

90度にしたベッドに座り、ひたすら我慢の毎日。
哀しい、辛いけれど早く良くなって退院をしたい一心だ。
            
一週間から、10日も過ぎると、退屈もしてくる。
寝間着を普段の綿シャツに着替えて気分転換をはかったり。
使える左の目で読書をしたり、、、
しかし、目の中から血液は消えぬ。
痛みを伴わない、療養生活は、こんなものか?


     ☆     詩心の無き看護婦や声凍る




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