副住職だ。
細太郎のくそ野郎のせいで、家を転々としている。
実家に帰ったら、甥の義孝のクソガキに毎日毎日やいのやいの言われて居場所がなくなった。
棒斐浄寺の姉のところにいたら、センイチとかいうイノシシに胡散臭そうな目でにらまれて、居づらくなった。
で、ゾク時代の仲間である布川のところに転がり込んだら、嫁に変な目でにらまれていられなくなった。何なんだ、あの女は。
そこでだ、藤川家の屋敷にいって、大おばあさまにところに、泊めてもらっている。
「たあくん、ことみちゃんと喧嘩したんですってよ」
と、ころころ笑ってやんごとない家からついてきたおつきの人の孫娘のおばさんと囲碁なんかやっている。
俺は囲碁だの将棋だの一つもわからん。藤川家のはみだしもんだからな。
このおばさんも、もともとはお公家さんらしく、おっとりで大おばあさまのお相手にぴったりだ。代々大おばあさまにお仕えするように、初代の人から言われているんだとさ。いい加減、やめたらどうだ、そんな時代錯誤と、心の中で思っていたら、
「わたくし、おひいさまがお好きですのよ」
と、いきなり言われてびっくりした。
このおばさん、エスパーか。
「まあ、ことみちゃんも、これを機会にあたらしいお方をお探しになられたらよろしいのでは?」
は?
何言ってんだ?
「俺に離婚しろって?」
「レッツ、ポジティブですわ。生涯一人しかお相手がいないというのは、それはつまらないものですわよ」
「ああ、そういやあんた、3回だっけ?」
離婚したのは、と言いかけたら、
「今度5回目」
と、訂正された。
よくそんなに相手が見つかるもんだな、とつくづく感心したが、
「それも悪くないかな」
と、つぶやいてしまった自分に自己嫌悪した。
う~ん、確かになんで、妻は一人じゃなきゃいけないんだ?と、思いかけて、いまさらながら藤川家のDNAに背筋がゾクゾクしちまったぜえ。。。
なあにが、レッツ、ポジティブだ、ばきやろ~!!