~ 恩師の「心行の解説」上巻より ~
講演 七
「過ぎ去りし実在界と現象界の世界なり」
現象界といいますのは、形となって現れた世界、
「色即是空」の「色」の世界であり、
私たちがこの世で目に見ることのできるすべてが
現象の世界です。
つまり「この世」のことで、物質化現象の世界、
物質と化して形となり現れた世界のことです。
実在界といいますのは、ほんとうに在る世界、
般若心経で説かれている「空」の世界です。
「空」とは実体が無いということですね。
たとえば、一杯のお茶は皆の目に見えますから、
そこに在ると思いますが、
この世に形をこしらえて現れているだけで、
「頂戴します」と言って飲みましたら、
もうこの世から実体が消えてしまいます。
お花も建物も現在あるのですが、
建物は何百年か経てば、これは消えていきます。
私たちの肉体もまた同じです。
この肉体は今、現にここにあると思っております。
しかし定められた時間が過ぎた時、
この肉体は消滅してしまいます。
死という現実を通して消えていきます。
死が訪れますと、もうたちまちにして肉体は
腐っていき、一瞬たりとも留まることもなく
腐乱していくのですね。
野に放っておきますと、やがて腐り果て、
或いは犬や鳥が来て、つついて食べてしまいます。
どなたの目にも付かなかったとしても、
自然の作用によってそれは腐り果てていき、
そしてこの世から消えます。
「この身体は私のもので、私が生きているのだ」と、
よく思うのですね。
しかし、とんでもないことです。
その証拠に、自分で自分をどうすることもできません。
「私は年をとるのは嫌いだ、年をとりたくない」と
言いましても、
時間が経てば必ず年をとってしまいます。
「死ぬのは嫌だ」と言いましても、
死ななくてはいけないのですね。
そして実在の世界へ行くのが定めです。
~ 感謝・合掌 ~