「FANみそ!」展に間に合いそうな来年の干支ものをもう1種類。「寒紅の丑」です。小さなシンプルなものですが、今戸人形の牛としては古典的なものであり、愛好家のあいだでは知られたものです。
昔、紅花で作られた紅は非常に高価なもので、紅花の生産地だった山形の村山地方は紅花の生産によって富をもたらした富豪の蔵がならんでいたようです。紅は口紅にもなりますが、高級な染料として紅花染もあったものの身に付けることができたのは、限られた上流階級の女性に限られていたようです。
紅は化粧品である以前に薬で健康を支える貴重なものだったようです。
紅屋という商いがあって、寒の日に作られた紅はことさら薬効があり、商機としても特別な時期だったそうで、寒紅を買うとオマケとして、このような今戸焼で作られた素焼きの牛が付けられたというのです。
戦前の有坂与太郎の著作の中に記されていますが、小町紅本舗羽根田という紅屋が、今戸長昌寺門前で清川玉姫稲荷境内の口入稲荷から授与された狐や鉄砲狐、おはらごもりの狐、貯金玉、などを芋屋渡世の傍ら作っていた鈴木たつに紅丑を作らせ、寒紅の景品としてだしていたということです。
今の感覚からすれば、縁起物にしてもこういうものが、景品として販売促進のためのノベルティグッズとして値打ちがあったというのが不思議でそうした事実があったことは楽しいと思います。
伝世するものには同じ形で金色と黒のものが見られ、古物屋の蔵出しなどで出てくるもの必ずしも金色と黒で一対であっのかどうかわかりません。但しふたつでセットになっていたほうが、彩りとしてマシなので、ふたつで組にしてならべます。あんまりシンプル過ぎてつくる立場でもつかみどころがいまひとつな感じがしますが、こういうものがかつて今戸で作られていたということへの記憶につながれば楽しいです。
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