ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大捜査線』1980

2018-11-15 11:15:28 | 刑事ドラマ HISTORY







 
1980年の1月から12月まで、フジテレビ系列の木曜夜8時枠で全42話が放映された、杉 良太郎 主演による刑事ドラマ。製作はユニオン映画。(第31話以降は『大捜査線シリーズ/追跡』と改題されてます)

事件の初動捜査を行う警視庁刑事部第四機動捜査隊=通称「四機捜」チームの活躍が描かれますが、オープニングのタイトルバックには杉サマしか登場しませんw

毎回のストーリーも、とにかく杉サマ扮する捜査主任=加納 明をいかにカッコ良く見せるかに重きが置かれ、ごくたまに部下が捜査の中心になることがあっても、立ち回りやGUNアクション等の見せ場はぜんぶ杉サマが1人で持ってっちゃいますw

そもそも杉サマが主役を演じて来た捕物帖の時代劇を現代に置き換えたような企画ですから、ドラマの構造自体が往年の日本映画黄金期に量産されたスター映画の再現なんですよね。

そういった名残りは『太陽にほえろ!』『西部警察』『Gメン'75』等における石原裕次郎、渡 哲也、丹波哲郎たちの扱われ方を見ても顕著なんだけど、その一方で新たな若手スターを何人も輩出したそれらの番組と違って、この『大捜査線』はあまりにも杉サマのワンマンショーに徹し過ぎました。

本来なら、加納主任の右腕的存在の部下=沢木刑事役の神田正輝さんや、紅一点=都築刑事役の本阿弥周子さんら若手俳優をスターに育てなきゃいけないのに、見せ場を杉サマが独り占めしたんじゃ育ちようがありません。

神田さんが途中で殉職という形で降板し『太陽にほえろ!』へ移籍したのも、「このままじゃ売り出しようがない」って所属事務所(石原プロ)が判断したからだろうと思います。

けど、もしかすると杉サマご本人には「後輩がオレより目立っちゃいけない」なんていう狭量な意識は全然無くて、「主役が誰よりも頑張らなくちゃいけない」「オレが活躍しないと視聴者が納得しない」みたいな責任感でやっておられただけ、なのかも知れません。石原裕次郎さんも『太陽にほえろ!』を始めた当初は「オレの出番がこんなに少なくて大丈夫なのか?」って心配されてたそうですから。

実際に作品を観れば、杉サマが本当に魂をこめて演じておられるのがよく分かるし、加納主任のワンマンショーがドラマをつまらなくしてるかと言えば、決してそんな事はないんですよね。むしろ、そこが他の刑事ドラマじゃ味わえないオンリーワンの魅力になってる。

その最たるものが、杉サマが自ら作詞されたエンディング主題歌です。ひたすら女性に媚びた甘ったるいラブソングばかりはびこる日本の歌謡界において、タイトルが『君は人のために死ねるか』ですからね!

水谷豊さんの『カリフォルニア・コネクション』とよく似たイントロ(元ネタはアリスの『チャンピオン』?)で始まり、杉サマのやさぐれた感じのモノローグが入る。

「昨日、1人の男が死んだ……闘って闘って、ひっそり死んだ……あいつは何の取り柄もない、すかんぴんな若者だった……」

いったい誰のことを語ってんだ?って思いながら聴いてたら、そこで唐突に「♪しかしアイツは知っていた! 熱い涙をーっ!!」って、怒りながら唄い出すんですよねw

「♪闘って死ぬ事を、どうして死んだのかとは聞かないーっ!! 君は人のために死ねるか? あいつの名はーっ!? ポリスマン♪」

……という、機捜ならぬ奇想天外な楽曲ですw 当時の深夜ラジオで「珍曲」としてよく紹介されてましたから「ドラマは観た事ないけど主題歌はよく知ってる」と仰る方も多いんじゃないでしょうか?

もちろん杉サマは笑いをとるつもりなど一切なく、このドラマで描こうとしてるテーマ、伝えたいメッセージを大真面目に語り、唄っておられるだけの筈。でも、それが世間の空気とあまりにズレてたワケです。

『大捜査線』という作品自体が、'80年代の先陣を切る刑事ドラマとしてはあまりにストイック、かつストレート過ぎたのかも知れません。

だけど今あらためて観直すと、西部劇をモチーフにした刑事アクションとしてクオリティーは高いし、創り手のストレートなメッセージに心を揺さぶられます。

要するに、世の中の悪に対する杉サマのハンパない怒りと憎しみ。そこで描かれる暴力の激しさは『西部警察』にも負けてません。石原プロが「軍団」がかりでやってる事を、杉サマは全部1人でやっちゃうワケですw

これは今、再評価されるべき作品じゃないかと私は思ってます。少なくとも、ただ突っ立って謎解きするだけの昨今の刑事ドラマより100倍面白く、見応えがあります。

レギュラーキャストは他に、山内 明、佐分利信、青木義郎、垂水悟郎、赤塚真人といった渋いメンツ。『~追跡』から大村波彦、ナンシー・チェニー等も参加されてます。
 


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4 コメント

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Unknown (ムーミン)
2018-11-15 12:14:22
杉様の刑事物や現代劇はほとんど視聴したことがありません。ですがこの当時の杉様の時代劇は怒りを描いた作品が多いです。だいたい被害者は無残に殺され、杉さまは悲しみと怒りを一身に背負って相手の下手人をフルボッコにします。同僚や上役が止めても振り切って容赦なく半殺しにします。杉さまのパンチもキックも重くてシャープ、合気道も有段者で投げては殴る、蹴るを延々と繰り返します。杉さまは辛口の時代劇を作りたいと語っていました。ですので杉さまの作品は好き辛いが分かれます。私は苦手でした。
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>ムーミンさん (ハリソン君)
2018-11-15 18:38:05
私は悪党フルボッコの刑は大好物なのですが、あまり執拗にやられると引いちゃうかも知れません。『大捜査線』でも杉サマのしつこい暴力シーンがいくつかありました。あの人、ホントしつこいですよねw

人の暴力欲求を映画やテレビが代わりに果たすのは、世の中に蔓延するストレスを発散させる効果があると私は思うのですが、やり過ぎると逆効果になるやも知れず、さじ加減が難しいですよね。

ただ、昨今のテレビ番組の自主規制が異常なのは確かで、それがDVなど歪んだ暴力を生んでるような気はします。やはり毒には毒が必要なんですよね。
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杉サマによる杉サマのためのドラマ (ゴールデンライオンタマリン)
2019-09-06 09:25:45
放映当時私は中学生で、
マダムキラー杉サマの魅力は
理解できませんでした。
当時の新聞の番組批評では、
杉サマがカッコつけすぎとか
書かれていたのを覚えています。
でもテレビ神奈川で先日まで再放送されていたのを
初めて観ましたが、
いやーかっこよかったです。
私が中年になったせいもありますが。
OPの杉サマが街を歩くシーンのオーラがばっちり!
脇役の青木義朗さん、山内明さんも渋くて素敵でした。

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Unknown (harrison2018)
2019-09-06 10:43:04
確かに、大人にならないと解らない渋さと格好良さですよね。杉サマの場合、いいカッコしたいと言うよりはファンが求める杉サマ像をひたすらサービスされてたような感じに見えます。

番組がワンマンショー化しちゃったのも、主役としての責任を必死で果たそうとされた結果なのかも?

自ら模範となるべく運転免許を返納されたニュースなどを見ると、そんな気がして来ました。
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