「何がめでたいって?」
タコ壺の主の第一声は、
「そらもう、讀賣の自力優勝がなくなったことや」
そこか~!!!
しかし、言わしてもらえば、
「首位首位」
と吾輩は、にんまりと笑ってやる。
「まだ、首位なだけや」
9回裏ツーアウトでも、勝ちをあきらめない阪神ファンだ。
これを悪あがきともいう。
だが、ここで藤川が一言。
「ロッテが首位、リーグ優勝目前」
確かに~!!!!
空気読めない球団は、リーグ優勝もせずに日本一をかっさらうこと数回。
ま、確かにめでたいことではある。
プロフェッサー片山であった。
吾輩である。誰だって?片山だよ、片山。カウンセリングの忘れちゃったか?
「結婚したああ」
「誰が」
「相葉ちゃんがああああ」
「桜井翔君もだああ」
タコ壺保健室から叫び声がしている。
匿名希望の東山先生と、桜井先生の二人は嵐のファンだった。桜井に関しては、V6が本命らしいが、それでもJunior時代からのファンだったんだとか。
どーでもいいがの。
「で、相手は誰なんだろうねえ。無事な結婚生活を送ることを願っているよ」
と、さっきとは打って変わっての辛辣なお祝いの言葉が述べられている。
「祝福の言葉はもっと別な人物にあげてもよかろう?」
「だれ」
嫌に冷たい言葉だの。
「ニューヨークから帰ってきた侍」
と言ってみれば、
「松井か?」
「いや、誰だ?」
「Kだろうが」
ニューヨークからの帰国のK?とは誰だ?と二人とも顔を見合わせて呟いている。
「あ、あいつだ」
「忘れとったわ」
「失礼な話じゃないか」
やっと思い出したか、罰当たりめ。ところが、
「髪のばしたら、現金書留で1,000円送らな」
「消費税忘れてるぞ」
「今、何やっているんだ?」
「オリックスいってから引退して~」
おいおい、K違いだ、「慶」ではなくて「圭」だろうが。
「ニューヨークいうたら、慶やで」
「詰将棋広めてきただけのニューヨーク生活だけどね」
おまえら~、といった瞬間、
「優勝できるとは思うなよ」
と二人一斉に因縁つけてきた。
結局そこか、そこか~!
「悪いが、いただきだ」
我がヤクルトスワローズの優勝だああああああ。
「阪神電車と国鉄特急の燕では、勝負にならんかなもし」
鉄ヲタのはしくれの桜井がボソッとつぶやいた。
「ふん、燕は新幹線だ」
こうして会話は、結婚から程遠い方向へと向かっていくのであった。
と、細太郎につっこまれている孝太郎です。
「坊主になってやってもいいんだぞ」
と、「レ〇ン堂」のふたをあける。
誰も何もつっこまないところに、須庭寺の本堂の例の小部屋で何をしているのかよくわかるな。
今日23日はお彼岸の大供養だ。家臣たちも集まって、と従来ならやるところだが、
「リモートじゃ」
と、今年はネット中継してやがった。
西村家の次期当主なんだが、藤川家の法事には関係ないべと思うが、母親が当主の妹では出ないわけにはいかない。でも、こうして小部屋で酒飲んでる。
「今年のクリスマス法事は、ないよなあ。でも、デートする相手もいないしなあ」
毎回毎回実孝のバカ野郎に彼女を寝取られて終わるんだ。結婚したら、もっとやばいのが、当主のおっさんだ。あいつはいい年して妙な色気があって、どうも若い女はいちころになってしまうんだとか。バカ殿の見合い相手はこれでいつもおっさんに持っていかれている。あいつは一生結婚できないに相違ない。
「今度は須庭寺乗っ取りを諮る気ですか?」
たかのりはつまみをほおばる。
「一応、資産状況も調べた。それがさ、百合絵さんが嫁いできてから実にしっかりと経理状態がいい。水嶋に計理士の資格を取らせて調べさせた。どんだけどんぶり勘定の杜撰なありさまだったかわかる」
細太郎は
「何やってんだ、この人」
とつぶやいたが、あとは口をつぐんでしまった。
「藤川家は女と食い物には目がないが、西村家はそうじゃない。維新のころには金を借りに来た薩長の連中もいたくらいだ」
「じゃじゃじゃ、今度西村家について教えてくださいよ」
たかひろとみきおも食いついてきた。
「語るほどのことはないんだよなあ」
俺は、警備員のバイト、いつまでやるかなあとぼんやり考えていた。
暇だから警備員している孝太郎だよ。。
なんで警備員しているって?俺の本業なんだって?
一応、不動産経営している。もってっから、草るほど。
文字通り、草るほどだ。腐る、じゃない。
藤川家出身の母ちゃんが、持っている資産を運用したら増えただけだ。そんで、西村家のくそじじいが手放した土地を少しづつ取り戻している。役にも立たない土地を購入させられたらしく、全く売れない土地もあった。
これ、オートキャンプ場にしたら流行っているのなんの、今車中泊ばやりだもんな。オートキャンプ場に向かう国道沿いに道の駅作ったらそこそこ繁盛している。もちろん、食材を売っている。でどころは藤川家だ。
藤川家のご隠居ではなく当主の伯父に相談したらこうなった。あの人、抜け目ないんだこういうこと。
女性だけかと思ったけどな、抜け目ないのは。
そのうち、車中泊も廃れてくるかもしれない。そしたら、どうすっかな。山の中だし閉鎖しちゃうのもありだけど、まだまだ人気のあるうちに売り飛ばすのもテだな。
んで、なんで警備員かって?ああ、今やっているの、暇っていうのもあるけど、一応汗水たらして働くっていうのも経験しておかねえと、いつ倒産すっかわかんねえし、その時のための予行練習。
働かないと、損だと思っているからな。
あ?守銭奴?なんとでも言ってくれ。俺は恥ずかしくもなんともないぞ。自分の人生どう生きようと俺の人生だ、他人にとやかく言われる筋合いはないぞ。
それこそ、誰にも迷惑かけていない。
先日の大学の柵の件だってそうだ。大学側に報告したんだが、めんどくさがって管理会社で管理してくれってそれだけだった。理学部の桑原ってやつが、たまたま夜中に残っていたところから話を聞いて協力してもらっていただけだ。釣れたけどな、ろくでもないのが。
あのオヤジども、釣りもしてたが女子大生の盗撮もしてやがった。もちろん、大学のOBでもなんでもない。近所の研究所に単身赴任してきた一流企業の社員だった。おとなしく釣りだけしてりゃ見逃したのに、教授のチョイノリを盗んだことから足がついたな。
バカ野郎だ。
でも、楽しいぞ、いろんなこと経験するのは。このご時世でいつ何がおこるかわからない。人生100年も生きられるどうかわからないのに、楽しまなくてどうする。
働いたら負けって、本来どういう意味か、考えるのも悪くないぞ。
でも、特定な人たちがいうのとは、違うと付け加えておく。
細太郎です。
池の中に取り残され、何だったんだ、とつぶやく宮﨑たち。
「何、細太郎の研究室仲間?俺たち、美都地区№1・2の豪農コンビよ」
「へいへいへい、№2の水嶋ったあ、俺のことだ」
相変わらずな人たちだ。
「これ、知り合い?」
宮﨑がタモで二人をさせば、
「超お金持ちな先輩がさっきの警備員の人、世が世ならばお殿様、で、この人たちが豪農コンビ。ねえ、先輩、弁護士になったんですか?」
と、改めて聞けば、
「うん、なった。てか、その予定。KKがなれるんならなるべ、と軽いノリで母校の大学に学士入学したら2浪して受かった去年」
「もともと頭いいもん俺たち」
なんて人たちだ。
「詐称してんのかと思ったぞ、てか、おまえらまだ司法修習生だろうが」
「詐称だね」
俺も頷く。
「名刺みてみなよ、一応司法書士は合格してる。だから司法書士と書いてある」
小栗先輩はちっちっと人差し指を振る。
「ちゃんと見ない教授が悪いですよ。」
これだよ、でも、さっき弁護士って言っちゃってない?
「弁護士予定、といってある。詐称したらそれこそ俺たちが御用になっちまう」
どこまでしょうもない人たちなんだ、こいつ。
しかし、中島教授は取り戻したチョイノリにのっかって満足そうだ。
「教授、チョイノリ乗るのは結構ですけど、ちゃんと警察いって盗難届出したんだからあとの手続きしてきてくださいよ。このままじゃ乗れませんよ」
「そーなのか?」
「そーですよ。何なら、代わりにしましょ~か?」
「安くしときますよ」
「その手にのるもんか、この司法書士めが」
教授と豪農コンビの陰湿な漫才は続く。
「やめてくださいよ~。ねえ、お金出してくださいよ~、ニューヨーク行きたいんですよ~、フォーなんとか大学行って国際弁護士になって、恋は盲目のATM彼女を見つけるんですからあ」
水嶋先輩、さっきから連発してますけど、洒落になんないですよ、あなたのおとうさん、まさにそれだったんですから、とは口が裂けてもいえないな。
「踏み倒されちゃたまらん、そうだ、おまえら錦鯉の稚魚なんとかならんか」
「それこそ、詐欺っすよ、何が錦鯉を研究費で買ったんだよ、あれ、細太郎のクソガキが須庭寺の池から持ってきたらんちゅうと、出目金の掛け合わせじゃないですか」
全員の視線が俺に集中する。
「いやだって、住職さまが持っていけというから」
と、言い訳するも、
「よくある話だよ、うちなんか、金魚が30㎝までデカくなって近所の小学校の池に逃がしたもんな」
桑原おめ~。
「池でかうとえれーめにあうもんなあ」
「フナだしな。もっとも、中島教授の不気味な蘭に比べたらマシでしょ~が」
次から次へと悪事が暴露されていき、さっきの釣り人が聞いたら脳の血管破裂するに違いない。
「そーいえば、さっきの人はどんな罪?」
と聞けば、
「孝太郎さんがこの近くの柵が壊されていて、どうしてなんだろうと調べてたんだな。俺たち、孝太郎さんの計理士兼税理士でもあるし、一緒に調べてらこの騒動に遭遇したってわけ。桑原君にも協力してもらってたんだよ」
と小栗先輩が教えてくれた。
「桑原君、優秀だしな。宮﨑君、お金が欲しいならいいバイト紹介するけど?」
「いや、バイトでも働くの嫌っす」
中島教授は名残り惜しそうにしながらも、
「U字ロックかけときゃなあ」
と、チョイノリを撫でながらつぶやいた。
U字ロックしてなかったんかいっ!!
「U字ロックつけて売ったんだけどな。教授、捨てちゃった?」
宮﨑の問いに、
「捨てた」
おいおいおいおいおい。
みなさん、バイクにはU字ロックかけましょうね、じゃないと作者…いや教授みたいにチョイノリ盗まれますよ~。
返してくれ~(´;ω;`)
あんたら、ここで何してんの?とツッコミ入れてる細太郎です。
突然の登場に、開いた口がふさがらない俺は、このどーしよーもない先輩たちに何と声をかけてよいのかわからん。てか、あんたら部外者だろうが。てか、孝太郎先輩なにしてんの…。
「警備員の西村です。バイトです。今、大学の関係者でない方の構内の立ち入りはお断りしておりますが」
「お、おれたちは関係者だ、ここに勤めている」
「ばああかもん、わしを知らんくせに何をいうかっ!!」
とうとう吾輩じゃなくなった。
「おい、そこにいるのは小栗に水嶋だな、西村と何をたくらんでいる」
「なんだ、なんだ、さっき計理士と司法書士っていってたぞ」
釣りオヤジも突っ込む。
「アメリカの某大学に行って弁護士の資格も得ようと思っている。金かしてくれ、踏み倒し前提だがwww」
水嶋先輩、何考えている。
「あんな、この大学で警備しているのは、俺の資産もこの大学にあるからだ。それに、今のこのご時世に休日に部外者が釣り目的で入っていいという理屈はない。関係者?ふざけるな、俺たちはこの大学の関係者、在校生、ここ数年の卒業生の顔も頭に刻み込まれている。お前たちは関係者でも卒業生でもない。しかも、卒業生も事前許可がないと構内に入れない。つまり、おまえらは不法侵入者だ。しかも、ここにどうやって侵入した。さらに、世界的に有名な中島教授のバイクを窃盗している。さっき、警察に問い合わせたら盗難届も出ていた。もはや言い逃れもできない。警察が来るまで、おい、細太郎、こいつらを捕まえて置け」
西村先輩、さすが説得力ある。
「捕まえるっておまえら警察ではないぞ」
オヤジがそれでも逃げようとするのを、後ろから回った研究室の後輩が、オヤジたちを後ろから羽交い絞めにした。
「ばあか、何も捜査機関だけが逮捕できるわけじゃない、おまえら盗難届の出ているバイクを所持していたじゃないか、持主が見つけたんだ現行犯だ」
小栗先輩がぐいっと前に出て、
「いいか、おまえら羽交い絞めはやめろ、そのままそいつらを取り囲んでいろ、殴るなよ。それ以上はするな」
と強い口調で命じてきて、さらにポケットから名刺を取り出すと、
「すいませ~ん、弁護士予定です。司法書士でもあります。ご用命はいつでも承ります」
「同じく、税理士で弁護士予定の水嶋です」
こちらも名刺を差し出し、オヤジたちを激怒させ、俺たちは呆れかえってしまった。
「なんだ、おまえら弁護士になっとたんだ」
中島教授はあきれ顔で名刺を受け取り、二人の顔を眺める。
「二人とも2回落ちました」
「来年ニューヨーク行きます、で、国際弁護士目指します、だから金貸してください、踏み倒すけど」
減らず口も変わらない二人は、これでも美都地区豪農を誇る農家の息子だ。
釣り人のおっさんたちは、駆け付けた警察官に連行されていったが
「だあれがおまえらみたいなやつに弁護を頼むか、ふざけるな!!」
と、怒鳴り散らしていた。
「バカなやつらだ」
「うん、計理士と司法書士以外は、口から出まかせなんだが、まあ、合格したのは間違いないしな、名刺も教授の見間違いだし」
孝太郎先輩は、そうつぶやき、
「どおれ、バイトにもどっか」
と、去っていった。
「なんなんだ」
俺たちは、池の中から呆然と見送るだけだった。
一応、解決したんか、これ…。
細太郎です。
山崎、ドアホウだな。金が欲しけりゃいいバイト紹介してやるのに。。。食い物にも困らんぞ。ただ、そのまま就職になるかもしれないが…。しかし、ブラックバスがたんぱく源だったとは、知らなんだ…
「働いたらまけだもんな…」
何考えたんだよ、コイツ。
そう思っていたのは、釣り人のおっさんたちも同様で、
「親からの仕送りを使いまくったあげくの暴挙かよ」
とか、
「奨学金の使い道もちゃんとしとかねーと、あとで悲惨な目にあうぞ」
とか言われているが、へとも思っていないどころか、
「金の使い道を誤っているのはおめーらだ、じゃなきゃ『俺の』チョイノリ盗むわけねえもんな」
「俺のって…おまえ」
ヤフオクでうっ飛ばして教授に買わせたのは、山崎おめーだがよ。
「ふん」
山崎の独壇場に池から消えていた桑原が戻ってきて
「警備員よんだから。怪しげな奴が侵入していて、俺らの大学の所有物である池の魚を盗み取りしているって」
「なに?」
「そーだろーが、この池は俺ら理学部と農学部のものだ。大学の所有物だ。ここには、錦鯉も放してある。これは、大学の研究費用で購入したものだ。考えるにここにブラックバスがいることを外部のお前らが知っているということは、お前ら外部の人間が放流したに違いない。大学の資産である錦鯉の稚魚も食われた。つまり、お前らがこの国立大学法人つくばった大学の資産を棄損させたことに他ならない。早い話、おまえらの娯楽は、国家予算を横領したことになる。これをどう言い訳するつもりだ」
なんか、すっげーもっともらしいことを言っているが、錦鯉なもんか、巨大化したらんちゅうだ。俺が須庭寺の放生池から持ってきたもんだ。
「その通りだ」
と声が聞こえたので振り返れば豪農コンビ水嶋&小栗先輩が立っている。何であんたらここにいるの。
「どうも申し遅れました、わたくし、司法書士の手伝いの仕事をしております計理士の水嶋と申します」
へ?
「計理士に手伝いをさせている司法書士の小栗です」
は?
「で、私が警備員ですが?」
げ、孝太郎先輩。
「ななななななんでえええ?」
ああ。これで終わろうと思っていたのに~。。。つづく。。。
山崎です。
どうも、初めまして。細太郎と同じ研究室です。
留年してるんで、細太郎と年は同じです。はい。
ここからは、俺が…。
つくばった大学の人工池は、もうできてから50年近くたっている。構内のこれまた人工小川を繋ぐ形でいくつかある人工池がつながっている。もちろん、うちら理学部や農学部には貴重な研究池であり、遠く離れた文学部には憩いとなっているようだが、そこは知らん。この池にブラックバスが目立つようになったのはここ10年くらいで、最初は金魚だのなんだのがいたんだがこいつらに食い尽くされてしまった。
金魚は文学部が流したらしい。ロクなことしねえな、あいつら。
生命工学や生命科学だの、地球上の生命にかかわる俺たちの研究には邪魔ことこの上ない。あいつらの言い草では、文学的表現に欠かせないんだそうだ。
金魚が花になって妙な鳴き声を上げるったあ、地獄の沙汰である。
(どうも、鬼灯の冷徹のことを言っているらしい。細太郎談)
で、そこへもってきてブラックバスの異常な増え方にさすがの教授たちも切れて、
「駆除して食べてあげましょう」
と静かに言い放ったので、代々こうして理学部・農学部の優志でバス釣りをかましてるわけだ。
「で、チョイノリがおまえのものだった、という理由はなんだ」
理由もへったくれもあるけえ、
「働いたら負けだからだよ」
釣りオヤジには理屈がわかるまい。釣りは趣味ではなく、生きる糧なんだ。
「ああ?釣りは釣りだあ、車から歩いてこられないからチョイノリ乗ってどこが悪い」
「それが、どーした、働いたら負けだといっているだろ、チョイノリも貴重な資金源だ。近場の人間に売ったのは運送費を節約しただけだ」
「遊ぶ金欲しさだろうが」
「ボケが、それは細菌とウィルス体系という本に化けた。ウィルスだぞお、大腸菌だぞお。ちなみに、口の中の細菌の数は、あんたのケツの穴より多い。ほ~れほれ、何を舐めたか知らねえそこらのねーちゃんとキスしてっと、死ぬぞ」
ちょっと大げさにかましてやると、釣りオヤジたちの表情が青くなったり赤くなったりと、信号よろしく変わりまくる。
ハッタリも時には武器になる。
「よおくいったあ、吾輩の講義のたまものだあ」
中島教授がいつも以上に声を張り上げた。
「ちょうどいい、今日で2週間風呂も自粛しておった、ほどよく細菌も醸されているぞ」
「げっ」
釣り人オヤジは、慌てて中島教授の隣から飛びすさった。
うん、「騙り」足りないが続いてしまおう。。。
細太郎です。
チョイノリをめぐって、思わぬ方向に話が飛んで行ったぞ。
「こいつらも知っている、チョイノリを使用して講義に行くためにキャンパスをバリバリ言わせて走っているところを」
「何いうか、こんな臭いオヤジが天下の国立大学の教授なもんか」
「あんた、騙るに落ちているよ、中島教授を知らないってことはうちの関係者じゃないってこと、つまりは不法侵入した上に、外来種であるブラックバスとさらにみたところ、あんたらリリースしているじゃなか」
俺は、タモを持ったままやつらの近くにより、
「リリースしないで持って帰って食ってやれ」
と、いってやった。
「あ?そんな臭いの持ち帰れっか」
気色ばんだオヤジが言う。
「もともと人工の池だし、何が住んでたってかまわない。でも、せっかく日本産の水生植物や、めだかや川エビが育ってきたんだ。余計なものをいれんなや。ましてやブラックバスを臭いだなんて、かわいそうじゃないか」
「そうだ、なんでそんな魚を釣ってんだよ、釣ったんならお持ち帰りしろよ。釣ったものんは持ち帰るのが、魚と女性に対する礼儀だ」
研究室仲間の桑原がタモの中をのぞく。
こいつは~。。。
「吾輩は無視かい」
ぽつりと教授がつぶやく。
「むさい、くさいがモットーの中島教授は、これでも世界的に有名な植物学者だ。いうなればブラックバスだ。リリースしないで持ち帰れよ、あ、チョイノリはおいていけ」
桑原に続いて山崎も、詰め寄る。
「そのチョイノリの別についているシールあるだろ、裏っかわに、それ、俺が貼ったんだ、ヤフオクに売る前に…」
なに~?
教授も釣りオヤジもチョイノリのオレンジうさぎ以外のシールに気づく。
「ニートがのっています。。。働いたら負けだと思っている」
おっさんたちが顔を見合わせた。。。
「働いたら負け…」
「文句あるかあああああ」
山崎、名前が泣くぞ。。。
つづく
細太郎です。
大学構内の池の水抜きますよろしく、バス駆除をしていたところ、どっかの釣りオヤジたちに絡まれた。
「いいからどけ」
「なんですか、誰ですか」
「どけよ」
「だから、誰ですか」
ずっと、この会話だ。
「釣りかよ、大学構内のこんな人口の研究池で釣りしようなんて、ちいせいオヤジどもだ」
大学生の一人が池の中で仁王立ちになり、中から掬い取ったバス入りのタモを振り回した。
「ほら、やるぞ、あんたらがどーせ放流したんだろ、バス」
オヤジの一人にべちゃっとバスがぶちあたった。
「何しやがんだ、このくそガキども」
顔面にバスがぶちあたったオヤジが、池の中に入ってこようとしたがヘドロだらけの池に入るのを躊躇した。と、そこへ、
「なあにをやっとるかね」
と、中島教授の声がした。
「吾輩の池に何か用事か?」
こ汚いむさいオヤジの出現に釣り人オヤジたちは、度肝を抜かれたような表情をして飛びすさった。
「くせええ、このオヤジ」
「おまえこそ、なにもんだ、ここは大学構内だぞ」
態勢を立て直したオヤジが、それとは知らず中島教授に向かって怒鳴りつけた。が、それを無視して、
「おい、おまえたち、先日盗まれた吾輩のチョイノリがそこに停まっているんだが、誰か乗ってきたのか?」
と、いったん戻ってきて黒のチョイノリを持ち込んできた。
「これは、俺のだぞ」
釣り人オヤジがチョイノリをつかみ取ろうとした。
「なにをいうか、吾輩がこの大学構内を講義のために移動するためにヤフオクで買ったチョイノリだぞ。ほれ、これみろ、吾輩のシールがはってある」
思わぬ展開に教授のチョイノリのタンクをみれば、目ん玉ぐるぐるしたオレンジ色のウサギもどきが貼ってある。
「動かぬ証拠だ」
「なんだ、ウサギのシールくらい目印に誰でも貼るわ!!」
釣りオヤジが、オレンジうさぎを知らないのか、チョイノリをぐいっと引っ張る。
「お前、このうさぎを知らんのか」
後ろにいたもう一人の釣りオヤジが、
「それはジャビットだ、ジャビット」
と、教えるも、マッドサイエンテスト中島がこれにはカチンときたらしい。
「ぶああかもん、ジャビットではない、ほれほれ、背番号は333だ。ジャビイだ、ばかたれがああああ」
「うるさい、なんでもいい、離せ、このホーム××めが」
呆れてこの様子を見ていたが、
「やっぱり、あんたたち、この大学の人じゃないですね、この人を知らないってことは…」
「あああ?」
「この人、教授ですよ、ここの」
正確には、孟宗学院大の教授なんだが。
「うええええ」
釣り人オヤジは、思わずチョイノリから手を離す。
「吾輩を知らぬとは、さては騙りだな、マッドサイエンテストプロフェッサー中島とは、吾輩のことだ」
てか、教授、いつもは吾輩だなんて言わないだろうがあ~、
と、ため息が出たところでやっぱりつづく、すまんね