「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

値千金のひととき

2013年03月20日 | オーディオ談義

「いやあ、こういうメールをいただくとはとてもうれしいですね~。つくづくブログをやってて良かったと思います。〇〇市(福岡県)にお住いなんですね。高速道路を使えば別府とはもう目と鼻の先じゃありませんか。私がお伺いしてもいいし、もちろん当方までお越しいただいても構いません。おたがいに、気難しい“AXIOM80”を使っている者同士、苦労話が尽きることはないでしょう。是非一度お会いしたいものですね。」        

「K」さんという、見ず知らずの方から突然メールをいただいたのは3月14日(木)のことだった。いつもこのブログに目を通していただいているというから実にありがたいこと。即座に上記のメールを返信し、その後2回のやり取りを通じて、「善は急げ」とばかり、我が家での試聴会を3月18日(月)午後に設定した。

Kさんから伺った予備知識を整理しておくと、


 25年前から「AXIOM80」(オリジナル)を愛用してきたが、現在は、事情があって待機中。

 プリアンプに使用しているミニチュアの電圧増幅管「6DJ8」とは30年の付き合いがあり、銘柄によって品質格差があって、大いに泣かされた。高信頼管の「6922」「7308」でようやく満足をみた。当日は数種類持っていきたい。

 「AXIOM80」をうまく鳴らすには出力管「2A3」を使ったアンプがベスト。オリジナルのRCA以外にも「アークチュラス1枚プレート」「シルヴァニア刻印」「レイセオン4ピラー刻印」「ナショナル・ユニオン」を集めた。よろしかったら、当日これらの“球ころがし”をお願いしたい。

これは、これは!

どうやらとてもウマが合いそうな方とメチャ楽しい時間が過ごせそうである。

待ちに待った当日はあいにくの雨降りだったが、予定どおり別府インターを抜けてすぐの「Sドライブイン」で12時過ぎに落ち合った。一目拝見しただけで、いかにも根っからの「音楽とオーディオ」愛好家みたいな方である。何だか自分と同じ匂いがする(笑)。お互いに簡単な自己紹介の後、すぐに我が家まで先導。

オーディオ・ルームでしばらくシステムの流れを説明した後、今度はKさんから、持参された沢山の真空管のご説明を受けた。試聴をはじめたのが13時頃からで、終了したのが18時過ぎだった。「値千金」
という言葉があるが、この5時間は久しぶりに音楽とオーディオの楽しさを心から満喫した時間だった

大まかに言えば前半は「球ころがし」をして音の変化を楽しみ、後半はベストと目される真空管をアンプに挿した状態でクラシックを中心に音楽鑑賞に専心した。

Kさんが持参されたCDが30枚ほどあって、それぞれサワリの部分を二人で熱心に聴きまくったが、リパッティの弾くショパンやシェリングの弾く無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(バッハ)などいずれも「通」好みで、Kさんの筋金入りの音楽愛好家ぶりと、そして心から音楽に感動されるご様子に思わず胸を打たれた。


はじめにJBL3ウェイ・システム、次に「AXIOM80」を聴いてもらったが今回の「球ころがし」の状況について述べておくと、

 JBL375ドライバーを鳴らしている「2A3」真空管アンプが好評だった。超シンプルな回路は、球のクセをすぐに出してくれるので実に気持ちがいい。「アンプは増幅する電線であればいい」をまさに体現しているようなアンプ。

出力管「2A3」にもこんなに沢山種類があることに驚いたが、上述した
5セットをそれぞれ挿し替えて聴いてみたところ、いずれ劣らぬ銘管ぞろいだが、個人的な好みでは「アークチュラス」「シルヴァニア刻印」が一頭地を抜けており、「RCA」「ナショナル・ユニオン」「レイセオン刻印」が横並び一線といったところ。同じ「2A3」でも、製造年代によってこれだけ音が違うとなるとちょっと考え込まざるを得ない。

 「AXIOM80」を鳴らしているWE300Bアンプだが、当初は1988年製を使っていたが、途中から温存していた1950年代の「オールド」に替えてみたところ、まるっきり別次元の世界に入った。「値段が高いばかりだと思っていたWE300B(オールド)の真価がようやく分かりました。」と、アッサリ兜を脱がれたKさん。それにしてもその辺の違いを恐ろしいほどシビアに表現する「AXIOM80」もこれまた凄い。

           

ヴァイオリンのすすり泣くようなヴィヴィッドな響きに「まったく、後にも先にも現れない空前絶後のユニットですね~。」と二人で深い、深い“ため息”をついたことだった。ただし、Kさんによると「AXIOM80はもっと可能性を秘めたユニットです。エージング次第でさらによくなりますよ。」

お互いの感性が似ている者同士の“よもやま話”は尽きず、あっという間に時間が過ぎていき、ようやく夕闇の気配が漂う時間帯となった。

「この次は、午前中からどうぞお出でてください。一日中、音楽に浸りましょう。」「そうですか、まだ聴かせていただきたいCDが沢山ありますのでありがたいですね。」

その日の夜、無事ご自宅に帰還されたKさんからさっそく次のようなメールが届いた。了解を得ぬままの無断引用、お許しください。

「本日はおかげ様で楽しく、充実した1日を過ごすことができ本当に有難うございました。時が経つのも忘れ、ついつい長居をしてしまいました。 
 
しかし、すごい経験をさせていただいたんですね。PX25に300Bそれもオールドビンテージ球、JBLオールホーン、AXIOM80“3ウェイ”、正に夢のような顔ぶれですよ。一生のうちに何度もある事じゃありません。また出てくる音が只の音ではなく人生の喜怒哀楽を見事に表現していました。
 
一般的にJBLはクラシック向きではないといわれていますが、そんなことはないと、自分の経験から分かっています。375から出てくる弦楽器の音はAXIOM80とは違う、含蓄のある持続的感動と深味がありますね。
 
2A3チビちゃんアンプにも驚きました。小さなトランスで華奢な外見からは想像も出来ない能力の持ち主ですよ。
 
刻印と一枚プレート球の透明感・キレの良さがある程度は出るだろうと予想していましたが、あれ程の違いを見せるとは思いませんでした。
 
300Bの88年物とオールドビンテージ球の鳴らし比べも以外な程の変化で、まるで直熱管と傍熱管との違いに匹適するくらいです。オールド球を皆さんが目の色を変えて探される気持がわかりました。まるでアンプを変えたような変化でした。 
 
久しぶりにAXIOM80で咽び泣くような、すすり泣くバイオリンの音色を堪能させていただきました。真空管オーディオをやっていて本当に良かったと思います。 
 
宜しければまた聴かせてください。今後とも宜しくおねがいします。本日は有難うございました。」

すぐに「こちらこそ、年代物の貴重な真空管の“球ころがし”をさせていただき、たいへん勉強になりました。また、いつでもどうぞ。楽しみにお待ちしてます。」と、返信したのは言うまでもない。

オーディオは自分の楽しみのためにやっているわけだが、人に聴かせてあげてこんなに喜んでもらえるとは想像だにしなかった。

気に入った音で音楽を聴いて胸を震わせ涙を流すほどの深い感動に包まれる。誰か、これ以上の趣味があったら何でもいいから教えてくれ~(笑)。 

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