「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~「真夏の読書」~

2010年07月24日 | 読書コーナー

「フー、暑い、暑い・・・」、猛暑がやってきた。

冷房嫌いなのでオーディオ・ルームは朝から夕方まで2箇所の窓を開けっ放し。

それはいいのだが、日中、音楽を大音量で聴くとなるとご近所や通行人の迷惑となり、到底ムリな相談。

そこで暇つぶしに2階に上がって風通しのいいところで読書と相成る。

そうやって、最近読んだ本の中でいくつか紹介といきたかったが、この暑さのせいか今回はどうも書く意欲をそそる本が1冊きりしかなかった。

 「俺の後ろに立つな」~劇画一代~

「さいとう・たかお」著〔2010.6 新潮社刊)   

「俺の後ろに立つな」の表題でピンと来る方は相当の「ゴルゴ13」ファン。それくらいの「定番の科白(せりふ)」である。

この「ゴルゴ13」は世界を股に掛けるスナイパーが主役で「さいとう・たかお」さんの代表作ともいえる劇画。1968年連載開始だからもう40年を経過している勘定になる


随分と息の長いシリーズで、今まで一度も休載することなく続く立派な現役であり、作品数のほうも「500話」に達するという。

「劇画」といってもバカにすることなかれ!

「ゴルゴ13」とくれば、以前読んだ随筆に出てくる逸話がすぐに蘇ってくる。著者は裁判官。

この裁判官さんは大の「ゴルゴ」ファン。電車の中で夢中になって読んでいたら、ふと熱い視線を感じたので見上げてみると丁度、取り扱っている事件を担当している弁護士さんがたまたま居わせて、まるで信じられないような顔をして”まじまじ”と見つめていたという。

裁判官といえばわが国でも最難関の資格試験とされる「司法試験」に合格された方である。

職業としても「法の番人」として謹厳実直、しかも、いわば知的階級としては最上位に位置される人だが、そういう方が堂々と「ゴルゴ13」を公衆の面前で愛読している姿に、さぞや弁護士さんもビックリされたことだろう。

しかし、こういう話はいかにも気取りがなくて面白い。

あっ、そうそう、たしか自民党の元総理「麻生」さんも、クレー射撃が好きで、「ゴルゴ13」が愛読書だったと聞いたことがある。

さて本書である。

まさに著者の「生い立ちの記」ともいえる内容で、1936年和歌山生まれの大阪育ち。幼少時から絵が好きで、学校の試験は一度もまともに受けなかった。

漫画嫌いの母親の目を避け、理髪師をしながら17歳で描いた「空気男爵」でデビューし、以後、紆余曲折がありながらも脚本、構成、作画など分業体制により大人の鑑賞に堪えうる劇画を確立して今日に至っている。

興味を惹かれたのは「ゴルゴ13」の別名「デューク東郷」の由来。

著者は小学校時代から手もつけられないほどの悪童で先生からも無視されっ放しの存在だったが、中学3年の中間試験のとき、いつもどおり白紙の答案用紙を堂々と提出したところ「名前だけはきちんと書いて出しなさい」と、厳しく指導してくれたのが「東郷」先生。

爾後、唯一親身になって指導してくれた「東郷」先生に無条件に私淑していくが、この先生は著者が絶対的な自信を持っていた「絵」を否定することでより大きく目を開かせてくれた方でもある。

とにかく本書には「さいとう・たかお」の知られざるエピソードが満載でそれなりに面白い。

さらに、巻末の作品年表に記載されている作品数の多さに驚く。連載モノから貸本系単行本まで軽く450冊以上もある。これも、いち早く時代の展開を見通した分業体制のなせる業(わざ)だろう。

劇画という大人の娯楽に果たした多年の功績により平成22年4月に「旭日小綬賞」を受章されている。


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