「しちごさんって…」
と、藤川家の書類を見ていて俺はぽつりと、つぶやいた。。。
「代々の当主の幼名だったんかい!!」
「それは、なごみ、またはしめ、とよむのでございます」
義祖父になる執事の北別府さんが、系図をひとつひとつ指し示しながら教えてくれた。
「初代がなごみ、二代目の田吾作様でございますね、この方がしめ、三代目がしちごさん、四代目がまたもとに戻りましてなごみ、と順繰りに名乗ってこられたのです。。。」
「田吾作っていうのは…」
「いうなれば、越後のちりめん問屋光右衛門さまと同じでございます」
「へ、へえ」
ということは、今の当主のあのダンディなおっさんは、昔ならば、
「しめ、でございます。ご隠居様がなごみ…」
「なごみって…は?ちょっとまって?んっじゃあ、俺らのサッカー部の顧問の坊ちゃんは…」
「は、しちごさんでございます」
ぶわっははははっははは
おりゃあ、たまらず笑ってしまったね、あの、女たらし野郎がしちごさん?
「主人たるお方を笑ってはなりませんよ、婿殿」
北別府さんは、むっつり顔でそう俺をたしなめたが、眉がぴくぴくしてる。そら、笑うだろう。あの、狂暴なくそじじいがなごみで、ダンディ女たらしがしめ、で、あのバカ殿がしちごさん?笑うわ…。
と、そんなわけで、通称(仮)亀梨軍団のLINEグループで流したことは言うまでもない。。。
そんなおれは、もうすぐ婿養子になる悠樹だぜ。。。