鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

No.104 (一緒に学ぼう 社会保障のABC:第4回)

2013-06-11 12:02:52 | 日記
今回は、社会保障の財源の話です。社会保険の財源として、かなりの税が投入さ
れています。社会保険は、「リスクを分散する」という保険の考えに基づきつつ、
「社会扶助」としての一面も併せ持つしくみなのですね。

参考:公的扶助
国等の公的機関が主体となって、一般租税を財源にして、貧困者に最低限の生活
を保障するために行う経済的援助。

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国民皆保険・皆年金(3)社会保険の財源

■だれが負担しているか

 社会保険の財源は、原則、保険料です。サラリーマンなどが加入する被用者保
険では、被用者(サラリーマンなど雇われて働いている人)だけではなく、事業
主も負担します。ただし、保険料の負担が重くなり過ぎないよう、国や地方自治
体による税金の投入もされています。

 社会保険の仕組みで年金や医療を運営する国々の中で、日本は税金の投入割合
が高い国だといわれます。下の図は、平成24年版厚生労働白書に掲載されてい
る「社会保障財源の全体像(イメージ)」です。

 これを見ても、社会保険で運営されている年金や医療などの制度に、かなりの
税金が投入されているのがわかります。例えば、全国民に給付される基礎年金に
は国の税金が2分の1投入されていますし、自営業者や無職の人などが加入し、
医療サービスを受ける国民健康保険にも、国と自治体(都道府県)の税金が2分
の1投入されています。また、高齢者に介護サービスを給付する介護保険でも、
国と自治体(都道府県、市町村)の税金が2分の1投入されています。

■「保険」か「扶助」か

 「税金の割合が5割を超えたら、もはや社会保険とは呼べない」と言われるこ
とがあります。確かに、給付を賄う費用の半分以上を税金で占めるようになった
ら、社会保険とは呼びにくいかもしれません。社会保障の仕組みには、社会保険
のほかに、保険の仕組みを用いず、税金を財源とする「社会扶助」という給付の
仕組みもあります。税金の割合が高まると、その制度は社会保険ではなく、社会
扶助の仕組みで運営されているのではないかということにもなりかねません。

 税金がどの程度まで入ると社会保険と呼べなくなるかについての定説はありま
せん。しかし、社会保険の最大の特徴は、「保険料の拠出をしたことで、給付の
権利が得られる」ことですから、その方式にのっとって運営されている限りは、
公費の投入割合が5割を超えても、社会保険と呼んでよいと思います。

■社会保険が広まったわけ

 社会保険は、「鉄血宰相」と呼ばれたドイツのビスマルクが、1883年に、
疾病保険(医療保険)を作ったのが世界で最初といわれています。それまでも、
工場などで働く人たちが、お金を出し合って自分たちで助け合う仕組みがありま
した。それを全国的に、法律に基づく制度にまで高めたのがビスマルクです。

 当時、ドイツでは、労働争議が頻発していたため、ビスマルクは、社会主義的
な運動を取り締まる一方、労働者の生活を守るものとして社会保険を作ったので
す。このため、「飴(あめ)と鞭(むち)」の政策と呼ばれることもあります。

 従来、貧しい人を救う政策は税金で行われることが多かったのですが、それだ
と給付を受ける際に、「ただで、施しのように受けるので、恥ずかしい」といっ
たスティグマ(恥辱、不名誉)を伴いがちだとされました。一方、保険料を払っ
た見返りに給付を受けることができる社会保険の仕組みは、より権利性が高く、
負担と給付の関係もわかりやすいと考えられました。そこでドイツで誕生後、社
会保険の仕組みは世界中に広まっていったのです。

 また、社会保険は、「リスクを分散する」という保険の考えに基づくため、給
付の対象を、一部の貧しい人たち(恵まれない人たち)から、一般国民にまで広
げることができたともいわれています。

 こうしてみてくると、社会保険は、自立・自助の精神に基づき、能力に応じて
保険料を拠出し、権利として必要な給付を受けられるなど、長所が多いように思
えます。しかし、社会保険ゆえの課題や短所も多くあります。次回、さらに見て
いきたいと思います。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=78620&from=popin

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No.103 (鶴岡市地域ケア会議 試行)

2013-06-11 09:29:29 | 日記
2013年6月10日 13:00から、にこふる小会議室で、表記会議が行われました。

人口の約半分が高齢者という、世界でも経験のない超高齢社会を向かえるにあた
り、高齢者を支える新たなしくみが地域には求められいます。

高齢者を支えるには、介護サービスに限らず、地域の保健・福祉・医療サービス
やボランティア活動、インフォーマルサービスなどの様々な社会的資源が有機的
に連携することができる環境整備が重要です。

こうした連携体制を支える共通基盤として多職種協働による「地域包括支援ネッ
トワーク」を構築が必要であり、そのための一つの手法のひとつとして期待され
ているのが地域ケア会議です。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/seminar/dl/02_95-04.pdf

地域ケア会議は、課長通知として 平成24年3月30日に明文化され、その設置が市
町村に義務付けられました。鶴岡市でも地域ケア会議のあり方について、検討し
てきているわけですが、本日は、市が目指す地域ケア会議の概要説明、模擬地域
ケア会議ともいえる事例検討会、最後にオブザーバーも交えた意見交換が行われ
ました。

まずは、地域ケア会議のついての説明がありました。

■鶴岡市における地域ケア会議(仮称)の概要について
・位置づけ:
  地域ケアネットワークの構築のひとつの手法
  政策形成までの機能をもつ
  
・地域ケア会議の目的(機能)
  個別課題解決
  地域包括支援ネットワーク構築
  地域課題発見
  地域づくり、資源開発
  政策形成機能

 地域ケア会議のレベルとメンバー
  個別事例レベル:
   目的:課題解決、ケアマネ支援、地域包括支援ネットワーク構築など
   参加者:当事者、家族、主催者、ケアマネ、ヘルパー事業所、
       保健医療関係者、民生員、住民組織など
  日常生活圏域レベル:
   目的:日常生活圏域における課題の把握および対応
   参加者:コミュニティー振興会、町内会長、民生児童委員協議、学区社協
       などの代表者
  市レベル:
   目的:市における課題の把握および対応
   参加者:保険医療関係者、住民組織代表、民生児童委員協議会、学区社協
  市を超えたレベル:

 ケース選定
  ・包括支援センターが選定:困難事例の課題解決
  ・市が選定:ケアプランの検証が主に
  ・虐待ケースは対象外

 課題
  ・従来の会議との整合性
  ・市レベルの会議は、どうするのか?
    課題がでてから検討しては?
  ・開催頻度:随時か? 定期か?

 今後の展開
  26年を目途に開催実施予定

■事例検討

事例:
 事例提供:鶴岡地区医師会ケアプランセンターふきのとう
 87歳、女性、借家での一人暮らし
 慢性腎不全、肝機能障害、高血圧、糖尿病、大腿骨頚部骨折、
 通所介護→通所リハ(週1回)
 主治医(診療所)には月1回受診

 長男とは連絡できず、異母妹が関係を拒否し、キーパーソンがいない
 食事は配食サービス(昼のみ)+パンなど簡単な食事
 異母妹が原因の借金あり、年金から返済している
 1-2回/週程度転倒している
 2か月で年金30万の収入、生活は可能だが、借金や家賃(5.5万)あり、
 十分なサービスを受けられない。
 地域の人とは交流がある

この事例の課題
 在宅の限界点をどうしたらあげられるか(=QOLをあげるには?)

委員からの意見
 どのような生活をしたいのか、本人の意向を確認する必要がある
  場合によっては、施設が良いのかもしれない
 市が関与し、親族に連絡はしているが、通じない
 転倒防止のための、動線の確認、家具などの配置替えが必要では
  (2回すでに実施はしてはいる)
 多剤を服用している。薬が転倒の原因となっている可能性もあるのでは?
 食事のチェック、食事、水分量、塩分、カロリー(食事量)、体重管理など必
 要なのではないか
 訪問看護を入れて、在宅での医療的な評価が必要なのでは?

などが話し合われました。

このようなキーパーソンがいないケースの対応として、個人的に弁護士と契約し
たり、行政がキーパーソンになったりする場合があるそうです。

また、老健施設入所には、住所のない、申請する人(キーパーソン)がいない、
身元を引き取るひとがいない場合には入所は難しいとのこと。

など、話し合われました。

■意見交換

個別の事例解決だけではなく、事例検討を通して、広く地域のスキルアップにつ
なげる仕組みが必要、

地域ケア会議は、(個別事例の課題解決だけではなく)、自立支援に向けてのケア
プランの検証も機能も必要、

などの意見が出され、閉会となりました。

われわれ医師があまり知ることがない、独居患者が在宅で生活をしていく上での
困難さを少し理解できた気がします。主治医は、患者が在宅で何に困っているの
か、その人の生活をもっと知る必要性を感じました。

以上、報告します。

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