オーディオシステムの一部を入れ替えると、一時的に音が良くなった気がするものの時間が経つにつれて、それほどでもなかったと首を傾げるケースがよくある。マニアならかなりの方が経験済みのはず。
あまりにも毎日、身近に接触し過ぎて「木を見て森を見失う」面もあるかもしれない。したがって、そういうときはなるべくオーディオ仲間の耳を借りることにしている。
システムの主役はあくまでも自分なので、自分さえ気に入った音が出てくれればそれでいいのだが、何ごとも過信は禁物。
仲間から「素晴らしい音ですね~」なんて後押しされると、一層心地よく音楽を聴けるようになるから心理的効果もバカにならないが、一方では「どうもイマイチですね。この部分がおかしいです。」と具体的にポイントを指摘されると、ついグラッときてヨロメイテしまう(笑)。
先週の27日(水)の試聴会がそうだった。
新年早々にプリアンプを入れ替えたり、つい最近では新しい真空管アンプを導入したりで、音が随分改善されたような気がするので、昨年お見えになったオーディオ仲間たちに確認のつもりで、久しぶりに声をかけてみた。
大分市にお住いのMさんとSさんのお二人である。日頃お付き合いしている年齢層の方々よりは比較的若くて40歳前後の方たち。我が家には年に1~2回お見えになっている。
はじめにJBLの3ウェイシステムを聴いていただくと、これが大好評。
「スケール感が大きいのに音像が膨らまずにシャープになりますね。さすがにJBLのユニットです。ウェストミンスターのボックスにオリジナルのタンノイのユニットではこの音は無理だと思います。これならクラシックも十分聴けますねえ。」
中音域の「375」ドライバーを担当している新しい真空管アンプ「2A3」も「抜けがいい」と大好評。
ところが、その次に我が家の本命として位置づけしている「AXIOM80」(以下、「80」)システムを聴いていただくと評価が一変。
「何だかツィーター(高域ユニット)の音が目立ち過ぎて、音が”きつく”感じます。全体的なバランスも低音域が勝ち過ぎている気がして、折角の「80」の良さが殺されているように思います。」と、お二人とも口をそろえて大合唱。一人だけならまだしも・・・。
他家で聴かされた音に普通は遠慮して、その場ではなかなか本音は言わないものだが、このときはお二人とも実に真剣な眼差しで真摯な態度だった。「80」のファンだからこそのご意見だろうと素直に受け止めることにした。
実はハハァ~ンと思い当たる節がある。
人間が聴ける周波数の帯域は低音域の20ヘルツから高音域の2万ヘルツまでとされているが、低音域はさておき、高音域に限っては年齢を重ねるとともに段々聞えずらくなるのは周知の事実。
現在の自分の年齢ではおそらく1万2千ヘルツ前後まで聞えれば上出来だろう。クラシックならこの帯域でも十分鑑賞できる範囲だからいささかも悲観してはいないが、そういう理由もあって聞えずらくなった高音域を補強しようと、つい高音用ユニット(ツィーター)のボリュームのレベルを上げ過ぎていた可能性が大いにある。
高音域に限っては「老いては若い人の耳に従え」ということかもしれない(笑)。
冒頭に述べたようにオーディオはシステムの主役の自分さえ良ければそれでいいわけだが、やはり「気に入った音=正しい音」であることに越したことはない。
オーディオを長くやってる人ならご承知の通り、ツィーターのボリュームのレベル設定は実に難しい。「あまり目立ち過ぎないように、しかし適度に存在感は発揮してもらわないと」がポイント。このあたりはまるでその人のオーディオセンスが凝縮された観がある。
もちろん、我が家もそこは承知のうえで、ツィーターのレベルを出来るだけ目立たせないように用心しいしい極小値のマイカコンデンサー(0.15μF)で、理論上では可聴帯域外の10万ヘルツ以上もの値でローカットしているのに、それでも押しつけがましく聞えたのだから若い人たちの高域への耳は敏感そのものである。
「もうJBLのシステムだけで十分ですよ。「80」の方はいろいろと試されたらいかがでしょう」と、励ましとも慰めともつかない言葉を最後にご帰還されたお二人。
何だか気になって、また、そぞろ「オーディオの虫」が動き出してしまった。現在の「80」のシステム構成も4~5年経過しているし、そろそろマンネリ化してきた頃なのでこの辺で、新しい編成の可能性を探ってみるとするか。
な~に、しばらく聴いてみて悪けりゃ元に戻すまで。とにかく実験あるのみ!時間はたっぷりあるんだから(笑)。
翌日は早朝から作業に没頭した。「もっと聴きやすい音になるかもしれない」と、そちらの方の期待が優ってちっとも苦痛ではないのが大好きな趣味のいいところ。
SPボックスも自分であつらえたものだから、自由自在に扱えるので大いに助かる。これが市販のボックスでは、大切にしようという気が先に立ってとてもいじる気にはなるまい。
作業に3時間程かかっただろうか。
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☆ ウーファー(低域用ユニット)を3発から2発へ
これまでウーファーユニットを3発と4発を交互に入れ替えてきたわけだが、こうして思い切って2発にしたのは初めてである。この狙いは低音域の量感をやや犠牲にして、その一方で分解能の向上を図るため。おそらく「80」との音のつながりが、より自然になるに違いない。
もともと「80」はフルレンジとして単独で使用するSPユニットだが、あまりにも繊細なツクリのため(そういうツクリでないと繊細な音が出てこないのも事実である!)、低音域の信号をちょっとでも過大に入れすぎると、すぐにザザッといった擦れるような雑音が出だす非常にヤワな代物。お蔭さまで、これまでに2回ほど修理専門店のお世話になっている。
そのため低域信号(200ヘルツ以下)をコンデンサーでカットして、ウーファーユニットを容れているわけだが、両方のユニットのバランス面からすると、2発が適正なところかもしれない。
ただし、そうはいっても、そこそこの量感は必要なのでボックスの内部空間をうまく利用することにした。
これまで各ユニットを仕切っていた内部の分厚い板をとめていたネジを外して撤去して、2発が広い空間を共有できるようにした。ユニットを外した箇所には共振しないように内部から板をがっちりネジ止めした。
ちなみに「80」とウーファーユニットの間には内部から5センチ厚の重たい板で斜めに仕切っているが、これはもちろんそのままである。
☆ ツィーター周りの改変
ツィーターをローカットしているコンデンサー(マイカ)を2個から1個(0.075μF)に減らして、さらに控え目な態度をとってもらった。「万事に控え目」は自分の生き方に似ている(笑い)。
一方で、「80」(メカニカル2ウェイ)の高音域をそのまま生かすことにして、ハイカットしていたムンドルフのコイルを外し、その代わり「80」のやや神経質な響きを持つ高音域をカットする目的で、直径5センチ大のボール(木製)を吊り下げてみた。
この高域拡散効果で、ツィーターとの「被(かぶ)り」が少なくなるはずである。
さあ、これで試聴に入ったわけだが、ユニットの背圧を逃がすためにSPボックスの下部に開けた4つの穴の塞ぎ方でもコロコロ音が変わるのが面白かった。結局、写真のとおり3か所を塞ぐのが締まった低音が出てきてベストのようである。
結論だが小編成の室内楽やボーカルはリアルな雰囲気がよく再現できて明らかに向上したものの、オーケストラなどの大編成となると、いま一息といった感じ。やはり、こちら立てればあちら立たずかな~。
ま、いっか。当分、この状態でいろいろ遊んでみるのも悪くはあるまいて。とにかく実験、実験!