Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

別れ

2011-08-07 | 想い・雑感
癌末期の患者さん
転移巣が大脳の視覚野を圧迫しはじめたのだろうか
「なんか今日は暗いなぁ」
と言い始めた
そのときから
こちらの問いかけに返事はしても
内容は噛み合わなくなった

「隠れてないで出ておいで」
「○○君はもう帰った?」
「まだ行かないよ」
「うんうんありがとう」…

焦点の定まらない視線を虚空に漂わせながら
誰かに話しかけていたと思えば眠りに落ちる

それまであった痛みやお腹の張りなどは
すでに気にならなくなったようで
表情は穏やかである

いろいろな人と会い
挨拶をし
お別れを言っているのだろうか

と思っていたら
安らかに息を引き取られた

最後は必要最小限の医療行為に止め
見守るような態度でいたほうが
穏やかな最後を迎えることが出来るのかもしれない

計算できない

2011-08-07 | 想い・雑感
入院中の患者さんには
十分な食事を取り入れられない人がいる
その原因は様々であるが
足りない分は補う必要がある

濃厚流動食を飲んでもらったり
胃や腸に直接栄養を送り込んだり
血管内に直接それを送り込んだりするわけである

栄養が不足している患者さんに
それを補う処置をしているかどうかをチェックする
という役割にも
私は関わっている

足りないものを補うことによって
栄養状態が改善していく場合が多いのだが
なかには明らかに足りない状態と思えるのに
それほど全身状態が悪くならず比較的元気なかたもおられる

エネルギーや栄養という視点から見て
明らかにINが足りないのに
元気な方を見ていると
当たり前だけど人の体は計算通りでないことを実感する

仏道修行者が
どう見ても足りないだろうという食べ物で
元気に活動している姿も思い浮かぶ

医学でなく医療には
その計算できないところも大切なのだろうと思う
でも計算できないということは
感じることによってしか対応できないということなのだろうか