こんばんは、へちま細太郎です。
孝太郎先輩のうちの別荘に居座っていたら、突然寒くなった。
どうなってんだよ~、と夏物しか持ち合わせていない俺たちは、たんすから趣味の悪い浴衣を引っ張りだして何枚も着込んだ。
「一応、(仮)山下軍団の連中が忘れていったやつだから、遠慮なく着ちゃってくれ」
と、電話で許可をもらったものの、
「どうみたって、襦袢じゃね?これ」
と赤いぺらぺらの着物の下着みたいなものをたかのりは床に広げて腕組みしている。
たかのりの家は、お茶とお花の師匠をしている。だから、着物には詳しい。
「誰もみてないんだからいいか」
と、赤の襦袢を着こんで、頭を紐で酔っ払いみたいにまいている。
「あ、こりゃ」
と、必殺シリーズで中村主水がこんななりをしていたな、とまねをしている。
田舎の別荘だし、することないから勉強しているけど、あとはコツコツと草むしりをしたり、掃除をしたりしている。
「孝太郎先輩も、大学院にいっているっていうけど、ろくな研究していなさそうだ」
と、漫画だらけの本棚を見た俺たちの感想なんだけど、(仮)山下軍団さんの一人が様子を見に来てくれていうには、
「おまえら何言ってんの?あいつ、研究室で遺伝子工学の研究やってんだよ、修士論文も全部英文だし、右に出るやついないんだから」
と、おれたちの認識不足に呆れていた。
「ひええ、そんな優秀だったんですかあ?」
「藤川家の縁につながるやつの中では、一番優秀なんじゃないの?」
だろうな、と藤川先生や副住職さんの顔を思いうかべながら、妙に納得した。
しかし、夏はどこへいった?