いつぞやのブログでも記事にさせてもらったことがある我が家の近所にお住まいのM上さん。
ずっと東京にお住まいだったが3年ほど前に家を売り払って温泉のある別府に引越しされてきた。
自治会の役員を通じてたまたま知り合いになり、我が家にも2回ほどお見えになって、楽しく酒を酌み交わしながら一緒に音楽を聴いたものだった。
随分と昔のポップス「白い色は恋人の色」の歌手「ベッツィ&クリス」のことを「ペッティング&ク○○○ス」なんて茶化してしまう、随分と開けっ広げで愉快な方である。
ところが、運の悪いことに3ヶ月ほど前に病魔に侵されて手術、入院を経て、現在は自宅でご療養中。
じ~っと静養しているばかりでは退屈だろうと、早朝(5日)、久しぶりにお誘いの電話をかけてみた。
「容態はいかがですか?気分晴らしに音楽を聴きに来ませんか。午前中なら何時でも空いてますよ。送り迎えはクルマを出します。奥さんとも相談されて、返事は後でいいですから・・・」
5分ぐらいしてから電話がかかってきて、「9時過ぎにお伺いします。ちょっとぐらい歩いたほうがよさそうなので、お迎えはいいです。」
久しぶりにお会いしたM上さんは顔色が優れず随分と痩せておられた。元気のいい頃は、厳寒の中でも靴下を履かずに平気で自治会の役員会に出席されていたほどなのでその落差が信じられないくらい。
わざわざ東京まで行かれて手術を受けられた経緯など、人に話すことで気分が晴れるみたいなので事細かに伺ったところ、かなり容易ならざる症状。しかし、現代の医学は長足の進歩を遂げているのでまず心配なしと励ました。
とはいえ、油断は禁物で事後の養生が大切、激しい運動やアルコールは血管が膨れるので厳禁だそう。
まあ「音楽を聴くだけなら別に体力を消耗するわけでもなし」と、気に入りそうな曲目を次から次にかけてあげた。
「ちあきなおみ」「小椋佳」「ラテン・ソウル」(プラシド・ドミンゴ)、「カントリー・ヒット・ソング」(40スーパーヒット)。
これらの選曲は自分の節操の無さをあえて露呈するようなものだが、日頃から音楽のジャンルは別にクラシックにこだわることはないと思っている。
もちろんクラシックは大好きだが演歌も歌謡曲もラテンもカントリーもすべて音楽。要は聴いていて楽しければそれでいい。そういう主義なのでいろんな方と一緒に音楽を鑑賞できる自信がある。
したがってM上さんにも存分に楽しんで欲しいところだが、残念なことにどうも前回とは違う印象を受ける。とにかく持続性というか長続きがしない。
たとえばCDをず~っと聴き通すことがなく、1~2曲ほど聴くうちにソワソワして次のCDはと「目移り」される。
よくオーディオの試聴でお客さんが見えたときに録音のいいサワリの部分をちょこっと聴かせて次から次にCDを取り替えるが、それとはもちろん違う。「オーディオ試聴」と「音楽鑑賞」は似て非なるもの。
M上さんの場合、何だか「音楽鑑賞に没入できない」といった感じで、集中力、根気とかが失われている。
「肉体的な体力」にくわえて「精神的な体力」さえも奪ってしまう病気の怖さ!
そういえば自分の場合にも思い当たる節がある。
体調の悪いときや気分が優れないとき、特に睡眠不足のときなどには一時的に「音楽など聴く気がしない」のはよくあること。
将来、もし大病で入院したら退屈しのぎに「iPod」でマーラーやブルックナーなどの長大な曲を聴こうなんて思っていたが、現実になるとそういう甘い考えは吹っ飛んでしまうのかもしれない。
オーディオだってそう。「体調の悪いときは正常な判断が出来ないので絶対、装置をいじらないこと」という格言(?)がある。
「健康あってこその趣味」。今回はつくづく、健康のありがたさ、大切さを痛感したことだった。
M上さんとは、「早く良くなってもう一度お酒を酌み交わしながら音楽を聴きましょう」と約束して、帰りはお疲れのようだったので自宅までクルマでお送りした。