ジャガイモの実に関してわたしの強い関心事の一つが,「果実を食べたら,どんな味がするのか」という点がありました。
ジャガイモにまつわる話として,毒成分アルカロイドにより下痢症状を起こすとか,実際に緑色をした目の部分を取り除かないで食べたために異常を来たしたとか,といったニュースを目にしたり耳にしたりすることがあります。
これを元にして考えると,果実を食べるのは危険極まりないといった感じがします。しかし,ジャガイモ研究のプロ浅間和夫さんがとてもおもしろいことを書いておられます。参考になるでしょうから,手記(抜粋引用)をご紹介しておきます。
実は絶対食べてはならない、とよく書かれていますが、ジャガイモの品種改良をしているとき、いたずら半分時どき食べていました。緑色が薄まり、少し黄色味を帯び、多少柔らかくなったものは食べても心配ありません。昔(太平洋戦争中)よく食べたと言う話を聞いたこともあります。特に美味というものではありませんが、品種・系統によってはイケルのもあります。果実の中には甘い香りがし、中にはポテトグリコアルカロイドが10mgと芋並に少ないのがあります。米田勉(1991、園芸学雑誌)もぶどう糖、果糖、有機酸(クエン酸、リンゴ酸)があり、果物に近いものがある、とのデータを示しております。、たくさん食べて下痢した話を聞いたことがあります。しかし、1シーズンに数回、1回に5、6個食べ続けてかなり長くなりますがその心配は全く無かった。この果実を道北のアイデアマンと私がお呼びしている佐久間さんは焼酎につけたところメロンの香りがしたと連絡してきたこともあったくらいです。私も時折、色が少し黄色味の透明感ある果実にあうと数個家に持って帰り、お皿に入れるなどして机の上に置きます。フルーティな、いい香りが楽しめます。
となると,うんと緑色が薄れているものなら,多少は口にしても大丈夫だという話になります。
そこで,食べてみることにしました。落下後数日経って,白っぽくなったものを味わうのです。
下痢をしないか,多少の心配はありましたが,なんでも体験だという気持ちで口にしたわけです。皮を剥いで中身を食べした。個数は2個。結果は以下のとおりです。
- おいしいという感じはまったくしない。灰汁(あく)が強く,喉を強く刺激する感じ。
- 食べた後,長く“えぐ味”が残り続ける。
したがってホッカイコガネに関する限り,実は,繰り返し食べるほどのものではないことがはっきりしました。果物の味覚とは程遠いと思われます。匂いはそうでもなかったのですが,味はちがっていました。
一方,毒成分云々に関しては,分析的に調べたわけではないのでなんともいえませんが,わたしのからだには異常はまったく認められませんでした。つまり下痢も嘔吐もなし。したがって「絶対に食べてはならない」といういい方には,わたしも疑問符を付けようと思います。味を調べる程度なら,食べても問題はなさそうですので。
試さないでとやかくいうだけでは,「食べてはならない」という先入観だけが残って,実際はどうなのかわからないままです。その点では,意味ある試食となりました。