頭木弘樹編『絶望図書館』ちくま文庫(2017)
この図書館は、「絶望的な物語」を集めてあるわけではありません。
「絶望から立ち直るための物語」を集めてあるわけでもありません。
絶望して、まだ当分、立ち直れそうもないとき、その長い「絶望の期間」をいかにして過ごすか?
そういうときに、ぜひ館内に入ってきてみていただきたいのです。
必ず何か、心にふれる物語に出会えるはずです。
本書まえがきの「絶望図書館 ご利用案内」より
冒頭の短編、三田村信行作 佐々木マキ画「おとうさんがいっぱい」があまりにも傑作だったので、すぐに妻にあらすじを話したら、妻は予想外にこの奇想天外な話をとてもリアルな感覚で受け止めていました。
その感覚、わかる
と。
妻の食いつきがあまりに良かったので、次の筒井康隆のこれまた支離滅裂な傑作のなかの一文を紹介した。
「酒は飲むがまだアル中ではない。
怠け者だが自閉症ではない。
喧嘩はするものの殺人鬼ではない。
非常識ではあるが完全な馬鹿ではない」
これを私は格好の救いの言葉として天使の言葉のように読んだのだけれども、
妻は、そうはとらなかった。
こういう人間の隣で、どれだけ他の人が苦労させられているか、
その現実を思うと、笑い事では済まされないという。
この立ち位置の違いは、永遠にまじわらないかもしれない。
図書館にまつわる本を集めたコーナーを作っているときに出会った本で、
2冊だけ仕入れた本ですが、
とりあえず今日、読む本が見つからない人にオススメの1冊として、
少し積んでみようか。