へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

にじいろ

2014-12-31 21:55:48 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

冬休みに入り、剛おにいちゃん家族も帰ってきて、ずいぶん賑やかになった。リカがいないことで、剛おにいちゃんもがっくりきて、

「シャカイも寂しいだろう」

と、シャカイを抱きしめておーいおーい泣いていた。

大晦日の今日は、受験勉強を取りやめて大掃除を手伝い、久しぶりに現れた鎧兜のおじさんも、どういうわけか剛おにいちゃんの奥さんに見つかって、こき使われていた。

あんまし役にたっていなかったけどね。

朝ドラの花子とアンの大ファンだった鎧兜のおじさんは、

「教育を受けさせたい、という父親がいなければ、赤毛のアンも生まれなかったろう」

という。

「おじさんは、赤毛のアンを知っているんだ」

「読んだぞ。まあ、なんだな、ちょいとこそばゆい話ではあったがの」

「ふうん」

赤毛のアンは、はるみも好きだった。

ぼくは、テレビの紅白から流れてきた絢香のにじいろをきいて、はるみと過ごしたクリスマスのことを思いだして、ちょっぴりこそばゆくなった。

「なんだ、どうしたんだ?」

おじさんに顔を覗き込まれて、ぼくは思わず赤くなってしまった。

おじさんは、面白そうな表情で、ぼくをみていたが、

「そばをもらおうかの」

と、ふわふわとんでいってしまった。

ぼくは、もう一度問題集を開いて、来るべきセンターのためにすべてを振りきった。

今年もお世話になりました。

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藤川先生大泣き

2014-12-14 05:54:17 | へちま細太郎

藤川だよ、こねこちゃんたち。。。

木曜日の夜に、愛するリカが死んだ。
あんなにかわいがってやったのに、なんで細太郎に抱かれて死ぬんだ?
お医者さんごっこしたじゃねえか。
聴診器、胸に当てるとあんなに喜んだのは、どこのどいつだあ。

あんまり泣きすぎて、みっともねえ顔になっちまったから、
学校休んじまったぜ。
くそ。
リカ~。

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学校、休んでも、文句は受け付けない

2014-12-12 13:21:06 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

昨日の夜のことだ。
ホットカーペットに、毛布をかぶってごろごろして勉強していたら、リカがぼくの顔をなめた。
そして、顔にすりすりしてくる。
「なんだ、リカ、寒いのか?」
と、ぼくは、毛布をあげて、リカを隣に入れた。リカの体、あったかい。
「すっかり、ばあさんになったなあ」
ぼくのつぶやきに、リカは、かぶっと耳をかんだ。
「相変わらず、気が強いな」
ぼくは、リカのからだに腕をまわして、首の後ろをなでてやる。
「リカ、今日ご飯食べたか?」
「じいちゃんの靴下、臭いかいでないだろうな」
と、きけば、ぼくの手のひらに頭をのせてくるので、そのまま枕にしてやった。
リカは、ぐすっと鼻をならして大きく息をはいた。
小学校の時、野球をしていて球を拾いに行った時にみつけたんだっけ、リカは。
シャカイとミッフィーの姐さん気取り、おじいちゃんの足とオナラの臭さにこたつ嫌いになったな、そういえば。
ぼくといっしょに育ってきたんだけど、いつの間にか、ぼくの年を追い越して、今やこのうちの誰よりも年食っている。
ぼくが、リカを抱っこしてこのうちに来たと同じようなぬくもりで、今はぼくの隣で寝ている。

そうして、ぼくの隣が安心したのか、リカは二度と目を覚まさなかった。。。

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みかんは、焼くとうまいんだ

2014-12-09 16:01:56 | へちま細太郎

こんにちは、へちま細太郎です。

「みかんは、焼いて食うとうまい」
スクールバス待ちをする間、久しぶりに大学の温室に遊びに行った。
そしたら、院生の(仮)嵐軍団1号さんの冒頭のセリフ。
「農協の木村(旧姓依田)さんがみかん持ってきてくれてね、で、その代わりに、奥の温室で育てている“ふくれみかん”を大量にもぎとっていきやがった」
ふくれみかんっていうのは、福来って書くんだけど、そんなに知られた品種じゃない。限られた地域でしかみられないみかんなんだ。中島教授が、茨城までいって盗んで…いや、いくつか食べたみかんに入っていた種から大切に育てたものらしい。だから、ナイショのものなんだけど…。
どこからか嗅ぎつけた木村さん(旧姓依田)は、毎年ぶんどっていくんだとか。
「一応、ムコの立場としては、女房の家族に食べさせてあげないとさあ」
縁起ものだしね、といいつつ、さらにりんごだの、なしの新興・にっこりも盗んでいく。
毎年、果物がみのるころは、木村(旧姓依田)さんとのバトルになるらしい。
「藤川家のコメの品種の“田吾作”米の種もみを融通してあげてんのに、何だよなあ」
(仮)嵐軍団1号さんは、そういってドラム缶の横に空いた窓から中をひっかきまわして、
「もうすぐイモ焼けっから待ってろ」
と、入口付近に置いてあったみかんを取り出した。
「ほれ、くうか?みかん、ほどよく皮が焦げてっと」
ぼくは、焼いたみかんは嫌いじゃないので、ありがたくもらっておいた。
「え~、焼いたみかん、食べるの?」
はるみは、微妙な表情でみかんを受け取ったけど、
「おまえね、栄養に行くんだろ、だったら、オレンジソースってあるのくらいわかるだろう」
(仮)嵐軍団1号さんは、はるみに金ばさみでみかんを差し出した。
「勉強しろよ、少しは、おまえのことは、小学校でも有名だったろうが」
「え~?美都二小だったんですか?」
「いとこがおまえたちと同級生だったんだよ」
なんか、嫌な予感…。
「え~、誰だろ」
言うな、嵐1号さん。。。言わないでくれ、嫌な予感しかない。。。
「・・・きょうすけって知っている」
ちらっとはるみの目がこちらを見た。
「知らねえ」
ぼくは、みかんをむいて皮をドラム缶の中に放り込み、ほどよく甘く温かいみかんを口の中にほおり込んだ。
「ん?」
(仮)嵐軍団1号さんは、ぼくを見上げた。
今頃になって、何だよ、くそ。。。




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そんな無茶振り

2014-12-04 22:43:10 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

担任の久保田が、
「ごめん、数検、来月もあったわ」
と、申込書を持ってきた。
「17日?センターじゃん」
たかのりが、呆れて担任の顔に申込用紙をぺたっとはりつけた。
「終わってから、学校戻ってこいよ。夜の部ってことで、許可もらうわ」
なんて、ことを!!
「冗談だよ」
あ~びっくりした。
「おかしいと思ったんだよね」
と、しんいち。
「次の試験のために勉強してきたのに」
「わりわりって…4,500円な」
「たけえ~」
しんいちは、これが受かれば、1級を目指すらしい。
「おめえ、中村ユウヘイじゃなくて、福谷目指したら」
たかのりは、月間ドラゴンズをしんいちに差し出した。
何でこんなのもってんだ?と思ったら、阿部さんに押し付けられたんだと。
「しんいちに見せろってさ」
「興味ない」
しんいちは、手で押しのけると、
「いったろ、大学では一応野球はやるけど、本音は箱根駅伝だって」
と、再び問題集を解き始めた。
久保田は、しんいちから4,500円を受け取ると、
「たかひろもまってっからな」
と、申込用紙をおいていってしまった。
う~む、たかひろは、腕組みをして考えてる。
「この日、ねずみ~らんど行くって約束してたんだよなあ」
「なんだとお~」
俺とたかのりは、たかひろの首ねっこを捕まえて、
「許さん!!」
と、振り回した。
ああ、もう、何であんとき、受からなかったんだよ~!!
「ナメてかかってからだよ」
しんいちの冷たい言い方に、センターに対する自信もなくしてしまった。
くそっ。

 

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ざまあみさらせ、おまえがひったくったものの中身は…

2014-12-03 16:53:45 | へちま細太郎

こんばんは、すごいひさしぶりなおばあちゃんですよ。
元、婦警。。。
孫がいつもお世話になってます。
できそこないの息子と、居候のできそこないのバカ殿と、足の臭い夫と住んでいます。
まだまだ、若いわよ~。

細太郎が学校で拾ってきた柴犬のリカは、いつの間にか、私の年を越してしまった。
すっかり寝たきりになってしまったけど、たまには外に連れ出してやらんとかわいそうので、シャカイとうさぎのミッフィーを連れて散歩に出かける。
リカを歩かせるわけにはいかないので、リサイクルショップでベビーカーを買ってきて、リカを乗せている。バカ殿がベビーカ―を改造して、イヌ用にしてくれたんだけど、昔使ってた乳母車でもいいような気がするね。
で、今日ものんびりと近くの川の堤防までリカとミッフィーをのせ、シャカイを歩かせぶらぶらとお散歩。気持ちがいいんだ、これが。お昼時にお弁当を持っていけば、ちょっとしたピクニックだわね。
川を眺め、シャカイとミッフィーと一緒にご飯を食べ、ゴミとシャカイの落し物と、リカの使用済みおむつをコンビニの袋に入れて、さらにくくりつけた壊れたブランドのバックにしまうと、今度は家に向かってぶらぶら。
ミッフィーが歩くっていうので(なんとなくね)、今度はベビーカ―に入れず、シャカイとともにわきを歩かせて、なるべく路地を通って歩いていたら、前からすさまじい勢いで原チャがつっこんできた。
「危ない!!」
と誰かが叫んだ気がするけど、こっちはよけるのに無我夢中。ところが、原チャは2ケツよ、2ケツ。
ああ、2人乗りね。
でもって、うしろのやつが飛び降りて、ベビーカーに結び付けていたボロクソブランドバックをナイフで切り取って持っていってしまったではないか。
「あらあ~」
一瞬の出来事に、私としたことがなすすべもなかったけど、まだまだ若い私は、ナンバーをスマホでさっと撮影。すぐさま、かつての後輩たちに送信してやったわよ。
「大丈夫ですか?」
と、近所の人が心配そうに駆け寄ってくれたけど、
「大丈夫、ケガもないし、リカも無事、ミッフィーは…あ~」
ミッフィーとシャカイは、ふたのない側溝に転がり落ちて、もふもふしていた。
呆れているだけで、慌てた様子のない私に、みんな怪訝そうな表情をしている。
「ああ、大丈夫ですよ、あのバカどもが盗っていったものは、この子たちの落し物だから」
と、声を立てて大笑いしてあげましたわよん。
今頃は、中みをみて、さぞかしブチ切れているころだろうねええ。
年寄りから、ひったくりなんかするから悪いんだ。

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12月だ

2014-12-01 08:15:34 | へちま細太郎

おはようございます、へちま細太郎です
スクールバスですが、高速を降りてからちょっと渋滞してます。たぶん、雨のせいだ。

2年生の後半くらいからはるみがおとなしくなり、スクールバスの中でのキチローとのバトルがなくなり、平穏そのまま。からめなくなったキチローは、何とかはるみと口をききたくてあの手のこのテで声をかけてくるんだけど、はるみは断然ムシ。
以前のはるみだったら、キャンキャンうるさかったんだろうけどね。
はるみは、うちの大学の管理栄養をとれるコースに、学内推薦を決めている。余裕のある選択だなあと思っていたら、宿題がたくさん出て地獄なんだと。
「なんかねえ、レシピ考えて調理しなくちゃいけないみたい」
と、何やらかばんからさつまいもを取り出して、にらめっこしていた。
「何でそんなもんもってんの」
ぼくたちは、通路隔てた隣に座ってひそひそ声で喋っていたけど、それがキチローのカンに障っているらしく、たまに怨嗟の含んだ視線が突き刺さってきている。
でも、そんなのムシだムシ。
「中島教授がくれたのよ~、どうせなら焼き芋くれたっていいのに」
焼き芋かあ、昔はみんなで作ったっけなあ。
たまには、教授のところにいって、焚火してやきいも食べるのも悪くないな。。。
ふと気付けば、今日は12月1日だったな。
早いなあ。

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