昼飯食ったら眠くなる、藤川~。。。
昨日は、途中で生徒が来ちまった。。。
ということはオレは何か、仕事中にこいうのを書いているイケナイやつだと?
まあ、最近、なかなか逝けないんだが…
ま、おいといて。。。
でな、昨日、オレと副住職のおっさんと、住職のじじいと一緒に、別邸…といっても、本来のオレの自宅なんだけどさ、そこに張り込んでキチローが侵入してくるのを待ったわけだ。
待ち合わせ、と本人は思っているみたいな時間よりも1時間はやくあのバカはやってきて、開放した門から堂々と入り込みやがった。
そこで様子をうかがっていると、ぐるりと表に回って庭をみるかと思いきや、ここも普段はあけてある玄関の中に入り込もうとした。
「何考えてんだ、あいつは」
オレがつぶやいたと同時に、そりゃ半ば文化財…ではないんだけどな、に近い建物が、不法侵入を許すはずがないので、防犯ベルが鳴り響いた。
「ひっ」
キチローは慌てて玄関から飛び出したんだが、そこは昔ながらの玄関だから敷居につっかかって玄関前に顔面からつっ転んでしまった。
住職がここで、
「南無」
と、数珠をすり合わせる。
キチローは立ちあがろうとしたが、唇についた砂利を払ってから起き上がろうとした瞬間、警備員が駆け付けてきて、キチローの肩を押さえつけた。
「侵入者確保」
キチローは無理やり起き上がり、
「何をいっているんだ、僕は藤川家の知り合いだ」
と、ふんとドヤ顔で警備員の腕を振り払った。が、
「我々はあなたの訪問の連絡を受けていません。ここは、事前に若殿の許可がないと入れませんし、ここは若殿のご自宅ですから」
と、逆に許可書出せ、とつっこまれている。
「え?」
キチローはうろたえる。
「おまえ、許可書、出してんの?」
ゾクのおっさんはニタニタ笑い、住職の爺は、
「罰あたりめ」
と、オレの頭をポカリとやった。
まあ、当然警備員もグルだし、こいつらの顔をよくみりゃ、(仮)有岡軍団だってわかるだろう。春休みのバイトだ、ボケが。。。
(仮)有岡軍団は、キチローが来るとしって、どうしてもお灸を据えたい衝動にかられたそうだ。
「いじめはよくないぞ」
と一応たしなめたんだが、
「お灸をすえないとだめですよ、あいつ、はるみがバスの中でぎゃんぎゃん騒ぐ原因は全部あいつなんですよ、それに、どうやってかえたアドレスの番号調べてくるのかも不明だし」
と、結構正義感発揮して、作戦に乗ってくれた。
「著名人の知り合いを自称するやつ多いですからね、あいつも見栄っ張りだから、いいクスリになりますよ」
そうかねえ~、イマイチ不安なんだが。。。
おっす、オレ、藤川~♪
キチローのバカメールを3学年にチクリ、お灸をすえてもらった。
で、どうも細太郎が住職と副住職にこのメールを見せたとかで、元ゾクの副住職のおっさんのドSな性格にヒットしたらしく、
「本当に来たら、こちらもこちらでお灸をすえる」
と、キチローの家に連絡をとったんだと。
キチローの家でも、あの厨二病な性格を持て余していたらしく、
「アタマにおあずけします」
と、放り投げてきたらしい。
須庭寺の檀家だったせいで、ことがうまく運んだせいなのか?と思いきや、キチローの母親は、副住職のゾク仲間のレディースだったんだとさ。
キチローはこのことを知らない。
オレも、意外だんだが…。
で、案の定、こってりと監督にしぼられたはずのキチローは、はるみに、
「ボクたちの愛は、どんなに邪魔が入ろうとも、絆が深い。
がんばろう、ボクと気味。
10時に舞っているよ」
と、お花畑全開なメールを送りつけてきた。
頭の中に蝶々が舞っているんだろうな、コイツ。
それで、10時に別宅の門を開け、めったに公開しない庭に誘い込むようにしたんだが、あいつ、呼び出したはるみをどうやって中に入れるつもりだったんだ?
もしかし、裏の畑の垣根の向こうの塀の破れから入り込むつもりだったのか?
約束の時間の1時間も前に、全開の門の前にあらわれたキチローは、ひょいと中をのぞくと遠慮なく中に入り込んできた。
不法侵入か、この野郎…
お~、なんだ?さっき、呼び出した生徒がきた、すまんな、これでいったん中断な。。。
すまそ~
うちのバカだんながこういった。
「よく考えたら、拾った魚に粘着されて、嵐を巻き起こし地球の存亡まで引き起こすくらいのものすごいつきまとわれしたのに、お子チャマ5歳児はたんに“海で拾った金魚”に二度と逃げられたくないから、うんってOKしたんだよな」
録画したDVDを、なんだかヲタっぽい高校生とみていたんだよね。
「いや、純愛ですよ」
ヲタはこう返事する。
「だってよ、おめえ、さっきまで魚だろ、魚脳だろ?おめえの頭も魚脳なんだな、ロマンって言っちゃうくらいだから」
「魚じゃありませんよ、あれは偉大なる海の女王から誕生したんだから、いわば妖精みたいなもんでしょ」
「金魚だろうが」
「いや、妖精ですよ」
ヲタは譲らない。
で、バカだんなの姉がきていて、その姉がぽつんとつぶやいた。
「おい、ヲタ、30過ぎてチェリーだと、妖精になれるらしいぞ」
「ぼくは、まだ18歳だから、妖精の卵ってことですね」
姉はぽか~ん。
私は、脳みそがウニだわ。
須庭寺の家付き娘のことみでした。
こんばんは、へちま細太郎です。
バレンタインデーの前日の今日は、登校日だった。
ぜって~、わざろだろ。
といいつつ、スクールバス待ちしていたら、めっちゃきれいになった孟宗の先輩が、
「これから会社なの~。義理チョコ買わなかったから、細太郎君のチョコに命かけちゃった」
と、ぐっとくる笑顔で紙袋を手渡してきた。
「あ、どうも」
と、クラクラした気持ちで先輩を見つつ、はるみを見れば、余裕かました表情でたかのりとしゃべっている。
おととしくらいまでは、きいきいうるさかったんだだけどな。
拍子抜けした。。。
わがままなはるみもよかったってか?
よくねえよ。
そこへ、キチローが登場。
はるみに話しかけたそうにしていたが、
「てめえ、何回いったら変なメール送るのやめるんだ?」
と、たかのりにすごまれてこそこそとバスに飛び乗ってしまった。
続いてぼくらもバスにのれば、みきおとたかひろににらまれてキチローは一番うしろのシートのはしっこに隠れて座ってしまった。
隣に、2年のラグビー部員が座り、
「先輩、一番後ろはもう俺らの席っすよ、代替わりしたんです。どいてくださいよ」
と、どかされていた。
あ~あ、6年間、ちっとも成長しないまんまでやんの。
で、学校着いたら着いたで、学年主任の金本に呼び出されて、説教。
罪一等を減じて保護者召喚はなかったんだけど、これにはわけがあったらしい。
どういうことだろ?
こんばんは、だよ、ピカイチだよ。
毎年毎年、自分が情けない。
何で、今年は1個もチョコがないんだよ~!!
と、叫んだら、桜井にまた食いかけのチョコを放り投げられた。
「またかよ、あんたね、毎年毎年、まともなチョコくれねえのかよ」
「お試しでまずかったんだ」
と、また、ぽんぽんしょうもないチョコを投げてきた。
「見た目珍しいからって、どうしてそう節操なくチョコを買ってくるわけ?」
と、投げつけられたチョコを拾って、ポケットにしまいこんだ。
「朝さ、美都駅で大量にチョコもらってたよ、あんたの息子」
と、桜井はうまそうなチョコをかじって満足そうに笑った。
「やっぱり、チョコはヨーロッパものに限るな」
「コレ違うのかよ」
俺は、ポケットからチョコを取り出すと、
「ハワイ土産じゃん」
と、内心儲かった、と桜井の机の上のチョコを箱ごとひったくった。
「駅ビルで売ってたんだ、アメリカものは口にあわない」
あ、そ~かよ。。。
って、ちょっと待て、さっきなんていった?
「細太郎が、紙袋つきでチョコもらってた。OL風のお姉さんもいたから、小学校の時からずっとくれてる子かもよ」
紙袋つきって、毎年、誰かが気を利かせて、大きな紙袋を持参してくれるんだ。
なんでだ~!!どうしてだ~!!
「おめえがもてないだけだろ」
男子バスケット部の顧問の関本が、桜井のチョコを盗み食いする。
こいつは、少し前にぎっくり腰をやって以来、女バス顧問の鳥谷にまかせっきりで、部活にご無沙汰だ。
「ま、なんだな、オヤジに似てなくってよかったってことで」
関本は、俺が手にしていた出張手当の袋を取り、
「ちっ、高教研の出張だけじゃ、割りにあわねえな」
と、はんこを俺の額に押し付けて、
「どうもな」
と、もらうもんもらっていっちまいやがった。
まったく、中学校は中学校で国生さゆりで騒ぎまくって、こっちはこっちでチョコのためし食いかよ。
なんで、こうも教師っていうのは、中学と高校で違いが出るんだ?
なんて、いっている場合じゃねや、細太郎、おまえ、どんだけチョコもらったんだよ~!
こんばんは、へちま細太郎です。
キチローのメールでイライラしまくっていたので、このストレス解消には、
須庭寺にいって、副住職さんをからかうのが一番だ。
で、件のメールを見せたら、
「なんだこれ、この『都会には誘惑がいっぱいあって、ボクもボクを保っていられるかどうかわからないけど、都会の素敵な女性がたくさんボクに言い寄ってきても、ボクは君を忘れたりしないよ』って、よほど自分に自信があるのか?コイツ」
と大爆笑。
隣にいた住職様も、
「ほお、コイツはロミオメールとかいうやつに近いものだな」
と、なぞのことを言う。
「ロミオメールって、何それ」
ぼくは、初めてきく単語に理解不能。
「別れた彼女や妻に送信される、未練ありげな内容のメールを言うんだな。逆はジュリメール」
「何、それ」
ぼくは、そんな情けないメールを男が送るものなのか、にわかには信じられなかった。
「最近、ヒマなものでまとめサイトにハマっておってな、特にロミオメールというやつが、これまた傑作で。誤字脱字はあたりまえ、意味不明な造作用語と、頭の中が沸いてるような内容ばかりだぞ」
と、スマホを取り出し、
「見るか?」
と、サイトを開きだしたから、
「みないよ、そんなもの」
と、拒否。
「なんだ、面白いのに、つまらんの」
住職様は、ぶつくさつぶやきながらスマホを袈裟の中にしまう。
「このくそじじはな、座禅会でもスマホを鳴らして顰蹙をかってんだ。若くはねえんだから、少しは自重しろっての」
副住職さまは、じろりと住職様をにらんだが、
「『その実は、ボクのえ~む(Mだって)な気持ちをえぐり続けてきたんだヨ』って、コイツ、気持ち悪いな・・・って、元ヤンの血がうずきだしたぜ」
と、突然にやりと不適な笑みを浮かべた。
「やっちゃうか?」
住職様は、副住職さんの肩をたたいて副住職さん以上に恐ろしい笑みを浮かべた。
「さまよえる子羊は、当寺で救って差し上げんとな」
あの~、ここってお寺ですよね~、さまよえる子羊って、それって宗旨が違くね?
「御仏の前では、すべての大衆はみな平等である」
意味わかんないんですけど・・・。
キチロー、おめ、自業自得な運命がまってっと~。
ざまあみろ。
藤川だ。
へろ~子猫ちゃんたちって、書こうとしたら、キチローのメールを思い出して、
やめた。
細太郎から、はるみのメールを見せられて、
「なんじゃ、こりゃ」
と、思わず声を上げた。
「これってさ、解読不能ってわけじゃないけど、ようするにアレだ。進学後に二人は遠距離恋愛になっちゃうけど、でも、その前に二人で愛を確かめあおうってヤツ?」
「だと思うよ」
細太郎は、ミッフィーをもふもふさせながら、不機嫌な声で答える。
俺は気付かないふりで、
「で、“気味”は“君”の間違いだってわかるけど、“藤乾け”ってのは、アレか?俺んちか?」
と、俺んちの別宅の近所に住むキチローが、勝手に俺んちをデート場所に指名したってわけか。
「これ、3学年に報告して、お灸すえる案件だよな」
「気味を食べちゃうかもよって、卵でも食ってろだ、○チガイめ」
はるみとどうやらくっついたらしい細太郎は、勉強もそっちのけで俺にこのメールを見せてきた。
〆ても〆てもしつこいキチローに、細太郎も静かに怒っているらしい。
こいつは、小学生のころから腹が立つと何をやらかすかわからんガキだったが、本当に怒りがわくと、顔つきが険しくなるって、最近ようやく気がついた。
今までは、コイツ本気で怒ったりしたことなかったんだな。
てことは、それだけはるみに惚れたってことなのか?
理解不能なガキだ。
しかし、何考えてんだ、あのストーカーは。
将来が、心配なヤツだ。。。
でもな、キチロー、おまえ、まだどこの大学も合格してないだろう。
都会に出て女の子にモテるとか、何妄想してんだ?
勉強しろや~
みなさん、初めまして、私、はるみです。
細太郎くんたちとは、小学校からずっと一緒です。
孟宗に入学して、細太郎くんのまたいとこの滝沢先輩と知り合って、イタい私がかわりました。あの時もこの時も、思い出すたび顔から火が出る。
そのイタい私に、なぜかストーカーしてくるバカがいる。イヤだっていうのに、しつこい。
細太郎くんは争いごとを好まないから、あんまりアテにならないんだけど、いつもみんなに助けて貰ってたんだな、としみじみ思う。
でも、メールだけはどんな対処しても無理。学校のメールアドレスに送られてくるのは、とめられない。たかのり君に〆てもらっても、全然効き目なし。
ほんと、腹の立つ。。。
で、今日、学校のメールアドレスあてに、意味不明なメールが届いたわけ。
解読不能で、湯気出そう~
まい、すぃ~つ はに~
ボクとはに~が出会ってから、もう6年たつね。
長いようで、短かったなあ。しみじみ。。。
この6年間、ボクたちは、イロイロ愛を語り合って、
育んできたけど、そんな日々も終わりに近づいてきました
あ、終わりだなんて、ボクはちっとも思っていないヨ。
ボクは春から、都会へ出てしまうけど、
この離れ離れの日々は、新たなる愛の日々を迎える準備になることでせう。
気味は、栄養士になってボクが働く毎日を支えてくれるんだネ。
都会には誘惑がいっぱいあって、ボクもボクを保っていられるかどうかわからないけど、
都会の素敵な女性がたくさんボクに言い寄ってきても、
ボクは君を忘れたりしないよ。
気味の洗練されたジョークほど、ボクのマイハートをうずかせたことはないんだから。
そういえば、気味はボクに一見冷たい言葉でボクを避けているようにみせかけて、
その実は、ボクのえ~む(Mだって)な気持ちをえぐり続けてきたんだヨ。
残念ながら登校日は13日の金曜日は、演技が悪いので、
次の日、ボクが案内する藤乾けの庭園で、気味の手作りちょこれーとを
食べさせて欲しいな。
あ、でも、ボクが気味を食べちゃうかもだよ。
まってるね。
まい すぃ~つ はに~へ
君の吉朗より
バカなんじゃないの、コイツ
おはようございます、へちま細太郎です。
自由登校になって、1週間。
受験勉強で頭がくらくらする毎日を過ごしている。
1週間の間に、ちょこちょこ受験日があって、剛兄ちゃんが、
「泊まりにこい」
といっているんだが、奥さんの怖い受験指導が思い出されて腰が引けている。
神奈川の大学を受ける時には、横浜の藤川家の別荘?に住む孝太郎先輩が、
「なら、うちに泊まれ」
と言ってくれて、こっちには遠慮なく泊まりに行った。
そしたら、試験が終わるなり、
「中華食いに行くべ」
と誘われて、チョ~有名な○○楼とかいうところに連れていかれ、目ん玉が飛び出そうな値段の中華をごちそうになった。
「気にすんな。俺もさ、一応、藤川家の一翼でじいさんに言われて株を持たされて運用してんのよ。で、ちょっと儲かったから、使っちまおうかと思って」
あ~、そうですか
「細太郎、どうせ、浪人だろ?農作業やるんだよな。水嶋と小栗が楽しみにしてるらしいぞ」
「どうせ、浪人って、なんですか、それ」
「あれ?違うの?センターで大失敗して、国立足痛くなりそうな確実予報が駆け巡ってっと」
「駆け巡る…」
そうだよな、オレ、ガラケーだから、ラインなんてできないんだ。みんなどんな内容でくっちゃべってんだよ。
「たかのりにもいっとけ、今年は、田植えが待っているとな」
ぎええええ。
受験勉強、励もうっと。。。
とほほ。