ニューズウイークに「じっくり寝かせてコクを引き出すエイジド・コーヒが密かにブームに」という記事がでた。
コーヒーは収穫した初年度をファーストクロップ、2年目をパストクロップといいます。セカンドではないんですね。新豆とは違い、別物と扱われています。
これは簡単で、香りが落ちるからです。ただ青臭さが抜けるのでマイルドになって行きます。そして収穫から5年以上と言いますが、定義のないオールドクロップというものもあります。保管状況がものを言う世界でして、単純な不良在庫はオールドと言っていいのかどうなのか判断に悩むところです。ですが、わかっているのは峻烈な香りは無くなると言うことです。むしろウッディな、豆が本来、木と同じ成分でできていると言う味わいになりがちです。なので深煎りになります。するとカラメル状の甘さやコクが出てきますが香りは薄くなります。下手すると木酢液の香りがします。
ただいい豆だったらパストであろうがオールドであろうが、ある程度長期熟成は可能だと言われています。私は話半分で考えていますが、このエイジドはどうも胡散臭い。
その前にインドのモンスーンコーヒーと言うのがある。収穫して乾燥したのをモンスーンの湿度にあえて当てて、発芽直前まで膨らんだものを乾燥するのです。当然香りは低くなる。でも味はマイルドになる。インドでマイルド。もう一度言うよ、インドでマイルド。意味があるのか。
大航海時代のコーヒーの味わいというのはどう言ったものなのかというのを探求するのは面白い。だがやり方がどうかと思うのがエイジドだ。
「エイジド・コーヒーは、古くて、新しいコーヒースタイルだ。コーヒーが欧州に伝来した16世紀当時、中東イエメンやインドネシアなどで収穫されたコーヒー豆は、長い航海を経て、欧州に運ばれていた。その間、木製の船体や潮風に触れたり、温度や湿度が変化したりすることによって、より深く、豊かな味わいとなったコーヒー豆は、欧州で人気を集めたという」
ただね、そうして当時と同じ流通で運ぶわけではないから、とてもよくわからないことをする。
「また、米オレゴン州ポートランドの「ウォーター・アベニュー・コーヒー・ロースタリーズ」は、オーク樽で熟成させたスマトラコーヒーやピノ・ノワール樽で熟成したエルサルバドルコーヒーを販売するコーヒー焙煎業者としてコーヒー愛好家の間で有名だ。」
そう言った香り付けのコーヒーというのは面白いんだけど、焙煎時に相当その樽の香りは抜けるわけで、そこに意味を見出すとすると物語ということになる。でも物語消費はいいかげんにしてもらいたい。
そもそもフレーバーコーヒーとどこが違うのという疑問もある。香りが抜けた豆に、新たな香りを添加すると言って付加価値を付けているだけに過ぎない。そこに樽とかの物語があるだけだ。
基本的に不良在庫の高付加価値戦略としか思えないのだ。ネスカフェまで参入していればそうなる。
嗜好品なので絶対はない。だがこれは言葉だけだ。少なくともこれだけは言える。大航海時代のコーヒーは今よりとてつもなくまずかった。それを上品に再現したところで、どうなのだろうか。その過程を明確化できただけで、それがいいとは限らない。
そういえばミカフェートの川島氏が、盛岡中の自家焙煎コーヒーの豆を集めて、「劣化している」と言ったそうだ。何を持って劣化しているのかはわからないが、機屋からクラムボンまでそう言ったそうなので、それはありえない。あそこの豆は動いている。