沙羅黄葉
10月は素早く過ぎて行くようだ、早い日暮れがそれに拍車をかける。
10月初めの神道祭りが終わると、大人たちは冬籠りの準備を急がなくてはならないと、せきたてられるように忙しかった。
山の中の日暮れは一段と早い、谷の向うの峯々にまだ日射しが残っているのに、谷間の小道はもう宵闇が迫っていた。
遊び呆けた子供たちは、峯の松風を天狗の羽団扇と聞き、己の擦り切れた藁草履の音が山犬の忍び足に思えて、半べそかきながら家路を急いだ。
天狗は羽団扇を巧みに使って 大木から舞い降りて、子供をさらってゆく、神隠しは天狗の仕業であった。
いつも腹をすかせた山犬は、歩きの遅い子供を襲って食べてしまう、犬たちは貪欲で、頭髪1本まで残らず食べ尽くす。
子供が風呂に入ったように着物だけが残っていたという。
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