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今から何十年も以前のこと、その当時茅葺屋根が当たり前で、瓦葺はお大尽の家と決まっていた。
それが、暮らしにくい、防火上大変危険、材料の萱が入手困難、屋根葺職人がいなくなった、などの理由から茅葺屋根は姿を消した。
帽子を変えるように屋根だけを瓦などに換えたり、新築したりして田舎の原風景は短期間に消えてしまった。
我が家もこの時期に屋根を瓦にかえた。
茅葺屋根を解体する時、三百年間たまりにたまった煤と埃が体に染込んで、1週間ほど異人種の態ですごしたことを覚えている。
とにかく暮らしにくい家であった。
その後もあちこちを部分的に何度も改装して、何とか人が暮らせるようにしてきたけれど、家族が二人になったのを機会に、小さな別棟に移った。
使わなくなった母屋の天井板で覆い隠されていた太い梁を、懐かしがり出したのは、かみさんである。
そんなことで梁は明るい場所に出ることになった。