Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

何事も勉強

2006-09-08 | 医療・病気・いのち
 胃癌や大腸癌、直腸癌などのほとんどは、内面を覆っている粘膜にある細胞から発生してくる「腺癌」といわれるものです。

 癌に対する三大治療法は、手術、化学療法、それに放射線治療ということになりますが、腺癌というのは放射線に対する感受性が低い場合がほとんどです。つまり多くの場合癌を治すという威力がないのです。

 ただ癌が骨に転移をしたり、癌が周囲の臓器へ浸潤したりで痛みが出現してきた場合。その痛みを緩和するという効果が認められることはちょくちょくあります。

 これに対し、食道がんは扁平上皮癌と言われるものがほとんどを占めており、これは放射線治療が有効な場合が多く見られます。特に抗がん剤などと組み合わせて治療を行った場合などは成績も良いのです。

 食道がんの治療で、手術と放射線+化学療法とどちらがより有効かは、じつはまだ結論(きちっとした比較試験)が出ていない状況です。

 癌度一言でいっても、発生した臓器、癌の組織系、進行度などによって、治療の選択肢は変わってきます。それに癌に対する治療というのは、命に直結するものです。「お任せします。」という時代は終わりました。せめて、高価な買い物をするとき程度は、病気に対する情報収集をしましょう。

共鳴

2006-09-07 | 想い・雑感
 場の空気というのは、そこにいる人、特にどのような心の状態の人がいるかによって随分と変わる。ある人の感情というのは、微妙にときにはっきりと周囲の人の心持ちに影響を与える。

 一人の不機嫌が回りに伝われば、皆がなんとなく暗くなってくる。思った以上にこんなことって多いですよね。

 逆にご機嫌な人がいれば、雰囲気が明るくなってくる。

 患者さんと接するときは、ご機嫌とまでは行かなくても、少なくとも不機嫌でないように心がけている。そりゃ人間、いやなこともあればつらいこともあるけれど、重い気持ちを人にまで伝染させてはいけないと努力している。

 しかし、私の顔は黙っていると不機嫌に見えることもあるようで、そこがなかなか難しい。鏡を見て笑顔の練習などといわれても、何かはずかしい。

 ふぅー…。

 ただ、時にお世辞でも、「先生の顔を見ると元気になる。」なんていわれると、ちょっとうれしい。

止血

2006-09-06 | 医療・病気・いのち
 身を切れば、血が出る。

 当然のことですね。

 しかし手術では、出血量がなるべく少なくなるようにする必要があります。道具の進歩で細い血管からは出血させずに手術を進められるようにはなりましたが、ある程度の太さになってくると、切れば出血します。

 基本は二つ、血管を切る前に出ないような処置をしておくこと、それと出ればすばやく適切な方法で血を止める、ということです。これができなければ、当然術者にはなれません(なれないはず)。

 この二つと同様に、ひょっとしたらそれ以上に大切なのが、手術操作に必要な解剖を確実に理解しておくことと無駄な操作をしないということです。解剖を十分知らずに不要なところを切っていけば、血管を切ったりしていらぬ出血を招きます。

 さらに術者の心構えとして大切なことは、常に冷静であることです。冷静であるためには、自信が必要、それを得るには知識と技術が、さらには経験が必要です。

 思わぬ出血があったとき、あわてて止めようとして傷口を広げてしまいそうになる場面を時々見かけます。そういうことがないように、後進の医師に具体的に技術と心構えを伝えていく必要があります。

美しさ…

2006-09-05 | 想い・雑感
 万物に、人が作ったものもや自然を含めすべてのものの中に、魂をあるいは心を見つめてきたのが、日本文化の根底に合ったのではなかったのでしょうか。そこでは、対象を大切にし、思いやる、ゆったりした大きな心の在りようがあったはずです。

 この国におけるグローバリゼーションという名の下のアメリカナイゼーション。自分の意に沿わない眼のつけ方をされると、力ずくで叩きのめす。

 人の、国の、文化の多様性を無視し、一つの感じ方考え方しか許さないような偏狭なありように、未来はあるのだろうか。

 日本は、十分に美しい国だと思う。そこにさらに美しさを求める場合、少なくとも「美しさ」の独断的、一方的意味づけを押し付けられるのだけは、ごめんだ。

浸潤

2006-09-04 | 医療・病気・いのち
 癌は大きくなるにつれて、周りの正常な組織や、近くにある他の臓器に入り込んでいくことがあり、これを浸潤といいます。そうなると、もともと癌ができた臓器からの症状とは異なる症状が出てきます。

 たとえば、大腸や直腸から膀胱に浸潤すれば、排尿時の痛み、尿に血が混じる、尿に便汁がまじるなどの症状が出ることがあります。食道がんが大動脈に浸潤すれば、突然の大出血で命をおとすことがあります。胃癌がすい臓から胆管まで入れば黄疸が出ることがあります。

 このような浸潤による症状が出てくるようでは、かなり進行した状態で、根治できる可能性はだんだん低くなります。ここになるまでには、年単位の時間がかかっているはずですし、半年前に検査をしていれば、また随分様相が変わっていた可能性もあります。癌はできないほうがありがたいのですが、もしできたものなら、少しでも早く診断をつけ、治療を開始する必要があります。

 定期的な検診を受けるとともに、何か気になることがあれば、ぜひ医師に相談していただきたいと思います。

両刀づかい

2006-09-04 | 医療・病気・いのち
 私は右利きである。しかし、手術をするときは、決して右手だけを使ってするわけではなく、左手できちっと臓器を持ったり、よけたり、摂子を持ったりしながら、手術操作をスムースに誘導するのである。だから、術者の左手(利き手でないほう)の動きを見れば実力がわかる。

 さらには、操作を行う場所によっては、右手と左手の役割を入れ替えたほうがやりやすいこともある。そのためには左手も右手とある程度同様な使い方ができるように訓練しておく必要がある。

 そこで医師になったころは、左手で箸を使う練習をし続けたものだ。それがかなり役立つ。

 技術は当然知識に裏打ちされたものでなければならないが、技術である以上、基本の反復は必須である。基本を忘れた手術は危うい。

なんかいやだ

2006-09-03 | 想い・雑感
 防衛庁職員の天下り先の問題が新聞に出ていた。
 
 F2戦闘機開発に関わっている会社への天下りが多いという指摘だ。

 天下りもさることながら、戦闘機開発に日本の企業が関わっていると、当たり前のように新聞に書かれているのに驚いた。

 現在のようにきな臭くなかった子供の頃、武器の輸出入や製造開発にかかわることは、日本企業は行っていないようなことを学んだような気がする。「死の商人」という言葉も教科書に載っていた。

 日本の技術力の多くが、武器製造に転用可能であろうことは容易に想像できる。しかしあまりに表だって、しかも当然のように兵器製造に関わる日本企業があることを新聞に書かれていること自体に、日本という国が、指導者達により戦争が出来る国に変えられて行っている不気味さを感じる。


ちょっと弾いてみた

2006-09-03 | 想い・雑感
 よしだたくろうや井上陽水がデビューしたころから、フォークソングの時代となった。みんなでギターを持ち寄り、いろいろ歌ったものだ。

 久しぶりにギターを弾いた。

 過去の記憶と結びついた行動というのは、一気に時代を飛び越えて、その当時に戻ったような錯覚を持つ。

 いろいろな経験をし、多くの思い出を持っていると、ある程度の年齢以降、より豊かな精神世界を形作ることが出来るのかもしれない。

曖昧さ

2006-09-02 | 想い・雑感
 形容詞は抽象的。

 形容詞は、主に名詞を修飾して、名詞の内容をより具体的に示すように思われるが、そうではないと思う。

 大きい、長い、やさしい、勇ましい等々、具体的なように見えて抽象的であり相対的な内容だ。

 美的感覚などは個人差が非常に大きく、どのようなものに美を感じるかは千差万別。美しいという形容詞を使うと、良さそうに感じるかもしれないが、その先に見ているものは人によって違うだろうし、非常に曖昧だ。

 そのような形容詞を使って人に訴えかけようとするのは、イメージや雰囲気で働きかけようとする広告と同じだ。リーダーは、イメージを語るなら、その裏にある具体論も語らなくてはならない。

冥界の王

2006-09-01 | 想い・雑感
 冥王星(プルート)が、太陽系の惑星からはずされた。プルートというと、ディズニーアニメの犬を思い浮かべるので、何となくほのぼのした印象をもつ。しかし、プルートというのは、ギリシャ神話の中に出てくる冥界の王。

 冥王星が発見された時、暗黒の世界の奥にかすかに見える星というイメージから、プルートと命名したらしい。ディズニーのワンちゃんの方も、冥王星が発見された1930年の誕生と言うことからその名前を付けたようだ。しかし、冥界の王とあの犬のイメージはちっとも結びつかないなあ。

 ちなみに、原子爆弾や原子力発電所でも使用されているプルトニウムもこのプルートから命名されたとのこと。この際原子爆弾もなくしていただきたいものだ。

腫瘍マーカーが異常高値を示すとき

2006-09-01 | 医療・病気・いのち
 悪性腫瘍に対する手術というのは、あくまで局所療法です。「これだけの範囲を取りました。」という治療であって、取った範囲を超えたところに転移があれば、その部分に対しては、何の治療にもなっていないのです。ですから、根治手術を目指す場合は、癌が切除範囲に留まっていること前提として、あるいは期待して手術をするのです。

 CT、MRI、PET、エコーなどを駆使しても、腫瘍の大きさが5mmくらいなければなかなか見つかりません。手術前にこのような検査をして、転移が見つからなかったからと言って、転移がないという保証にはならないのです。

 画像診断で、転移がなさそうな胃癌の場合も、腫瘍マーカーが極端な高値を示していると、どこかに転移を起こしている可能性が高くなります。とくに腹膜播種が気になります。患者さんには、腹膜播種があれば、切除はせずにお腹を閉じることになる可能性も、あらかじめお伝えせざるをえなくなります。

 そんな患者さんの手術をするとき、最初にお腹の中を見たときに明らかな腹膜転移巣がないとほっとします。洗浄細胞診と言って、開腹後に腹腔内にまいた生理食塩水を回収し、その中に悪性細胞が浮いてなければ、手術によって癌細胞を排除出来る可能性が出てくるので、ますますやる気を出して、手術を進めます。