「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~「オーディオ愛好家のご来訪」2010・4・29~

2010年05月03日 | オーディオ談義

かねて予定のS木さん〔福岡市)が4月29日(木)にお見えになった。

このときを目途にじっくりと調整を続けてきた我が家のオーディオ・システムだが、とりあえず日頃、勝手気ままに取り散らかしているオーディオ・ルームの整理整頓のほうが先決。

何とかお客さんに不快感を感じさせないようにと1週間ほど前からボチボチ片付けを開始したものの、結果的には抜本的な整頓に至らず”ほどほど”の状態に。

さて、S木さんは自分と同様にSPユニット「アキシオム80」(英国:グッドマン社)の愛好家でこのブログが縁でこの2月に知り合った方。

                      

この「アキシオム80」は50年ほど前のSPなので現在はもちろん市販されておらず使っている人は極めて少数。

特別なツクリによる音色の繊細さは別格だが、その反面、気難しくてアンプの弱点をことさらにさらけ出すクセがあり、加えて故障しやすいときているので使いこなすのがたいへん。毎日ヒヤヒヤドキドキというのが偽らざる心境。

したがってお互いに苦労が分かっているだけに「同好の士」となると、ひときわ連帯感がもてるわけだが、S木さんの場合はたまたま「Axiom80」のネット検索により自分のブログがヒットし、共感を覚えてメールを出す気になられたとのこと。

いつもカミサンや娘から
「一文の得にもならないブログ」と冷笑(?)を背に受けながらも、めげずにコツコツと地道に続けて3年半余り、こうしてまったく見ず知らずの方と知り合えるのはとても金銭には換えられない!

「どうだ、思い知ったか」と溜飲を下げながら、ネットという文明の利器に改めて感謝。

ところで、去る3月31日にS木さんのご自宅に訪問して老練な英国人が作った世界で2セットしかないアンプと、出力管PX25の中で最高峰とされる英国製マツダの「PP5/400」で駆動された「アキシオム80」の妙なる音色に大いに感心したのは以前のブログで詳述したとおり。

                        

「アキシオム80」は口径20cmのフルレンジSPだが、いろんな鳴らし方があって、S木さんは「高域の抜け」を優先して単独で鳴らされている。

自分の場合は、人間の耳に聞こえる周波数帯域が20ヘルツ~2万ヘルツとされている中、200ヘルツ以上を「アキシオム80」の守備範囲としてそれ以下は4発の低域専用ユニットでカバーしているので同じSPユニットを使っているとはいえ音の傾向はかなり違ってくる。

                       


さ~て、試聴後にどういう感想を洩らされるだろうか。

当初の訪問時刻のご予定は午前中とのことだったが、ご家族の観光も兼ねて午後2時へと変更。

昼食後に早速ウォーミング・アップのためアンプのスイッチを入れてグールドの「イギリス組曲」(バッハ)を聴くものの気分的に何だか落ち着かない。

初めての方に我が家のシステムを聴いていただくというのはなかなか緊張するものである。

「現時点の音」というのは何しろ40年近く取り組んできたオーディオの集大成とでもいうべきもの、いわば「血と汗と涙」の結晶なのでそれがたった一度の試聴で「何だ、この程度か」と評価されるのは結構つらい!

何せ多大の(?)お金と時間が注ぎ込んであるし、「人生観=感性」の象徴的な存在でもある。

これまでせっせと積み重ねてきたそういう価値観があっさり否定されることを恐れるというわけだが、この歳になっても何だかいつものクセで
「マイナス思考」に落ち込んでいくのが我ながらおかしくなるが、関連してふと、次の逸話を憶いだした。

出所は「”日本一”音のいいジャズ喫茶」とされる「ベイシー」(岩手県一関市)のマスター「菅原昭二」さんの随筆だが大要は次のとおりと記憶する。

菅原さんが「オーディオとジャズ」がこの上なく好きな和尚さん宅〔お寺)を訪れたときのこと。

オーディオ装置を目前にして和尚さんとのオーディオ談義が始まったが、そのうち当然のごとく話にキリがついて音を聞かせてもらえると思っていたら、和尚さんは話ばかりに終始して、とうとう音を聴かせてもらえないまま帰宅する破目になった。

その和尚さんはしばらくすると亡くなってしまい永遠に音を聴く機会が失われてしまったが、「なぜその和尚さんは菅原さんに音を聞かせようとしなかったのか?」

今にして察すると、どんなに「いい音」であろうと所詮は俗世の現実の出来事、とても想像と空想の中で美化されて鳴り響く音には敵わない。

「最上の音とは固定的な実体ではなくて空(くう)である」ということを伝えたかったのが死を悟った和尚さんの本意ではなかったろうかという話。

フ~ム、ここまでくると「オーディオ道」も何だか浮世離れして「宗教」に近くなる。たしか、これは仏教で言えば「色即是空」。

(五味康祐〔作家:故人〕さんの名著「西方の音」にも似たような話があって、オーディオ装置を買えない貧乏な青春時代に「シュワン」の音楽カタログを擦り切れるほど見ながら、この盤のレーベルと演奏家ならこういう演奏だろうと空想して聴いていた時代があり、振り返ってみるとその時代が最も豊饒なときだったとの記述がある。)

自分はこういうロマンチックともいえる思考が大好きだが、遠来のお客さんを前にして「現実的には無理だな~」なんて考えていると携帯が鳴った。

ちょうど、2時ちょっと前で玄関を出てみると20m程離れたところにS木さんの姿が。今の「カーナビ」はヤッパリすごい。

早速「散らかしてますけど~」とオーディオ・ルームにご案内。

ひととおり、システムの説明をしてから試聴に移った。持参されたお好みのCD2枚とともに、「田園」(ワルター指揮)などいろいろと聴いていただいたが「アキシオム80」の同好クラブの設立をはじめ四方山話に花が咲きゆっくりと鑑賞するヒマが無かっただろうと推察する。

丁度4時ごろに市内観光を終えられた奥様と娘さんが迎えに来られたので、お互いにまたの再会を約してお見送りをした。

結局、最後までS木さんのご感想をはっきりと聞けずじまいだったが、前述のようにオーディオも「色即是空」に通じると思えば「あまりこだわる必要がないのかも」という気がしてくるのが不思議~。



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