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レインマン バリー・レビンソン監督 ダスティン・ホフマン トム・クルーズ

2022年06月16日 | 映画・テレビ

 ひさしぶりにレインマンを見た。自閉症の子を持つ親としては、見ずにはいられないし、だから複雑な思いも持つのだが、だが、本当にすばらしい映画だし、特にダスティン・ホフマンの演技がすごい。こういうのによくあるあざとさがほぼまったくない。よくあるのは「心を開いた」と観客に思わせる表現をしてしまうのだが、それがほぼまったくない。それがすごい。最後の方で弁護士や医者などとの会話で「チャーリーとくらす」と何度もくり返すが、いくらくり返しても、本人が理解していっているのか、ただ意味もわからずくり返しているのか、わからない所がすごい。歩き方、振り返り方、視線の動き、まばたき(のなさ)、すべてがすごい。
 この映画は自閉症のことを描いたもので、弟の成長譚なんかじゃないと思う。成長なんかしてない。自閉症の兄のことをほんのすこし理解したかな。恋人が戻ってくる理由がわからない。何にも描いてない。でもそれで良いのだ。人間ってそういうもんじゃない?トムクルーズの演技がどうとか言うが、これで良いのだと思う。演技はうまくないかもしれないが、それはこういうたいしたことない、というかごく普通の人間をうまく演じているのだ。
 自閉症は「スペクトラム」といわれるほど、幅広くさまざまだ。ここに描かれているのはたったひとつの典型に過ぎない。wikiに「サヴァン症候群」とある。
 描いてないといえば、死んでしまったこの親のことも何にも描いてない。どういう思いだったのか? 昔、自閉症は高学歴で「冷たい」性格の親から生まれるなどと言われていた時代もあるそうだ。そんなことはないのだが、それでもそういうことを暗示しているのだろうか、などと思ってしまうのだ。
 ともかくこの映画は自閉症のこと以外はほとんどなにも描いていない。それで良いのだ。