こんにちは、へちま細太郎です。
ぼくの入学した学部は、応用生産科学部(そんな学部はありまっしぇええん)という。農業か園芸に係ることなら、なんでもいいやの気分で学部を選んでしまった。
きっかけは、タコ壺の不気味な蘭の小百合なんだが、一度、氷を入れたリポビタンDを飲みほした後、そのままにしておいたマグカップの中に、朝顔の種が落ちてしまい、なぜが目が出る、という珍現象を引き起こしたことがあった。真冬だったんだけどね。
こりゃあ面白いっていうのが始まりだった。タコ壺の小百合以上に、バイオ科学で蘭型人間を作り、食用蘭のごとく、人類を襲ったらどうしよう、とか真面目な顔で話をしたら、学部の仲間に爆笑された。
「細太郎さん、けっこうおもしろいっす」
と、大学でもみんな細太郎呼ばわりだ。
「普通、そんな発想しません」
白崎という北海道出身の埼玉育ちが笑えば、
「いいじゃないっすか、これ、面白いからフィギア作らないか?」
と、悪そうな雰囲気を持ちつつ、実は相当オタクな発言をする荒波が茶髪にし過ぎて傷んだ髪をかきあげた。
う、おめえ、美容室いって、ヘアパックしてもらえ、と内心思いながらも口には出さない。
いかつい後藤は、
「その小百合っていう蘭みたいねえ。リポDで巨大化するなんて、どんな生体なんだか知りたい」
と小百合を今にも解剖したいような意気込みでつっこんできた。
「ゴメス、おめえ、小百合を分解する気か?」
「あ、いや、中島教授の宝物をそんな危ないメに合わせられません」
慌てて否定するも、アヤシイ。
ついでいっちゃうが、中島教授は、週に一度、つくばった大学で講義をしている。
天下に名高い中島教授は、その道での有名な博士らしい。
マジかよ。
一浪・現役関係なく、楽しく大学生活送っているけど、中島教授が俺を見つけるなり、遠くから、
「細太郎、このクソガキ~」
と叫ぶので、大学でもこの呼び名が広まってしまったというわけなんだな。
あ~、もう、たまには本名で呼ばれたいけど、肝心のはるみもいまだに細太郎くん、なんだよなあ。
まじ、辛いんだけど。。。