残暑見舞いです、ぼく細太郎です。
さて、だらだら暑い酷暑も、今日は少し涼しい。
隣の部屋のたかのりは、
「実習、どーすんだよ」
と、頭を抱える医学部生だが、毎日大学に通っている。
たかひろ、みきお、しんいちの3人は、自宅から通学しているが、
「空き部屋ができたら、入居しろよ」
というアパートの持主である孝太郎先輩の有無を言わせない言動に、
「はいはいわかりましたよ~」
とコロナを理由に、入居してこない。入居したのはたかひろだけだ。
「女連れ込むな」
という孝太郎先輩の注意にも、いっさい耳をかさない。が、入居しろといった手前、追い出すわけにもいかないから、たかひろはヤリたい放題だ。
YouTubeのストリートピアノで、「地球最後の告白を」という曲を初めて聴いた。
「おめえ、知らねえの?」
「知らん」
大学院生のはるみの作りおきのメシを遠慮なく食いながら、
「あれだよ、臆病で好きな子に告白できない少年に、神サマが不老不死を与える、で、かなりたってから地球が戦争か災害で滅んでしまう。誰も人類が生き残っていない状態で、少年は初めて好きな子に告白するという内容」
と、たかひろはYouTubeから流れる曲に合わせて、内容を話してくれた。
「臆病ったって、誰しもさ初めて好きになった子には告白できないってことあるよね。神様はどういう意図で不老不死にしたんだ?」
「そこはあれだ、誰もきいているやついないから、告白できるだろうっての」
「酷じゃね?」
たかひろは、なすの煮びたしをほおばる。
「うめえな、これ」
「そうなりたくなきゃ、勇気を出せってことだろ。『幸せな灰』になった彼女に告っても始まらん」
「永遠の命って、みんながこの世を去っていってしまうのに、一人だけ取り残されていく悲しみってあるよね。いいんだか、悪いんだか」
「それ、俺たちには、説得力ないよ」
俺は、そう言って空中をただよう鎧兜のおじさんを指さした。おじさんは、大河ドラマの「麒麟がくる」にドはまりして、再びこの世にいついてしまった。
「なんか、申したかの」
という、間の抜けた答えにため息をついた俺たちだったとさ。
そういえば、りょうこちゃん、どうしているだろう、と好きだと言えなかった初恋の同級生のことを思い出した。
みんな、誰しもそういう甘酸っぱい記憶を持っていることと思うよね。
はるみ、ごめん。。。