前回からの続きです。
さあ、いよいよ演奏会当日の15日(金)がやってきた。朝から快晴だが、このところしばらく続いた陽気がすっかり収まってしまい冷たい風が吹きすさんで少々肌寒い。今日の夕方は少し厚着して出かけた方が良さそうだ。
ところで隣県の福岡では例年よりも2週間ほど早く桜の開花をみたそうで、どうやら2月下旬から3月上旬にかけての記録的な暖かさが利いたらしい。
さて、Aさんが我が家にお見えになったのは15時過ぎだった。
はじめにJBLのシステムでロストロポーヴィッチが弾く「無伴奏チェロソナタ第2番」を聴く。およそ20分足らずで終了し、次に、そっくり同じ曲を「AXIOM80」(以下、「80」)で聴いてみた。
その結果は、「JBLの音も完成の域に近づいて素晴らしいと思いますが、80の方が表現力が一枚上手ですね。音の諧調が鮮やかです。」と、Aさん。現在はウェスタンの「555+15Aホーン」を鳴らしておられるが、以前は「80」を、ずっと愛用されていたので、その”酸いも甘い”も知り尽くされたうえでの弁である。
これは、内緒の話だがAさんは現在でも「80」(オリジナル)を所有されており、自分のは復刻版なので、譲っていただけないものかと、虎視眈々と狙っているのだが、手放す気配が露ほども感じられないのが非常につらくて、歯がゆくて、淋しい(笑)。
それはさておき、「80」が快走ペースに入ったので、次に「カザルス」が弾く、同じ第2番をかけてみた。
「鬼家迫る演奏ですね。弓の使い方がうまくて表現が極めて多彩に聴こえます。これに比べるとロストロポーヴィッチのはまるで一本調子に聴こえてしまいますね~。」と、軍配は明らかにカザルスに。「名人」と謳われた奏者でさえも神の領域に迫った奏者との差はことのほか大きいようである。
バッハの試聴が終わると、後はいろんな曲を聴きながら「腹ごしらえ」とともにオーディオについてのよもやま話。
演奏会場の大分市に向けて出発したのは17時過ぎだった。開演は18時半なのでちょっと早すぎるが、会場の「音の泉ホール」(定員720名)は指定席がないので、いい席を確保しようと思えば、早めに行くに越したことはない。
ちなみに「いいちこ総合文化センター」には別に「グランシアタ」(2000席)という本格的な大ホールがあるが、小編成の演奏や講演会などはこの「音の泉ホール」で開催されている。
そして、確保したのが前から9列目の中央付近で絶好の位置だった。
開演前に舞台でピアノの調律をやってたところをパチリ。
当初、空席が目立っていたものの直前になるとあっという間に客席が埋まった。予定どおり、6時半から演奏が始まって終わったのはアンコールの3曲を含めて8時半頃だった。
「チェロの音色が凄く魅力的でしたね。演奏者もパンフによるといろんな国際コンクールで優勝しているようで、一流のレベルに達していたと思います。」
「素晴らしい音色でした。おそらくストラディヴァリでしょう。あれほどの奏者ですから、公的機関から貸与されているんじゃないですか。無伴奏チェロは、非常に抑揚をつけて自分なりの個性を表現するように努めていたように思います。チェロを志す者ならカザルスの演奏が羅針盤となっているでしょうから、同様のスタイルを踏襲して同じ土俵で勝負する勇気はとても持てないでしょう。」と、Aさん。
久しぶりに聴いた生演奏だったが、今回はすっかりチェロの音色に酔いしれてしまった。
生演奏なので「歪のない音」というのは先刻承知の上だが、あの深々としてゆったりした音は、電気回路を通した音ではちょっと無理かもしれない。もっとも、直接音と間接音が微妙に入り混じった音を生み出すあの広大な音響空間の効果も見逃せないので相乗効果もあるのだろう。
これから当分の間「チェロ熱」に浮かされそうだが、不思議なことに個人的に大好きなモーツァルトの膨大な作品の中にチェロ・ソナタや、チェロ協奏曲がないのはいったいどうしてなんだろう?
彼の音楽にはいささか高周波帯域への偏りが見られるので、低弦楽器には興味がなかったのだろうか。
そこで、いつものようにググってみると、どなたかのブログに実に理路整然とした理由が展開されていた。「モーツァルト チェロ嫌い」(興味のある方はクリックをどうぞ)。
それはともかく、今回は素晴らしいチェロの音に直に接することが出来たし、ブログのネタ切れにも困らなくて済んだ。しかも2回分も!(笑)。これも演奏会のチケットを頂いたウォーキング仲間のNさんのおかげである。何とお礼を申し上げていいことやら・・・。