→タコ壺保健室
JR西日本は、JR東日本と違って、そりゃ、乗り心地はバツグンなんだ。
快適だよね。
よい香りもして…。
気持ちがわかるだけに、運転室に簡易トイレとかおいておけばいいのに、と思った。
こんにちは、へちま細太郎です。
お盆休みのなかった剛おにいちゃんが、帰ってきました。
「世の中には事件事故が多すぎるよなあ」
と、シャワーのあとのビールでホッと一息つけると、ごろんと横になりました。
「ああ、疲れた疲れた」
リカがそばによって行って、くっついてねっころがると、
「うわっ、こいつ暑苦しい」
と慌てて飛びおきました。
リカは片目をあけてじろりと剛お兄ちゃんを見て、にやりと笑ったように見えました。
「全く、なんだって母親によく似た犬なんだっ」
「母親って私のことかい」
おばあちゃんが、どっんと枝豆をテーブルに叩きつけると、
「あ、いや、別に…」
と、言い訳し、
「この枝豆うまいなあ、さすが手作り」
と、ごまかしました。
「うるさい、わざわざ買ってきてやったんだよ」
警察官といっても、やっぱりおとうさんの弟だなあ。
と、ぐうたらしている剛おにいちゃんの携帯にメールが入りました。
「『帰ってきているのはわかっている。頼みたいことがあるから、さっさとタコ壺保健室に来い』…?なんだこりゃ」
匿名希望の東山先生、いったいおにいちゃんに何の用?
私が、孟宗学園にその人ありと知られた中島教授だ。
今日も、私の愛する蘭…パフィオ・ペディルム・ペンダントグッズは、元気だぞ。
ますますもって美しくあでやかになっていくんだな、これが。
(作者注・こんな花、ありませんからね)
夏休みは、学園のカウンセリング研究所と隣接のタコ壺保健室に主どもがいないのをいいことに居座ってやった。
心配ではないか、パフィオ・ペディルム・ペンダントグッズに水もあげなくてはいかんし、話しかけてあげなくてはいかん。
繊細なんだ、彼女は。
彼女は、な、バカで元気なやつらの“気”を吸収すればするほど、あでやかになっていくんだ。特に、高校のサッカー部のバカどもが大のお気に入りでな、あいつらがくると身をふるわせて喜ぶんだ。
さては、(仮)亀梨&山下軍団のだれぞに恋をしているのか、とも思える。
察するに(仮)亀梨1号の悠樹のような気がするんだが…。
私がここまで育てたパフィオ・ペディルム・ペンダントグッズは、もはや私の命、妻といってもいいほどだ。
そういえば、しばらく家に帰っておらんな。女房の顔も忘れてしまった。どうせ、あっちも同じことだろう。
さてさて、この保健室のベッドは合宿所や寮と違って寝心地がいいんだ。あの片山のロクデナシばかりに占領されてなるものか。
おっと、匿名希望の東山が帰ってこないうちに、ジャイアンツグッズをしまっておかなくてはいけない。
私の宝物だ。
パフィオ・ペディルム・ペンダントグッズも大のお気に入りだ。
匿名希望の東山がまくしたてる関西弁やら六甲おろしは、このうるわしい花にとっては害以外の何物でもない。特に、桜井がこの保健室にサボりに来るたびに歌うチャンステーマは、腹が立つ。さらに、ピッチャー交代に歌う、あの日本昔ばなしの替え歌はなんとかならんか。
今年は優勝に決まっているからな。
ほえづらかくな、タイガースファンめ。