「おい、たしかお前はモーツァルトの魔笛が好きだと言ってたな。最近、知り合いからレコードを沢山もらったが、その中に魔笛をヴァイオリンとフルートで演奏したのがあるんだけど、要るかい?」と、いまだにレコード一辺倒の長兄(福岡)から電話があった。
「レコード・プレイヤーを持ってないので要らない」と、言葉が喉まで出かかったが「待てよ」と思い直して、「要る、要る、悪いけど送ってくれるかな~」。これがそう。
魔笛のオペラはCD、DVD合わせて40数セット持っている。何せ2時間半という長大なオペラなのでCDなら2~3枚で済むが、レコードの場合は少なくとも4枚ぐらいにはなるはず。
したがって、置き場所に困るのでオペラなら不要だが、ヴァイオリンとフルートの演奏となるとなかなか珍しい。
以前、ピアノの連弾による魔笛の演奏(CD)があって、手に入れて聴いてみたが実に良かった。(次の画像)
さして名のあるピアニストでもなさそうだが、これほどの名旋律に溢れたオペラならどんな演奏だって引き込まれること間違いなし。
問題はレコード・プレイヤーを持っていないことだが「窮すれば通ず」、何とかなるものである。
懇意にさせてもらっているオーディオ仲間の奈良のMさんも長兄と同じく圧倒的なレコード派なので、次のとおり、お願いしてみることにした。パソコンの操作にも堪能な方である。
「魔笛の珍しいレコードが手に入りました。たいへん厚かましいお願いですが、これをCDに焼き直すことが出来ませんでしょうか。コピー用のCD盤は添付しますが・・・。」と、恐る恐るメールで問い合わせてみると、「ときどき大切なレコードを保存のためCDに焼き直しています。音質にご満足をいただけるかどうか分かりませんが、トライしてみますから送ってください。」と、メールが返ってきた。
いやあ、実にありがたい話。すぐに丁寧に梱包して送付したが、感謝の気持ちを込めて大分名産の、旬を迎えたカボスを少々同梱させてもらった。
そして、焼き直してもらったCD盤がレコードとともに昨日(11日)の午後到着。
プログラムどころかCD盤の表まで印刷してもらって恐縮の至り。やっぱり非常に、こまめで丁寧な方である。さっそく試聴してみたが、高音域の生々しさ、天井知らずのような伸びには思わず息を呑んでしまった。
ウーム、「レコードの音」恐るべし!
しかも、針が盤面をトレースするときに出るサーノイズがまったくといっていいほど出ないのには驚いた。カートリッジ、フォノモーターなど、よほど優秀なプレイヤーを使ってあるのだろう。トーンアームはたしかSMEの3012Rと仰っていた。
ただ、もっと低音域が出て欲しい気もしたがヴァイオリンの周波数帯域はおよそ180~1万ヘルツ以上、フルートの帯域がおよそ300~1万ヘルツ以上なので、中高音域に偏るのは当たり前でまあ、無理な相談だろう。
オーディオ歴およそ40年のうちレコード時代が20年ほどで、プレイヤーは友人に譲ってしまい、それ以後の20年間はもっぱらCDだが、あくまでも個人的な感想として言わせてもらえればレコードはCDよりも中高音域が美しい、その反面、CDはレコードよりも低音域の音階がはっきり出るという印象を抱いている。
いわば一長一短で、「レコードの中高音域とCDの低音域が合体すれば最高なのだが」という思いは捨てきれない。
とはいえ、一般的な機器を使っての印象であり、両者とも”超ど級”の機器を使ったときの印象はまた変わるかもしれないので念のため申し添えておこう。
それにしても、こんなにうまくいくなら、レコード時代の愛聴盤「コレルリの合奏協奏曲」(3枚組:イ・ムジチ合奏団)もCD化してもらおうかなぁ~。もはや宝の持ち腐れなので、もし気に入っていただけたらレコード盤の方は差し上げてもいい。
ちなみに、演奏しているイ・ムジチ合奏団の第一ヴァイオリンは「フェリックス・アーヨ」である。
同楽団は、あの有名な「四季」(ヴィヴァルディ)をメンバー・チェンジしながら何度も録音しているが、アーヨ盤を越えるものはいまだにない。まあ、最初に聴き込んだせいで「刷り込み現象」が起きているのかもしれないが。
とにかく「コレルリの合奏協奏曲」もアーヨのCD盤が発売されないものかと、ここ20年間ほど「鵜の目鷹の目」で探しまわったがどうやら完全に望み薄のようである。
よし、もう一度、厚かましくMさんにお願いしてみるとしよう。
そのときは忘れずに「That’s」のCD-R(マスター用)を添付すること。以前、パソコン外付け用ドライブ「プレクスター」を使って実験したことがあって、CD-R盤の種類でまるっきり音が変わるので”ゆめゆめ”おろそかに出来ないのである。