自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(19)

2015-07-12 | ジャガイモ

ジャガイモの実に関してわたしの強い関心事の一つが,「果実を食べたら,どんな味がするのか」という点がありました。


ジャガイモにまつわる話として,毒成分アルカロイドにより下痢症状を起こすとか,実際に緑色をした目の部分を取り除かないで食べたために異常を来たしたとか,といったニュースを目にしたり耳にしたりすることがあります。

これを元にして考えると,果実を食べるのは危険極まりないといった感じがします。しかし,ジャガイモ研究のプロ浅間和夫さんがとてもおもしろいことを書いておられます。参考になるでしょうから,手記(抜粋引用)をご紹介しておきます。

実は絶対食べてはならない、とよく書かれていますが、ジャガイモの品種改良をしているとき、いたずら半分時どき食べていました。緑色が薄まり、少し黄色味を帯び、多少柔らかくなったものは食べても心配ありません。昔(太平洋戦争中)よく食べたと言う話を聞いたこともあります。特に美味というものではありませんが、品種・系統によってはイケルのもあります。果実の中には甘い香りがし、中にはポテトグリコアルカロイドが10mgと芋並に少ないのがあります。米田勉(1991、園芸学雑誌)もぶどう糖、果糖、有機酸(クエン酸、リンゴ酸)があり、果物に近いものがある、とのデータを示しております。、たくさん食べて下痢した話を聞いたことがあります。しかし、1シーズンに数回、1回に5、6個食べ続けてかなり長くなりますがその心配は全く無かった。この果実を道北のアイデアマンと私がお呼びしている佐久間さんは焼酎につけたところメロンの香りがしたと連絡してきたこともあったくらいです。私も時折、色が少し黄色味の透明感ある果実にあうと数個家に持って帰り、お皿に入れるなどして机の上に置きます。フルーティな、いい香りが楽しめます。

となると,うんと緑色が薄れているものなら,多少は口にしても大丈夫だという話になります。


そこで,食べてみることにしました。落下後数日経って,白っぽくなったものを味わうのです。


下痢をしないか,多少の心配はありましたが,なんでも体験だという気持ちで口にしたわけです。皮を剥いで中身を食べした。個数は2個。結果は以下のとおりです。

  • おいしいという感じはまったくしない。灰汁(あく)が強く,喉を強く刺激する感じ。
  • 食べた後,長く“えぐ味”が残り続ける。

したがってホッカイコガネに関する限り,実は,繰り返し食べるほどのものではないことがはっきりしました。果物の味覚とは程遠いと思われます。匂いはそうでもなかったのですが,味はちがっていました。

一方,毒成分云々に関しては,分析的に調べたわけではないのでなんともいえませんが,わたしのからだには異常はまったく認められませんでした。つまり下痢も嘔吐もなし。したがって「絶対に食べてはならない」といういい方には,わたしも疑問符を付けようと思います。味を調べる程度なら,食べても問題はなさそうですので。

試さないでとやかくいうだけでは,「食べてはならない」という先入観だけが残って,実際はどうなのかわからないままです。その点では,意味ある試食となりました。

 


初めてのクチナガハリバエ

2015-07-11 | 昆虫と花

科学館のある公園にて。

この時期,芝生広場のシバの間からネジバナがあちこち咲く頃です。この花を訪れる昆虫がいないか,関心を持って見ていきました。すると,はっきり虫だとわかる昆虫が1匹花にとまっていました。ハエです。

からだから棘状の毛が生えたハエです。この種のハエがネジバナにいるのを見たのは初めてです。それで気づかれないように注意して観察しました。

すると,「ほほーっ!」と驚くような特徴を持っていることがわかりました。口のかたちです。ハエは多くの場合,餌をペタペタと舐めるかたちをしています。ところがこのハエは,はっきりハエの姿をしているのに,長い尖った口を花に差し入れて餌を吸い上げていたのです。変わったハエだなと思い,数枚の写真に残しました。


帰って調べると,クチナガハリバエだとわかりました。口の長いハエだという特徴を,そのまま名にしたハエです。命名するにあたって,よほどその特徴が他のハエと比べて際立っていたのでしょう。

後日,科学館に用があって出かけました。同じ広場でネジバナを同じように見ていきました。いました,いました,ハリバエが。

写真を撮っていると,どうもふしぎなのです。ちっとも動かないし,逃げません。茎を手にして接写を試みて微動だにしません。よくよく見ると,脚が伸びたまま,口も突き出したまま。どうやらその格好で命絶えているらしいのです。


同じ現象は他のネジバナでも見かけました。合計で3匹。他の2匹はそれぞれに,翅を異常に広げたままで,翅を失って無残な姿で,死んでいました。これもふしぎな姿勢です。


なぜかと考えました。「もしかすると」と心当たりがあるのは,クモです。そういえば,生きたクチナガハリバエをとき,目撃クモがいるのを見かけました。写真を残しておいたのでご紹介します。このようなクモがいて,捕獲の犠牲になったのかもしれません。


クチナガハリバエとの初めての出合い,クチナガハリバエの意外な死。印象深い出来事でした。

ついで話。近くでシロバナネジバナを見かけました。ネジバナの変種です。

 

 


モンシロチョウの孵化(続)

2015-07-10 | 昆虫

はっきりとした動きが見えてきたので、その場を離れず見守りました。結果、それがよかったと思います。大変化を見逃さずにすんだのですから。チョウの種類によっては、時間をかけてゆっくり出てくるものがある一方、スルスル出るタイプもあります。モンシロチョウはまちがいなく後者に入ります。殻が薄いだけに、いくら凹凸構造で補強がなされていても穴を開けやすく、外に出やすいのでしょう。

穴がからだの出る程に開きました。すると、幼虫は頭を出してゆっくり出始めました。 


そうして、胸脚を葉に着地。


殻からからだが出ていきます。


からだ全体が葉に着きました。そしてすぐに殻の方を振り返って、それに取り付きました。もちろん、殻を、生まれて初めての栄養として口にするためです。


途中休憩することもありましたが、全部食べ終わりました。親からの贈り物を残さずに食べました。こうした動作が組み込まれた本能のふしぎを、やはり思わずにはいられません。

 


幼虫は、この後、その場を離れていきました。あとは自立して生き延びるための戦いが待っています。

 


モンシロチョウの孵化

2015-07-09 | 昆虫

モンシロチョウの生態について、わたしはそれほど関心をもっているわけではありません。それは、あまりにもありふれたチョウであり、教科書教材で何度も扱ってきた経緯があるので、新鮮味が感じられないためかなと自分では思っています。

しかし、つい先日野生植物のイヌガラシに産卵する風景を目撃し、卵を確認したことで、「これは孵化まできちんと見届けるのがよいだろう。これまではとことん観察したわけではないのだから」と思いかけました。それに、ルーペで観察するだけで接写撮影を試みたことがありません。この機会に、しっかり記録にとどめておこうと思った次第です。

産卵するのを見た翌日、イヌガラシを植木鉢に移植しました。そのとき驚いたのですが、わたしが目撃した卵しかないと思っていたのに、さらに数が増えていました。目撃以降、同じ株にモンシロチョウが訪れていたことになります。

卵が多ければ、それだけ孵化をくわしく見届けることができそうで、期待が膨らみました。以下はその記録です。

産卵直後は色が真っ白でしたが、時間が経つにつれて黄色みを帯びてきました。さらに時間が経過すると、オレンジに変化してきました。

 


一日経って、やや上辺りにごく小さな影状のものが見えてきました。確かな変化を予感させます。


それから半日経過。オレンジ色の濃淡がくっきり浮き出てきました。最上部には空間が見え始め、「孵化近し」を思わせました。これまで、こうした一連の変化を意識して観察したことはありません。


こうなると、孵化場面を見逃すわけにはいきません。それで、頻繁に観察することにしました。すると間もなく、殻の上の方に穴が開けられ始めたのです。


「あっ、出てくるぞ! うまく撮らなくちゃ」「グッドタイミング。この機会を逃したくない」という気持ちで、一瞬緊張感が走りました。 

 


今年もモリアオガエル

2015-07-08 | 随想

6月のこと。ヨッさんから電話がありました。「去年モリアオガエルが卵を産んだところに、今年も卵の塊りがあるんやけど。ちょうどオタマジャクシが孵って落ちよるところや。見に行ってないか」というお勧め話です。

翌日、ヨッさんの軽トラの助手席に乗せていただいて、山の中に入って行きました。そこは鬱蒼とした林間です。梅雨のことですから、いかにもじめっとした空気が肌を包みました。

行ってみると、卵塊は枝に付いていました。下には水たまりがありました。そして、観察用の足場にということで木が渡してありました。ほんとうは水が流れる山道といった感じだったのだそうですが、これではかわいそうだというわけで、ヨッさんが木で堰をし、石を積んで水溜りを確保されたということでした。それが昨日の話で、ヨッさんにとっては翌日の今日が再訪日になります。


話していると、いつもながら、生きものにこころを寄せていらっしゃるという感じが伝わってきました。

「オタマジャクシが下に落ちても、水が少なかったら生きていけへん。それで、水が溜まるように堰をしたんや」

「それにしても,どうやって下に水があることがわかるんかなあ」

「木をこつこつ、こつこつ登って、それでちゃんと下に水があることを心得ているんや。えらい、えらい。人間の知恵をずっと超えているのとちがうかなあ」

「昨日、この木の根元に親がおったんやけどなあ」

こんなふうです。卵塊は全部で3つ。高いもので3m以上あるかと思われました。親ガエルは見当たりませんでした。

水溜りの中には、木から落ちて育ち始めたオタマジャクシがたくさんいました。わんさといました。餌が限られた中で生きていくのですから、大多数が淘汰されていくでしょう。それが自然の摂理です。非情であっても、当たり前の成り行きです。


ここには自然が残っている、来年もこの風景を見ることができればなあと感じながら、現場をあとにしました。 

 


「何の骨?」

2015-07-08 | 随想

シュウさんから電話がかかってきました。用件は次のようなものでした。

「堤防の木組みに,動物の背骨が引っ掛かっている。頭がのうて,真っ白な骨が逆立ち状態になっとるんや。50cmぐらいの長さかなあ。気持ちが悪いという感じは全然せえへん。いったい何の骨なのか,謎や。一遍見に来てないか」。

それを聞いて,興味津々。頭部がないということなので,わたしにはわからないだろうと思いましたが,一応見ておこうと思いました。

翌日,シュウさんに案内してもらって現場へ。

 


その骨は,確かにシュウさんの説明どおりの色とかたちをしていました。しかし,頭部分が欠けているので,わたしにはまったくわかりません。ふしぎな格好で,ぶら下がったようになっているのも不可解です。

それ以上は到底解き明かすことはできないので,そのまま同定作業は終えることに。

そこまではいいのですが,わたしが目を近づけて観察しているとき,シュウさんが「わぁー! 大きなムカデ!」と大声を張り上げたことも付記しておきましょう。それに続いたのが「目の前に,大きなムカデが出てきた! 危ない!」という,叫びでした。もちろん,わたしは「何事?」と思って一瞬びっくり。

わたしのちょうど目の前辺り,白骨の脇を,でっかいムカデがのそりのそりと歩いてくるところでした。


こんな大きなムカデは初めて見るなあと感じ入るほどのサイズでした。自然界で,餌をたっぷり口にして,悠々と育ってきているのでしょう。もちろん,そのまま姿を消すままにしておきました。こんなわけですから,自然とのいろんな出合いは途切れそうもありません。

 


アゲハの蛹とアゲハヒメバチ

2015-07-07 | アゲハ(ナミアゲハ)

壁に立てかけておいた竹に,アゲハの蛹が付いていました。

羽化をたのしみにして室内に持ち込み,そのときを心待ちにしていました。ところが,ある日見ると,からだにぽっかり大きめの穴が!  直径5mm。中は空っぽ。びっくりしました。寄生バチの被害に遭ったにちがいないことは想像できたのですが,ではいったいどんなハチなのか,さっぱりわかりません。


それで,とりあえず室内のあちこちを見ていきました。すると,偶然,ガラス戸に付いているハチが目にとまりました。「ははーん,このハチだな」と思い,写真に撮って調べることに。

 


結果わかったのは,アゲハヒメバチではないかということでした。説明には,アゲハに寄生するとの記述がありました。

このヒメバチが寄生していて,羽化後出てきたのかも。確実な証拠はありません。しかし,状況証拠としては“確実”に近いものが得られたように思います。事実とすれば,ずいぶん大きなハチが体内に産卵するものです。驚きです。

せっかくの機会なので,アゲハヒメバチのからだをくわしく撮影しておこうと思いました。以下,その中から,いくつかご紹介しておきます。

 

 
長い触角をしきりに動かしています。

 


「狩人だぞ!」っていうスゴミが伝わってきます。大した大顎です。 

 

 
頭部は意外に小さい感じ。その中で,複眼は十分に大きく見えます。単眼もチラッと見えています。胸部はいかにも運動器官の中枢といった雰囲気を醸し出しています。力強そうです。

 


印象にくっきり残る出合いでした。 

 


ヨッさんからの電話

2015-07-06 | 随想

近くの人には,わたしが昆虫生態写真を撮っていることが伝わっているので,結構協力者があります。道路脇で這うようにして撮影している姿が目撃されているようで,「あれはあんたしかないなあ。よほどおもしろいんやなあ」といわれたことがあります。それがお馴染みのスタイルになると,「どこそこに,〇〇がいる(ある)」なんて情報を届けてもらえるまでになります。お蔭さまで大助かりです。

つい先日の夜,ヨッから夜電話がかかって来ました。

「玄関のアロエに,アゲハの大きな蛹が付いとるんや。板塀には小さな蛹が付いとる。こんな大きなのを見たことがあらへん。植木鉢に植えたアロエやさかい,持って帰って写真に撮って,観察してないか」。そんな内容でした。

翌日の夕方,ヨッさん宅を訪ねました。玄関の植木鉢を見せてもらうと,確かに大きな蛹が付いていました。クロアゲハの蛹です。


玄関の庭にはキンカンが植わっていて,それが相当に大きくなっています。そこで育った幼虫が,ここまで歩いてきて蛹化したのです。なぜここを蛹化の場所に決めたのか,よくわかりません。偶然なのか,必然なのか,それもわかりません。

一方,小さな蛹は,ほんとうに小さく見えました。こちらはアゲハの蛹です。2つを比べると,確かに大きさには驚くほど違いがありました。

結局,ヨッさんの強い奨めもあって,植木鉢を預かって帰りました。これから変化を見ていこうと思います。

 

 


ジャガイモ栽培物語《タネイモ編》(18)

2015-07-05 | ジャガイモ

ジャガイモの果実がおもしろいほど生っています。“おもしろいほど”というのは,“愉快になるほどたくさん”とでもいえば,おわかりいただけるでしょうか。それが熟して,色が緑から薄緑,白・黄に変わりつつあります。匂いはほんの,ほんのわずか。

熟してきたものから自然落下しますから,この時期,株の下周辺に実が散らばっています。この景観は,一度見たら脳裏に焼き付くのでは?

その雰囲気をお伝えしたくって,写真を載せておきます。

同じ房から落ちた実がかたまって。

 

 
谷にあちこち。


この谷にも。


畝の上にも。すっかり熟し切った実は甘く,酸っぱく香ります。 

 


果実からいずれ採種することにしています。一部容器に入れて,テーブルに置いています。一つではほとんど匂いは感じられないのですが,これだけ集まるとほのかに香ります。ちょっぴり甘酸っぱく。

 

 


モンシロチョウの産卵

2015-07-04 | 昆虫

まったく偶然のこと。畑仕事の途中で,休憩中でした。モンシロチョウがしきりに道端を低空飛行して,一定の範囲から去ろうとしません。ときに,草に着地するようなしぐさをするのです。

「これはもしかすると産卵行動なのかも」。そう思って,目で追うことにしました。

しばらくすると,草にとまりました。「産卵かな」と思って近づくと,腹端を葉に接触させるところでした。やっぱり産卵です。産み付けた草はイヌガラシ。アブラナ科です。

チョウは舞い上がり,近くの別の草にとまりました。これもイヌガラシとすぐわかりました。そうして,同じように産卵のしぐさをしました。

チョウが向こうに行ってから,2カ所の卵を確認しました。まちがいなくモンシロチョウのそれでした。


キャベツやハクサイ,ブロッコリーのような野菜に産卵する例はわんさかとありますが,ごくふつうの草に産み付ける例はそう目にすることはありません。野菜がなければとうぜんこのように幼虫の食草を見分けて産卵するほかありません。

野の草は無数にあります。たくさんの草の中で食草を見分ける力って,考えてみれば不思議な力です。