古希からの田舎暮らし

古希近くなってから都市近郊に小さな家を建てて移り住む。田舎にとけこんでゆく日々の暮らしぶりをお伝えします。

『満州国演義』より引用します。

2022年06月22日 22時42分38秒 | 古希からの田舎暮らし
『満州国演義』第七巻を読みおわりました。とうとう大東亜戦争がはじまり、シンガポールで英国軍を降伏させたところです。
 いくつも心に引っ掛かることがありますが、一つだけ引用します。小説として書いてあるので前後がわかりにくいでしょうが、発言の中身を読んでください。


「わが帝国陸軍は国民革命軍(支那事変で日本軍と戦う蒋介石の軍隊)も八路軍(毛沢東率いる共産軍)もいまだ制圧できない状況にある。 …… 対米戦も覚悟しなきゃならない。支那とでさえ思うようにならないのに、アメリカと戦争して勝てると思いますか。いや、そんなことはどうでもいい。帝国陸軍が支那でこれほどの苦戦を強いられるのはなぜだと思いますか?」
 ……
「その大きな理由のひとつは徳地良純少佐のような無能な参謀が存在するからですよ。参謀だから陸大を出てる。天保銭組だ。しかし、無能きわまりない。ノモンハン事件を起こした辻政信少佐は自己顕示欲の塊りだったが、徳地良純少佐は近代戦は情報戦だという軍事学の常識も心得てない間抜けだ。存在するだけで、百害あって一利もない。徳地良純少佐は貴重な証人を無意味に射殺した。 ……
支那派遣軍を管轄する北支那憲兵隊司令部にあの無能な参謀を告発願いたい」
 ……
「わたしはどきどきぞっとすることがある。帝国陸軍が支那に進駐するのはいわば時代の流れだ。欧米の帝国主義に抗するためにはわが国も帝国主義の途を採らざるをえない。それが支那の連中にとってどれだけ迷惑だろうとね。しかし、帝国陸軍のなかに私利私欲に走ったり、無能なくせに恰好をつけたがる参謀が出て来ると、わたしはじぶん自身がとんでもないまちがいを冒しているんじゃないかと不安になる」


 日本軍の上官たちの「無能」で「卑劣」で「恰好をつけたがる」風潮は、いろんな作家がいろんな作品に書いてます。船戸与一は膨大な資料で日本軍内部の、無意味な「威張り」/「勝手な処断」を知ったことでしょう。どうしてもこの出来事を書かずにはおれなかったのでしょう。善良で有能な下級兵士たちの「膨大な嘆き」、愚劣な作戦に振りまわされて「戦死させられた」無念が、いっぱい歴史に埋もれています。



 



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