東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

広重画 「浄るり町繁華の図」より⑤

2010-09-30 21:58:22 | 錦絵

2007_0101_000000p1010743 丸〆猫屋が描かれていることで話題となった錦絵のシリーズの他の絵について、今回は5回目です。

この絵を見ると、描かれている大方の人物の世界は想定できるのですが、ちょっと悩んでしまう点もあるのです。

わかるところから片付けていきます。

画面左上は語りの席のようで演台の上の行灯に「二たば軍記」と書かれているのが見えます。つまり、「一谷嫩軍記」熊谷陣屋の段。語っているのが熊谷直実で、「さても去んぬる6日の夜、、」とやっているのでしょうか?ふたりの見物の右が熊谷夫婦の旧主で恩人であり敦盛の母である藤の方。左側で煙草をのんでいるのが熊谷の妻・相模ということになるのですが、紋が「向かい鳩」ではないです。

中段右、筵の上で三味線を弾く前帯の女性。行灯には「三きょく」とあり、「壇浦兜軍記」阿古屋の琴責めであることがわかります。聴き入る3人のお侍。手前は情け篤き庄司重忠で後ろが赤っ面の岩永。そのまた後は榛沢六郎でしょう。お琴と胡弓は見えません。歌舞伎や文楽がまだ一般的に親しまれていた戦前頃まではこの「重忠と岩永」というキャラクターの比喩で「あの人は重忠のような人なのにあいつは岩永のようだ」と云う風に日常的に使われていたそうです。

下段右の傘売りはもう与市兵衛で蛇の眼を手に取っている人相の悪い男はいかにも斧定九郎ですね。左でそれを覗いているのが勘平のようなのですが、背負っているものが水鉄砲のようなのが皮肉ですね。斧定九郎の扮装が中村仲蔵が工夫したといわれる黒のいでたちに朱鞘なのですが、本行の浄瑠璃や関西の古い型だともっと野暮ったいものなのではないでしょうか?「仮名手本忠臣蔵」五段目の山崎街道であることは言うまでもありません。

下段左は角樽が転がって裃姿のおっさんがいい気分にできあがっている。五斗の三番叟ですね。「義経腰越状」。横にいる犬は風俗画としての添え物でしょうか?野良犬が酔っ払いの拡げたものを食べていたとかいいますし、、。

残りふたつが私には悩みの種です。

中段左の二人。鍋蓋売りって実際あったのでしょうか?これって塚原卜伝と宮本武蔵の「鍋蓋試合」というやつでしょうか?しかしこれを浄瑠璃化させたものって聞いたことがないのでわかりません。探せば意外とあるのかもしれません。

右上の「ござ売り」のおじさんとお客の女性ふたり。私の観たことのある芝居の記憶からはこういう場面を連想させるものがないんです。女性はふたりとも筵を抱えているし、手前の女性は手ぬぐいを冠ってますね。後ろめたそうな、、。江戸の世話狂言だと「夜鷹」でしょう。しかし浄瑠璃は上方が本場だし、向こうの呼び方だと「惣嫁」ですよね。「惣嫁」の登場する浄瑠璃って結構あったのではないでしょうか。まだ観たことがないのですが、矢間重太郎の話。重太郎の妻おりえが重太郎の留守の間、疱瘡の子と舅の残った家の家計のために「惣嫁」をしていて、乞食と争ってその乞食が実は夫であったという場面があるそうで、それなのかどうか、、、。そうだとすれば「太平記忠臣講釈」かも、、。

とにかく観たことのないものはわかりません。

この錦絵シリーズで丸〆猫屋の描かれた絵についての記事はこちらです。


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