東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

干支のねずみづくり ① 「白ねずみ」

2019-11-02 12:18:57 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 来年の干支はねすみ。例年ならば既にご紹介しているところですが今からになってしまいました。まずは新登場の「白ねずみ」から。

 この形の素焼きのねずみ(ただし本体のみ)は都内の複数の近世遺跡から出土していて割と親しまれていたアイテムだったのでは…と想像しています。ほぼ同じ大きさで部分の異なる2つのタイプがあり、ひとつは画像のように耳の彫りがあり、もうひとつのには別に作った耳を挿し込むためような孔が開いています。孔のタイプはうさぎ?という可能性もあるような気がするので前者の耳の彫りのあるタイプをお手本にしてモデリングしてみました。 

 顔体の左右の中心に型の割り目が走っていてお尻のところ後から見て割り目の向って右横に孔があけられているのです。(異なる遺跡から出た同じモデリングのねずみに共通すること)

 この孔、乾燥を促すための空気孔であれば、底にあけるとか彩色の時に串を挿し込んで串を持って作業をして、そのまま藁づとに挿して乾燥させる、という目的が考えられます。また笛として音色を出すための孔のあけ方ともあけ方が違います。位置的に尻尾が植えられていた、と考えるのが一番自然だと思いました。

 尻尾はどんな素材でどんな様子だったのか、遺跡出土品だと残っておらず、伝世品を見たこともないので、人形の製品としては土人形とは別格の高級品ですが「毛植え人形」のねずみの尻尾だとどうなのか、「お人形は顔が命」の浅草橋の「吉徳」さんで学芸員をされていた林直輝さんにお訊ねしたところ針金に絹糸を巻きつけて肉づけするということをご教示いただきました。

 土人形の尻尾の素材としては絹糸では高価過ぎるのでせいぜい古紙に着色したものを細く切って針金に巻き付きることで肉づけすることにして、障子紙に植物の煮出し汁(蘇芳ときはだ)を乾かし乾かし重ねて、その上に染料を重ねて色味を調節して使ってみました。

 ねずみはキラ(雲母粉)地にすることで古風さを意識し背中辺りに吉祥文的なものを、と考え、安易かもしれませんが宝珠を描いてみました。サンプルとして画像の4匹を完成させ、残りもこれから…というところで今年3度目の入院となってしまいましたが、退院できた後仕上げて出したいと思います。すでにひとまわり前に出している「大黒天ねずみ」や「面持ちねずみ」も用意してありますし、これから新登場のつもりで取り組み中のねずみもいるので追ってご紹介できればと思います。