仙台光原社さんから「雛の催事」向けに頼まれている一文雛を急いで塗り進めているところです。
上の画像は小さいほうの一文雛で女雛の衣部分が黄色く発色しているのは、きはだ(黄柏)の煮出し汁を重ね塗りしてこの上から蘇芳(すおう)の煮出し汁を重ねて塗るための地塗りともいえます。蘇芳自体は黄色の地塗りなしでは冷めた紫のように発色するので、黄色の下地を作ってはじめて赤味の発色が得られるわけです。場合によっては途中から蘇芳にキハダを混ぜる場合もあります。植物性の色なので画像の黄色になるまできはだを7回重ね塗りしました。ちなみに女雛の冠と檜扇の部分の黄色は泥絵具の黄色です。明治はじめ頃までは体に有害な石黄(硫黄系)で塗られていたと思われます。男雛の袍(ほう)は墨で黒く塗ります。
もうひとつの一文雛は今戸人形最後の生粋の製作者であった尾張屋・金沢春吉翁(明治元年~昭和19年)のお作りになった「江戸一文雛」として世に出された人形をお手本に作っているもので、かなり久しぶりです。色塗りの手数は上の小さな一文雛に比べると圧倒的に多いですが、難しいと思うのは面描きです、三角眼風に筆の腰を太く引くという面描きともちょっと異なり、ラフに寝かせた線というのか本当に難しいと思います。画像に写っていませんが、女雛の背面の裳部分には姫小松を3つ描きます。
尾張屋さん風の一文雛の彩色は8割方進みましたが、これから小さいほうの雛の蘇芳の重ね塗りを進めていきます。そのあと玉台に繧繝(うんげん)べり風な縞に塗り分けて本体の人形と組み合わせます。
光原社さんの催事は始まる次期なんですが、年末の窯の不調のことをお伝えしたところ、遅れてもよいので送ってほしいとのことで、それでもあんまり迷惑をおかけしないよう、急いで完成させたいと思っています。
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