こんばんは、お久しぶりです、ぼくへちま細太郎
です。
25日はクリスマスでしたけど、みなさんはどう過ごされましたか? ぼくのうちではみんなで楽しくおいしいごはんを食べました
。残念ながら、けんちゃん先生と藤川先生はいませんでした。なぜなら、2人とも用事があったからです。
クリスマスイブの日、藤川先生はけんちゃん先生に、
「とにかく姉貴に惚れてるのなら、連れて逃げ出す覚悟を持ってくれ」
としつこく詰め寄っていました。
「ばかいえ、おりゃあふられたんだ」
けんちゃん先生はとりつくしまもありません。
「おめえ、まともに受け取ってんのか?」
「受け取るも何も、コトが終わった後に言われたんだぞ、やってられっかい」
『“コト”ってなあに?』
2人の様子をうかがっていたぼくたちでしたが、ぼくはけんちゃん先生の言葉の意味がわかんなかったのでおとうさんに小さな声で聞くと、
『まだわかんなくていい
』
と頭をぽかりとたたかれてしまいました。
『?』
わかんないことを聞いて何が悪い…と言い返したかったけど、2人の様子が気にかかります。
「おめえ、法律や前の亭主のことなんか気にしてる場合じゃねえぞ」
「そんなんじゃねえ、男としてプライドが許さねえだけだ」
『法律って?』
またまたわからないので小声で聞くと、
『女の人は離婚したら300日は結婚できないんだ』
『何で?』
『いろいろあってな』
『ふうん』
ぼくは、じいっと再び視線を2人に戻しました。
「うちの姉貴は一番上と違って、意地っ張りだしホントのことが言えないし、親の言うことを素直に聞いてしまうんだ。だから、今度くらいは好きな相手と結婚させてやりたいと、さんざん迷惑をかけてきた弟がこうして頭下げてんじゃねえか」
「…」
けんちゃん先生は黙ったままです。
と、そこへ今まで傍観者だったおとうさんが乱入したんです。
おとうさんはけんちゃん先生の襟をぐいっとつかむと
、「カッコ悪いとかプライドとか、そんなこと言っていたら、女は逃げてっちまうぞ、一生後悔しても知らねーからな」
と、ものすごい顔でけんちゃん先生に怒鳴っています。
お、おとうさんのそんな顔見るの、ぼく初めてだよ。
「いいか、相手に恋人がいようがなんだろうが、絶対手ばなしたくないと思ったら死んでもいい覚悟で行動しろよ」
みんな呆然。 けんちゃん先生はしばらく目をぱちくりさせていましたが、
「おまえが言うと誰より説得力ある」
と、やっと言葉を発しました。
「ほんと、誰よりも、だ」
おとうさんとけんちゃん先生はしばらくにらみあっていましたが、おたがい大きいため息をつくとその場をはなれました。
そして、けんちゃん先生は、その場で深く考えこんでしまいました。
ぼく、そんなことより、おとうさんがなんだかおとうさんじゃないみたいで、ちょっと複雑な気分になりました。