現役時代と違って今では何ら制約もなく時間はたっぷりあってやりたい放題の生活で、いわば完全にストレス・フリーなのだが、どうしたことか心理的な面ではいまだに公私にわたって過去のいろんな失敗体験を引き摺っている。
たとえば、ふとしたときに、それも何の脈絡もないままに当時の赤面ものの失敗や気まずい思いをしたことなどをふっと想い出したりするのがその証拠。
成功体験もかなりあるのに不思議なことにそちらの方はあまり思い浮かばないのだから、なかなか困った性格の持ち主である。
まるでプロ野球の選手がホームランを打った記憶よりもチャンスで凡退したことをいつまでも覚えているようなものかな。
さて、今回はミスといってもまことに他愛ないミスに対して高校時代の同窓生たちが名誉挽回するチャンスを与えてくれたという話である。
昨年の11月上旬に福岡からわざわざ我が家に試聴にやってきてくれたオーディオ仲間たち。(以下、「福岡組」)
もちろん、その時点では自分なりに「人に聴かせても恥ずかしくない音」だと思って来てもらったわけだが、現時点で振り返ってみると、けっしてそうではなかった。
当日の試聴を終えて、おそらく福岡組は「何だ、いい歳をして40年以上かかって到達した音がこの程度か」と、思ったことだろうと想像するだけで何だか身が細るような気持ちがするのである。
システムから醸し出される音はその持ち主の知的かつ美的センスを洗いざらい映し出すところがあるので、人にお聴かせするときはゆめゆめ油断できないのだ(笑)。
つまり自分にとってオーディオとは人生航路の縮図みたいなものというわけだが、この4か月ほどは過去の経験の中でもかってないようなしっかりした歩みを遂げているような気がする。
JBL375ドライバー(16Ω)のダイアフラム(ダイアモンドエッジの純正品)を入れ替えての導入、高性能のボリュームを擁したプリアンプの導入、超シンプルな回路を持った出力管2A3アンプの導入、ネットワークに使用しているオイルコンデンサーの定数の見直しなど、それこそ改善点は枚挙にいとまがないほど。(これもひとえに奈良のMさんのおかげです!)
そういうわけで、最近、福岡組の一人のU君に「今となっては、あの時の音は反省だらけだった。随分良くなったと思うので何とか名誉挽回のチャンスを与えてくれないかな。このままでは死んでも死にきれないよ」と、率直に気持ちをぶつけたところ、さすがに頼りがいのある親友たち。
おそらく、それほどまでに〇〇君が言うのならと同情してくれたのだろう。仕事を持つ忙しい現職組なのにバタバタと試聴の日程を設定してくれて、3月20日(水)の春分の日に決定した。
いやあ、ありがたい、ありがたい!
18日(月)には、つい最近のブログに記したように同じ福岡県から「AXIOM80」ユニットの愛好家であるKさんがお見えになって、なかなかの評価をしていただき(おそらく遠慮していろんな欠点に目を瞑ってくれたのだろうが!)、自信への追い風となって今や順風満帆。
よし、今度こそは恥ずかしくない音を聴いてもらうぞ~。
当日は天気にも恵まれ、一人の欠員もなく、特段の機器のトラブルにも遭うことなしに4時間ほどの試聴が無事済んだ。我が家のように一室にシステムが二つあるのは音響上決していいことではないが、交互に聴くので比較が出来て長所短所が把握しやすいし、長時間使用する真空管の負担も軽くて済むので大いに助かる。
席を替えて夕方からの「飲み会」では、オーディオ談義に大いに花が咲いた。
「この前よりも音が明るくなっている」「一言でいえばワイド(JBLシステムのレンジ)とディープ(AXIOM80の奥行き感)の違いだね」「チェロの音が胸に迫ってきた」と、うれしくなるような講評が続々。
「しかし、この前の音も決して悪くなかったよ~」と、誰かが慰めてくれたが本当かな?
持参してくれたCDのうち、2枚ほど好みがあったので借りることにした。
「後日、すぐに郵送するよ」と言ったところ「次回に行く口実になるのでずっと持っておいてくれ」。これが本音なら実にうれしいことだが、おそらく思いやり深い皆さんはシステムの様々な欠点に気付きながらそっと胸に仕舞い込んでくれているに違いない。
この言葉に、よし、次回までには工夫して「もっといい音にしてやるぞ」というヤル気が大いに湧いてきた。
談論風発、非常に楽しい飲み会だったが、福岡組は21時発の最終バスで無事帰宅の途に就いた。
これで、名誉挽回のうち一つが済んだ。しかし、あと三つ残っている。それは小郡市にお住いのNさんたちの御一行と、うきは市のKさんと大宰府のMさんのお二人、そして奈良にお住いのMさんである。
Mさんは遠距離なのでおいそれとは無理だろうが、前二者には「近いうちに」電話してみようかな。